平成27年11月定例県議会 発言内容(小林東一郎議員)


◆小林東一郎

   

 最初に、大北森林組合補助金不正受給事件とこれからの森林行政について伺います。

 先月23日、大北森林組合の元専務理事が補助金不正受給を主導した疑いで逮捕されました。15億円にもなろうとする巨額の補助金がどのようにして不正受給をされたのか、それがどこに消えたのか、そこには県職員の関与があったのか。刑事事件として真相究明と責任追及が行われる事態に至りました。

 さて、事件の全容解明の動きとは別に、部長を代表とする林務部幹部による有志の会が、林務部職員の責任に起因する損失について林務部全体で立場に応じた行動をみずからの判断で起こしていくことが必要とし、寄附呼びかけの文書を本庁や地方事務所林務課などで配布したと報道されています。これは実際どのような意図によるものだったのか。御説明をいただきます。

 また、この寄附の呼びかけについては、コンプライアンス推進・フォローアップ委員会で時期尚早との意見が出されましたが、これへの見解をお聞きします。

 2001年には、当時の土木部職員が予算を流用、業者にパソコンなどを提供させたことが発覚した際には、同部の部長を会長とする有志の会を結成、1,000万円余の補助金返還と加算金の支払いのため同部の職員から2,270万円を集めた事例もあるわけですが、今後どのような取り組みをされるお考えですか。

 以上、林務部長に伺います。

 

◎林務部長(塩原豊)

 

 大北森林組合の補助金不適正受給につきまして、有志の会による取り組みについて御質問いただきました。

 有志の会による取り組みの意図でございますが、今回の事案におきまして、造林補助事業の不用萌芽除去施業に関し林務部職員が行った不適切な指導が不適正受給の主な原因となった部分について県が負担して返還を行わざるを得ない国庫補助金が生じてしまうために、このことにより県民の皆様がこうむる損失を軽減するための行動を林務部職員が行うべきではないかとの趣旨でございます。

 あくまでも有志による取り組みでございますが、コンプライアンス推進・フォローアップ委員会からも御意見をいただいてございますけれども、この意見等につきましては林務行政を担当する部長としての見解を述べさせていただくことは控えさせていただきますが、こうした御意見も踏まえて、今後も林務部職員の意見を十分聞いた上で検討されるものと考えております。

 

◆小林東一郎

 

 不用萌芽除去、いわゆる大北ルールに基づく不適切な指導によって、これまでの2回にわたる組合への補助金返還請求で請求を放棄したものは37件、2,700万円余となっております。一体、この責任を誰が負うのか。9月定例会でもお聞きしましたが、部長からは検討課題との答弁でありました。まさか県民負担になることは原則としてあり得ないと信じたいのですが、林務部長のお考えを再度お聞かせいただきます。

 次に、11月19日、監査委員から、明らかに法令等に違反しているもの等に相当するとして、北安曇地方事務所林務課の補助金交付事務を含め4件が指摘事項として改善の指示がされ、3カ月後までの措置状況の回答が求められたところです。これについてどのように対応されるのか。知事にお聞きします。

 この事件を機に、知事は県全体のコンプライアンス推進体制の確立を表明されておられます。これは会計局の審査等のあり方を含めてとのことだと9月定例会では答弁をいただいております。会計局や監査委員事務局の職員は職権に基づく諸機関の調査を通じスキルを身につけているはずで、これをしっかりと生かす適材適所の道筋を示すべきです。経験を尊重する人事を行うこともコンプライアンス推進につながると考えるのですが、知事の御所見を伺います。

 また、本県の監査委員会事務局の職員体制は年間の監査実施機関数に比して脆弱で、全都道府県中で職員1人当たりの調査実施機関数が全国の平均13.9機関に対し本県は23.0機関と最多になっています。

 知事からは、前回、監査委員の考え方を知事サイドで受けとめ、監査体制についてともに考えたいとの答弁をいただいているところですが、この状況を踏まえた事務局職員体制の改善について御所見を伺います。

 

◎林務部長(塩原豊)

 

 補助金返還を求めなかった不用萌芽除去についてのお尋ねでございますが、いわゆる大北ルールに基づく不用萌芽除去については、補助対象事業の要件には適合しないものの、平成18年の熊による人身被害の発生以降、地域において野生鳥獣被害対策の必要性や要望が高まる中、当時の北安曇地方事務所林務課が地域の説明会等で林業事業体に対してひとしく行っていた指導に沿ったものでありまして、組合の責に帰することができないために返還を求めないことといたしました。

 議員から誰がその責任を負うのかとのお尋ねでありますけれども、こうした不用萌芽除去にかかわる補助金の交付により生じた損害の回復については法律の専門家等の意見も聞きながら慎重に検討をしてまいります。

 

◎知事(阿部守一)

 

 大北森林組合の問題等に関連して、監査等についての御質問にお答え申し上げたいと思います。

 まず、このたび監査委員の方から定期監査の結果として指摘事項を受けた、どう対応するかということでございます。

 今回、4件という例年に比べて多くの指摘事項が出されてしまったということは、これは組織全体で重く受けとめなければいけないというふうに思っています。関係部局、林務部、あるいは農政部、建設部、それぞれ再発防止等の取り組みを進めているところでありますが、私が特に課題だと考えているのは、監査委員から御指摘を繰り返し受けているものがまた再び行われてしまった、これはもう申し開きができないというふうに思っております。

 それから、これは直接御指摘を受けたものでは必ずしもありませんけれども、事案の公表等についても、私とすればもっとスピーディーに対応するべきものもあるんじゃないかというふうに思っています。

 こうしたことから、部局長会議の場におきまして、私から再発防止の徹底ということを全庁的に指示させていただきました。また、総務部長と会計管理者の連名で、関係各部局、現地機関に再発防止の通知をしたところであります。もとより、指示とか通知をしただけで、またこんなことが繰り返されてはならないわけでありますので、管理職の職員全体が今の状況をしっかり認識をして取り組んでいくように今後とも私としては努力をしていきたいというふうに思っています。

 また、今後の対応状況については、定期的に検証をする中で、県民の皆様方に信頼され、期待に応える組織づくりに取り組んでいきたいと思ってます。

 また、あわせまして、コンプライアンス推進室を新しく設けておりますので、不適正な事務処理等の問題が生じたときには、まずコンプライアンス推進室に情報がしっかりと集約されて適切な対応ができるような仕組みづくりということも行ってまいります。

 それから、コンプライアンス推進体制の関係で、会計局や監査委員事務局の職員経験を尊重した人事という御質問でございます。

 このことについては私も全くそのとおりだというふうに思います。人事異動、もとより、コンプライアンスであったり会計、監査、こうした観点のみで行うわけにはいかない部分もありますけれども、しかしながら、職員が多様な経験をしてもらうということが重要だと思いますし、また、こうした監査であったり会計の業務を経験して、それぞれのある意味で現課、現局の事務を行うとまた違った観点で仕事に取り組むことができるというふうに思いますので、こうした観点に十分配慮しながら今後の人事を考えていきたいというふうに思います。

 それから、監査委員事務局の職員体制でございます。

 私も、今回、他県の監査実施機関数とそれから監査事務局の職員数の比較表を見て、御指摘のとおり、長野県、他県に比べて総体的に少ない職員で頑張っているということを改めて認識をいたしました。監査委員の方からも、監査の重要性、大切さ、こうしたことについてこれまでもお話を聞かせていただいているところであります。

 まず、監査のあり方、監査の事務のあり方、こうしたものをまずしっかり考えていきたいというふうに思います。その上で、人員については、これは監査委員事務局とも一緒に考えていかなければいけないと思いますけれども、今後、どういう監査体制を組んで、どういう視点を充実強化していくかということと一体で考えていきたいというふうに思っております。

 以上でございます。

 

◆小林東一郎

 

 林務部は、目標達成のため業務執行に当たり不適切な手段、手法を選択したことなど、補助金不正受給事件の一因となった四つの過ちをもとに林務部コンプライアンス推進行動計画を策定しています。そこには「造林補助事業での不適正申請を許さない仕組みの構築」の取り組みが示されていますが、県民へのストレートなメッセージ、すなわち森林税事業を含む県単独事業実施の厳格化を図るといった記載がなぜないのか疑問に感じるところです。仮に、現在進められている国との交渉ばかりに目が向き、県民には顔が向けられないとのことなら、県民の信頼を二重に裏切ることになってしまいかねません。林務部長にそのあたりの御説明をいただきます。

 また、森林税事業で目的外流用の指示がされていた森林税事業を含む県単独事業については国補助事業よりも柔軟な対応ができるとの意識があったといった事実が明らかになっているのですから、県民に負担をいただいている森林税の使い方にはより厳しい目が向けられてしかるべきです。

 しかし、現在、目的外流用については処罰規定がありません。条例を制定し、例えば補助金適正化法の準用による処罰規定を設ける必要があると考えますが、知事の御所見を伺います。

 

◎林務部長(塩原豊)

 

 県単独事業にかかわる再発防止についてのお尋ねでございますが、本県におきましては、国庫補助事業と森林税活用事業を含む県単独事業をあわせて、信州の森林づくり事業として間伐等に対する助成を行っております。

 今回の事案では森林税を含む県単独事業にも不適正な案件がありますが、行動計画の「造林補助事業での不適正申請を許さない仕組みの構築」におきましては、県単独事業か国庫補助事業かを問わず、全ての造林補助事業について、現地調査の形骸化の防止や内部牽制体制の強化など、再発防止に向けた取り組みを進めてまいります。

 また、県単独事業の流用等の経過を踏まえまして、林務部職員一人一人の業務に向かう姿勢の学び直しやコンプライアンス意識の向上への取り組みを進め、このような事案の再発を徹底的に防止して、県民の皆様から信頼される、議員から御指摘のありました、納税いただいている県民の皆様の立場に立って考え行動する、こうした長野県林務部として再生していく所存でございます。

 

◎知事(阿部守一)

 

 補助金の流用に関しての処罰規定を設ける必要があるんじゃないかという御質問でございます。

 私も小林議員と同じような問題意識を持っております。国も、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律、これは、ここで言っている補助金とは国が国以外の者に対して交付するものということになっているわけでありまして、基本的には国と他機関との関係ということになっています。

 私どもとしては、二度とこうした事態が起きない仕組みをさまざまな角度から考えていくということが重要だと思っております。ただ、私どもが調べた限りでは、独自にこうした罰則を設けている都道府県はないということのようであります。また、補助金交付規則でやるのが適切なのか条例が望ましいのか、あるいは刑事上の刑罰なのか行政罰なのかとか、さまざま考えなければいけない論点があるというふうに考えております。

 今後、林務部コンプライアンス推進行動計画に基づく取り組み、あるいは全庁的なコンプライアンス対策を進めていくわけでありますが、そうした中で二度とこうした事態を起こさない取り組みの一環として具体的な検討を行っていきたいと考えております。

 以上です。

 

◆小林東一郎

 

 林務部長に一つ要望しておきたいと思います。

 県民の皆さんから負担をいただいている森林税であります。そこで目的外の流用が行われた、こういう事実があるわけですから、県民に本当にわかりやすい説明をぜひお願いをしておきたいと思います。

 次に、この事件の発覚により、本年度、造林関係の国補助がこれまでとまったままとお聞きしているところですが、現状と再開のめど、国との交渉の進捗について林務部長に伺います。

 これまでの森林行政の第一義は放置されてきた森林の状況から間伐による森林整備に置かれていましたが、持続性を持った地域資源の循環を主眼に据えた林業県への移行を目指すのであれば、そのための基盤整備に視点を移すことが欠かせません。木材業界でも国産材の安定供給が図られ、国においても木材自給率50%以上を目指している中で、供給元の森林ではなぜか目先の間伐優先となってしまっています。

 そのためか、森林整備地域活動支援交付金や森林税活用の里山集約化事業では事業実施から翌年度までに間伐等の施業を行うこととなっており、資源循環のための境界明確化と森林経営計画に取り組む森林組合からは、それが足かせとなっているとの意見が寄せられています。

 経営計画の認定期間内での施業実施とするなど、着実に森林経営計画が実行される取り組みをするべきではありませんか。林務部長にお聞きします。

 

◎林務部長(塩原豊)

 

 まず、本年度の造林補助事業についてのお尋ねでございますが、事案発覚後、補助金を不適正に受給した森林組合へ造林関係事業の補助金は本年度交付しておりません。

 補助金交付の再開については、今回の事案に関しまして森林組合がみずから責任を明確化するとともに、不適正受給の原因を踏まえた具体的な再発防止策の策定や実行、補助金返還への対応が第一と考えております。

 佐久森林組合、松本広域森林組合におきましては責任の明確化や再発防止策の実行に取り組んでおりまして、現在、国にも状況を報告しながら、補助事業の再開に向け今後の対応について検討を進めているところでございます。

 大北森林組合への補助事業の再開につきましては、具体的な再発防止策や補助金返還への対応が第一でございまして、現在まだ判断できる段階でないと認識しているところでございます。

 次に、森林経営計画についてのお尋ねでございますが、森林経営計画は、効率的な間伐等の森林整備の推進や木材の安定供給の確保に向けた基盤となるものであると考えております。

 森林整備地域活動支援交付金では、森林経営計画が策定された森林において間伐等の実施に必要な境界確認等への支援を行っておりますが、施業が着実に実行されるよう、国の要領等に沿って、交付金事業の実施の翌年度までに施業を実施することを要件としております。

 議員御指摘の課題も含めまして、市町村や林業事業体の御意見をさらにお聞きした上で、必要に応じて国に要望を行うなど、対応を検討してまいりたいと考えております。

 県といたしましては、引き続き、森林経営計画に基づく施業の着実な実行に向けて、本交付金の支援に加えまして、林業普及指導員による実効性の高い計画の作成指導や、造林補助事業による間伐の実施、路網整備に対する支援に取り組んでまいります。

 以上でございます。

 

◆小林東一郎

 

 次に、子供を性被害から守る取り組みについて伺います。

 警察庁の取りまとめによれば、昨年度、不良行為少年として73万人余が補導され、そのうち深夜徘回によるものが約43万人にも上っています。

 興味本位や遊興目的よりも、家庭が子供の居場所たり得ないがために子供が深夜に出歩く状況にあるとの指摘があり、今夏に発生した寝屋川市の中学1年生男女の殺害事件の背景にもそのことがあるように思えてなりません。

 子供を取り巻くこのような状況をどのように捉え、分析をされておられるか。県民文化部長にお聞きします。

      

◎県民文化部長(青木弘)

 

 深夜徘回の状況についてのお尋ねでございます。

 議員御指摘のとおり、全国では昨年度73万人の少年が補導されているわけでございまして、そのうち深夜徘回では43万人ということで58.8%でございます。

 県内を見ますと、過去5年間で見ますとそういった補導される少年は減少傾向ではございますけれども、昨年度3,000人近くの子供が深夜徘回で補導されてございまして、これは少年補導全体の約57%を占めているという状況でございます。

 深夜に外出していた子供たちが重大な犯罪に巻き込まれる可能性というのはございまして、御指摘のありました寝屋川市の事件も記憶に新しいところでございます。

 深夜外出につきましては、子どもを性被害等から守る専門委員会報告書におきましても深夜外出が重大な性被害につながる可能性があると指摘をされているところでございますし、今回の条例のモデル検討会の報告でも、保護者には深夜に子供を外出させないよう努めなければならない、それから、事業者、一般県民には帰宅を促すよう努めなければならないという深夜外出の制限に係る規定というものも盛り込まれたというふうに承知してございます。

 今後、県民運動の中でも地域の見守りということが非常に大事でございますし、それから、今御指摘にもございました、深夜に徘回する背景としての家庭の事情ということもございますことから、昨日もひとり親支援についての御答弁を申し上げましたけれども、居場所づくりといった観点での取り組むべき課題ではないかというふうに考えているところでございます。

 以上でございます。

 

◆小林東一郎

 

 子供の性被害防止には、子供をからめ捕ろうとする大人を規制するための処罰規定を盛り込んだ条例の制定といったいわば川下の対策だけでは十分とは言えず、子供にとってもはや家庭が安心できる居場所ではなくなっている状況や、ネット社会特有の性被害の危険性があるさまざまな陥穽の存在など、今日的な課題への対応が求められています。

 このことについては知事も同じ考えに立っておられると思いますが、以下3点について知事にお伺いします。

 一つに、知事がこれまで重ねてこられたタウンミーティングや意見交換会で、条例が必要と言われる方々が今日の子供を取り巻く環境を理解された上で発言されているとの感触を得ておられますか。

 二つに、知事は、再三、県民理解が得られるか否かを見きわめる必要があるとの発言をされておられますが、何をもって県民理解が得られたと判断されるのですか。その判断基準をお示しください。

 三つに、今回、2月定例会までに条例に関する基本方針を取りまとめると期限を切られた理由は何でしょうか。

 

◎知事(阿部守一)

 

 子供を性被害から守る取り組みに関連いたしまして3点御質問いただきました。

 まず、タウンミーティング、意見交換会での参加者の皆さんが子供を取り巻く環境を理解した上での発言であるのかということですが、私の受けとめとしては、まさにそのとおりというか、子供たちに対する支援であったり、これまでいわゆる県民運動にかかわられてこられた皆様方の御意見がかなり出されてきているんじゃないかというふうに思っています。

 先ほど小林議員は川下の対策ばかりでは十分とは言えないんじゃないかと。私も全くそのとおりだと思っておりまして、予防、それから、さらに川下といえば川下の被害者支援、こうしたものまで全体として取り組む必要があるというふうに思っています。

 いただいている御意見の中には、例えば、子供が存在を認めてもらう場所、力を発揮できる場所が必要だ、寂しさがあると心のよりどころを求め被害に遭う子供たちがいるというようなお話であったり、先ほども深夜外出の話がありましたが、子供たちが深夜徘回をするその背景についてもしっかり理解することが大事だ、こういったような御意見も出されているところでありまして、また、ランチタイムミーティング等では特に子供の支援にかかわっている皆様方を中心に意見交換させていただいてありますので、もとよりこういう皆様方は非常に強い子供たちに対する問題意識をお持ちの中で御発言をいただいているというふうに考えています。

 それから、何をもって県民理解が得られたと判断するのかということであります。

 今、意見交換を進めているところでありますが、県民の皆様方の声といって大きく私なりに三つカテゴリー分けできるのじゃないかと思っております。

 まず、これまで県民運動を中心に長野県は進めてきたということでありますが、そうした県民運動を中核で担っていただいてこられている県民会議の皆様方がどういうふうにお考えになっているのかということ。それから、今申し上げましたが、子供の支援、いろんな立場で支えていらっしゃる方がいらっしゃいます。こうした相談であったり支援に直接的にかかわっている皆様方がどういうふうにお考えになるのか。それから、これからも私はまだ意見交換してまいりますけれども、広く若い世代も含めて一般の方たちの考え方、こうしたことを踏まえて総合的に判断をしていきたいというふうに思っています。

 それから、基本的な方針の取りまとめの時期、期限を区切ったのはなぜかということでございます。

 この問題については、小林議員御承知のとおり、一昨年5月に子どもを性被害等から守る専門委員会の設置以降、本当にさまざまな取り組み、さまざまな方から御意見をいただき、また、法的な検討等も含めていろんな角度から検討してきております。

 今、現実に性被害で悩み苦しんでいる子供がいるという中で、私とすればいたずらに時間をかけることはできないというふうに考えております。そういう観点で、提案説明の中で期限を示して考え方を整理する、基本的方針を取りまとめるということを申し上げたところでございます。

 以上でございます。

 

◆小林東一郎

 

 ただいま、知事からは、子供を取り巻く環境をしっかりと見詰めて、条例の制定も含む子供の性被害を防ぐ取り組み、全体の中でやはり考えていく必要があるんだという答弁をいただいたところであります。

 子ども支援条例、そして子供の総合的な相談の窓口の設置、そういうようなところで多くの子供からの意見が寄せられているところであります。そういう意味では、広範な子供をさまざまに支える取り組み、今県でなされているところでありますが、それとこの条例モデルがどのように結びついていくのか、その全体像がまだ示されていない。そこをぜひ知事にはお示しをいただいて、こういう形で子供を性被害から守る取り組みを進めていくんだということを明確化をしていただきたいなというふうに思うところであります。

 知事は、これまで、県民理解が条例案取りまとめのかなめであると繰り返し発言されてこられました。それを裏返せば、知事御自身の条例制定の信念を表明することなしに、一方的に県民にボールが投げられたのだと私は捉えております。他方、知事は、先月8日、松本でのタウンミーティングにおいて、条例制定も視野に入れて考えていかなければいけないとも述べておられます。知事の真意はどこにあるのでしょうか。県民に明確にすべきではありませんか。

 

◎知事(阿部守一)

 

 私の真意を明らかにすべきだということであります。

 決して、単に、どうしましょうか、よくわかりません、県民の皆様方が勝手に考えてくださいというふうに一方的にボールを投げているわけでは必ずしもありません。

 これまでも述べてきているわけでありますが、従来、本県においてはいわゆる青少年保護育成条例を持たずに青少年育成に取り組んできたわけであります。一つは、現実に性被害で苦しんでいる子供たちがいるという現実を直視しなければいけない。それから、インターネット環境等、これは、かつて長野県が青少年保護育成条例をどうするかというふうに議論していた時代とは全く子供たちを取り巻く環境が変わってきている。そういう中で、条例についても検討の対象から排除しないで考えましょうということで、いろんな検討をしてきているわけであります。

 そういう意味で、これまで私がいろんなところで申し上げてきているわけでありますけれども、条例についても、一つは法的な課題、青少年保護育成条例、現在の条例モデル、他県のものとはかなり異質なものになっています。そういうものではありますが、法的な論点というのはやはりクリアされなければいけないんじゃないかというふうに思ってまいりましたし、また、先ほど御質問いただきました、やはり県民運動でこれまで長野県は取り組んできたわけでありますから、そういう意味で県民運動を担っていただいた方を初めとして県民の皆様方のお考え、こういうものを踏まえて最終的な方向づけをしなければいけないというふうに考えているところでございます。

 以上です。

 

◆小林東一郎

 

 最後に、登山安全条例について伺います。

 まず、知事にお聞きします。

 登山計画書提出における罰則規定のない義務づけと山岳保険加入における努力義務では、どのような違いがあるのでしょうか。

 また、それらの差異や、登山計画書提出について富山県や岐阜県のような罰則規定を設けずとも、「目的」に掲げられている登山者の責務を明らかにすることの担保たり得るのでしょうか。

 次に、指定登山道を通行する場合の登山計画書提出義務づけによって登山道入り口の登山ポストの管理徹底が必要となりますが、誰がどのように担っていくのでしょうか。

 また、オンライン登山計画書届け出システム、「コンパス」の活用も想定されていますが、個人情報の管理はどのようにされますか。観光部長に伺います。

 多数の死者を出したトムラウシ山や万里の長城での遭難事故では、それを企画運営した旅行会社の顧客管理のあり方とツアー登山ガイドの責任が大きく問われたことがいまだに記憶にとどまっております。

 条例案では、ツアー登山参加者の安全確保に努めなければならない、十分な知識と技術及び経験を有する登山ガイドを同行させなければならないとツアー登山を実施する旅行業者の役割を規定していますが、これをどのように担保していくのか。これも観光部長に伺います。

 

◎知事(阿部守一)

 

 登山安全条例案に罰則を設けないことについての御質問でございます。

 登山安全条例案につきましては、第21条で登山計画書の提出義務を、そして22条で山岳保険への加入に関する努力義務をそれぞれ規定しているところでございます。

 まず、この違いでありますけれども、一般的に、登山計画書の提出義務のほうでありますけれども、これは必ずしなければならないもの。一方、努力義務は努めるものとするということで基本的には自発的な履行を期待するものというふうに解されています。

 まず、登山計画書につきましては、現在でも任意で提出を呼びかけているところでございますが、この条例案におきましては、登山を安全に楽しんでいただくという観点から、事前に周到な登山計画を作成していただくことで山岳遭難を防止し、加えて、万が一の遭難時の捜索救助に活用するという観点でも全ての登山者の皆様に御提出をいただきたいということで義務化をしているものでございます。

 他方で、山岳保険については、多額の捜索救助費用の支払いという将来発生する可能性があるリスクを回避するという観点で、登山者が自由意思で加入するものでございます。例えば場合によっては非常に莫大な資産を持っていらっしゃる方を想定すれば、自分は保険に入らなくても払えるよという方ももちろん存在しているわけでありますので、そういうことで条例で加入を義務化することは性質上なじまないものというふうに考えております。近年、遭難事故が多発していることから、加入の重要性を考慮して努力義務という形にしております。

 次に、登山計画書の提出に関しましては、他県の条例と異なり、罰則規定を設けないという形にしております。このことにつきましては、登山、基本的に自由な余暇活動であります。規制については最小限にすべきと考えた結果であります。

 県といたしましては、罰則規定を設けるということよりも、むしろ、登山者に対しましてきめ細かな啓発活動、あるいはコンビニやインターネットで提出できるような提出しやすい環境整備、こうしたことに取り組むことで実効性を担保していこうというふうに考えております。

 今後、条例制定後に作成いたしますガイドラインの中で登山者のモラルやルール等を盛り込むことといたしております。

 県としては、登山計画書の提出を初め、条例とガイドラインに規定する安全な登山のために必要な事項について十分な啓発に取り組んでまいります。

 以上でございます。

 

◎観光部長(吉沢猛)

 

 登山安全条例案につきまして二つ御質問いただいております。

 1問目が、登山計画書提出における個人情報管理についてでございます。

 登山ポストにつきましては、市町村や地区山岳遭難防止対策協会、いわゆる地区遭対協でございますけれども、これらによりまして登山口に設置され、利用されてきております。

 登山ポストの管理状況につきましては、県では個人情報保護の観点も含めまして既に調査を行っておりまして、改修が必要な登山ポストにつきましては今後管理者に補修を依頼してまいります。

 ポストからの登山計画書の回収に関しましては、登山ポストごとの実態にあわせまして、地区遭対協や一部の市町村に対して回収の協力について協議をしております。

 県といたしましては、個人情報保護の重要性から、地区遭対協等に対しまして登山計画書の回収についての協力依頼を行う際には、地区遭対協等との間で回収に係る守秘義務条項つきの協定を締結することとしております。

 次に、登山計画書のオンライン届け出システム、「コンパス」でございますが、運営主体である日本山岳ガイド協会が協会のセキュリティーポリシーに基づきまして個人情報を適切かつ安全に管理してきております。

 「コンパス」に関しましては、平成25年9月に、長野県警察本部が日本山岳ガイド協会との間で登山計画書データを捜索救助活動に活用するための協定を締結しており、この条例の制定後は知事名でも同様の協定を締結することとしております。

 県といたしましては、登山計画書の提出義務化に伴いまして登山者から個人情報をお預かりするようになることから、警察や地区遭対協等の関係者と一体となってその情報管理に万全を期してまいります。

 2問目が、旅行業者が実施するツアー登山に関する安全性等の確保についてでございます。

 ツアー登山は、計画の立案、交通機関や宿泊する山小屋の手配などを旅行会社が行い、登山中は登山ガイドが案内する形態の登山でございます。

 昨年の遭難件数272件のうちツアー登山やガイドつき登山の遭難件数は16件でございまして、全体に占める割合は5.9%と高くはございませんが、一つのツアーの参加者数が多いことから一たび遭難事故が発生すると大事故につながりかねないおそれがございます。実際に、平成18年10月には北アルプスの白馬岳で、また同21年7月には御指摘がありましたように北海道のトムラウシ山で、また同24年11月には中国万里の長城付近でツアー登山参加者の遭難死亡事故が発生しております。

 こうした状況に対応するため、日本旅行業協会や全国旅行業協会がツアー登山運用ガイドラインを策定し、ツアー登山には登山ガイドをその技量や経験を確認した上で同行させることとしておりまして、業界内で自主的に安全確保に努めているところでございます。

 県といたしましても、大きな遭難事故につながりかねないツアー登山に関しましては、登山安全条例案第9条におきまして、ツアー登山を実施する旅行業者に対してガイドの同行を義務づけしているところでございます。

 あわせて、ツアー登山に参加する登山者に必要な行動や考え方につきましては、条例案第12条に基づいて、条例制定後に作成いたしますガイドラインに詳しく盛り込むこととしております。

 県といたしましては、旅行業に係る両協会、直接ツアー旅行を企画する旅行業者、そして県内の山岳においてガイドの役割を担うことが多い信州登山案内人等に対しまして、条例とあわせて、ガイドラインの内容に関しましても周知徹底を図っていくことで、旅行業者が実施するツアー登山に関するガイドの同行と安全確保に努めてまいります。

 以上でございます。

 

◆小林東一郎

 

 先ほどの部長答弁にございました「コンパス」の運用事業体との協定でありますが、そこの中には個人情報を匿名加工情報として提供するというようなことに関しての協定を盛り込んでいかれるお考えはお持ちでしょうか。観光部長にお聞きをいたします。

 

◎観光部長(吉沢猛)

 

 現在の「コンパス」の個人情報の取り扱いにつきましては、個人情報の中でも、姓名、生年月日、年齢などたくさんの種類があるような形で区分されてあります。その中の複数を組み合わせることによりまして個人を特定するというシステムと聞いております。したがいまして、県として利用する場合におきましても、その点につきましては「コンパス」との間できちんとした確認事項をさせていただきまして進めてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

 

◆小林東一郎

 

 登山者及び遭難者の高齢化の現象は我が国の登山界が抱える構造的な問題であり、ツアー登山における遭難事故は旅行業者や登山ガイドの認識不足や力量不足だけにかかわる特殊なケースではなく、構造的な脆弱性の一端があらわれたものだと指摘をされています。

 また、山登りの実力とは危急時にどのような対応力を発揮できるかにあるものと言われています。単に幾つもの山を登ってきた経験があるから難度の高い山にも挑戦できるという思い込みを山のグレーディングが助長するのではないかとの懸念も依然として残っています。

 また、今お聞きいたしましたように、「コンパス」の個人情報が匿名加工情報として提供されることがないとこれが言い切れるのか。ここにも注意をしていかなければならない、こういう課題もあると思います。

 これらの課題を乗り越えて、文字どおり登山を安全に楽しんでいただくための条例となることを要請をいたしまして、質問を終わります。