平成27年 6月定例県議会 発言内容(小林東一郎議員)
◆小林東一郎
順次質問いたします。初めに、前回に引き続き大北森林組合の補助金不正受給について伺ってまいります。
5月27日に同組合の補助金問題検討委員会が第2次中間報告を公表、続いて6月17日に県の補助金不正受給等検証委員会の中間報告が公表されています。組合の検討委員会は、大規模かつ長期にわたる補助金の不正受給を県の関与なしに進めることは不可能としているのに対し、県の検証委員会は、契機において県の関与があったことは十分問題ではあるが、不適正申請の主導的な実行者は組合とそれを否定しています。双方の主張は大きく隔たっており、どちらが真実なのか県民には判断ができません。
まず、知事に、原因究明と再発防止に向けてのこれまでのスタンスと現時点の意気込みについてお聞きします。
次に、総務部、会計局、林務部合同の調査班の責任者である太田副知事に、みずからを、第三者の立場から専門的見地に基づいて本件問題の事実認定や評価、改善策を検討するものと定義している組合の検討委員会による第2次中間報告をどのように評価しておられるか。お聞きします。とりわけ、「返金に関する基本的な考え方について」に対する御見解をお聞かせください。
◎知事(阿部守一)
大北森林組合の補助金不適正受給についての原因究明と再発防止に向けてのスタンス、意気込みという御質問でございます。
昨年の12月、不適正受給の疑いの報告を受け、直ちに総務部を中心とする合同調査班の設置を指示し、徹底的な調査を命じたところであります。
その調査が一定程度進展する中で、ことしの4月に有識者による検証委員会を設置して、県の調査について専門的かつ客観的な立場から評価、検証して、全容解明と再発防止策の検討をいただくように要請をしたところであります。
今回の問題は、森林整備の補助制度への信頼を揺るがすあってはならない極めて遺憾なことだというふうに考えております。検証委員会から現時点で中間報告という形で出されておりますけれども、報告されている原因、課題、こうしたことを真摯に受けとめていかなければいけないというふうに考えています。
そういう観点で、最終報告を待たずに、林務参事、コンプライアンス担当として配置をさせていただき、再発防止に徹底的に取り組んでいきたいというふうに考えております。
また、来月、検証委員会の最終報告が予定されておりますが、この最終報告を踏まえて補助金の返還請求等厳正に対処するとともに、林務行政の信頼回復に全力を尽くしていきたいと考えています。
以上です。
◎副知事(太田寛)
大北森林組合が設置いたしました補助金問題検討委員会の中間報告に対する評価についての御質問でございます。
まず、県では、4月に設置いたしました、弁護士、公認会計士、信州大学教授の有識者3名によります大北森林組合補助金不正受給等検証委員会におきまして、公正、客観的な立場から事案の実態を検証していただいたところでございまして、去る6月17日に、本文52ページ、附属資料73ページから成る詳細な中間報告をいただいたところでございます。
一方、御質問にございました大北森林組合が設置した補助金問題検討委員会が5月27日に発表いたしました全10ページの中間報告については、その内容は承知しておりますが、基本的にはこの報告というのは森林組合に対する報告書であり、県への報告はなされない、また、今後、最終報告書が作成されるとされています。こういったことから現時点での評価については差し控えたいと存じます。
また、同中間報告の中に「返金に関する基本的な考え方について」という一節があることは承知しておりますが、補助金返還額の算定につきましては、補助金を交付した県が国とも協議した上で適切かつ厳正に対処していくというふうに考えております。
◆小林東一郎
県の検証委員会の中間報告では同組合のずさんな会計処理状況が指摘されています。しかも、森林組合法に基づく県の定例検査でそれらが明らかになっていたにもかかわらず、組合の管理体制の改善には至らなかったとされています。
例えば、2007年の検査では、見積書、契約書、精算書等一連の書類整備、透明性の確保が、続く2009年の検査では森林造成事業の請負契約の適正な締結及び補助金の清算処理の適正化が同組合への指示事項となっており、定例検査の実施要領に従えば継続して指導に当たらなければならないはずで、指導がなされていたならばこの時点で不正受給が発覚していた可能性があったはずです。
そこで、林務部長に2点お尋ねをいたします。
1点目、定例検査で毎回繰り返されてきた指摘そのものが、県が定める補助事業実施要領等にのっとる事業実施を同組合が怠ってきた証左ではありませんか。
2点目、森林組合法第111条の2に定められている組合の業務または会計の状況の検査、あるいは第113条に定められている改善措置命令をためらったことが長期にわたる不正受給を組合に続けさせることを許した要因の一つではありませんか。
続けて林務部長に伺いますが、造林関係等の補助事業における本質的な補助対象者は森林所有者であるように思うのですが、それでよろしいでしょうか。そうだとすれば、双方の中間報告において森林所有者の姿が一向に見えてこないのはなぜでしょうか。
また、県の検証委員会中間報告によると同組合の補助金不正受給額は13億円を超え、その規模の大きさ、継続性から考えて極めて悪質であって、佐久森林組合や松本広域森林組合の事例とは異質のものと受けとめざるを得ません。同組合が架空またはそれに近い補助金申請を繰り返し、組合運営の財源に充てていた事実は動かしがたいように思います。
不正受給をした補助金については一義的に組合に返還請求がされると思いますが、森林組合法には役員の組合に対する賠償責任が定められています。理事等組合役員がいかなる責任を問われることになるのか。これも林務部長に伺います。
◎林務部長(塩原豊)
大北森林組合の補助金不正受給について4点お尋ねをいただきました。
初めに、県の常例検査と補助事業の関係についてのお尋ねでございますが、議員御指摘のとおり、大北森林組合に対する県の常例検査では、組合の事業全般にかかわる会計処理状況について契約関係書類等の不備を指摘し、その改善について継続して指導してきたところです。
造林関係補助事業の実施に当たっては契約関係書類等の整備を明確に義務づけていなかったために、早急にこの実施要領を改正いたしまして関係書類等の整備を明確化するなど改善を図ってまいりたいと考えております。
次に、森林組合法に基づく検査及び改善措置命令についてのお尋ねでございますが、森林組合法第111条第2項の規定による検査は通常認定検査と言われており、組合の業務または会計が法令等に違反する疑いがあると認められるときはいつでも実施できるものです。
大北森林組合に対する常例検査においては、書類等の不備を指摘しているものの、今回判明したような補助金の取り扱いにかかわる法令等に違反する事実があるとは見抜けず、本事案が発覚するまでは認定検査を実施してきておりません。
また、森林組合法第113条の適用につきましても、同様の理由によりまして改善措置命令は発せずに、継続して指導することにより自主的な改善を求めてきたものでございます。
常例検査において書類等の不備を指摘しながら改善させることができなかったことは今回の不適正受給を継続させた一因と考えておりまして、今後は、重要な指摘事項については早期に改善を図るため、法的措置である改善措置命令も念頭に入れた指導体系へ見直してまいりたいと考えております。
次に、補助事業における森林所有者についてのお尋ねですが、造林関係補助事業は、森林の多面的機能の維持増進を図るために造林事業を実際に実施する団体等に対して支援するものであります。森林組合は森林所有者からの委託を受けて補助対象者となっております。一方、森林所有者にとりましても、所有する森林の整備が進むという間接的な効果はございます。
今回の補助金の不適正受給の事業については補助対象者は森林組合でございますので、森林所有者の本事案へのかかわりは現時点では確認されておりませんことから、県の検証委員会での中間報告には取り上げられなかったところでございます。
次に、森林組合の役員の責任についてのお尋ねでございますが、森林組合法では、森林組合に理事及び監事の役員を置くこととし、その責任については組合に対する責任と第三者に対する責任の規定が置かれています。
まず、組合に対する責任といたしましては、役員は善良なる管理者の注意をもって組合のため忠実にその職務を執行しなければならず、その任務を怠ったときには、森林組合法第49条の3第1項の規定により、組合に対し、怠った行為によって生じた損害を賠償する責任を負うこととされています。その解釈としては、役員は、職務遂行上、故意または過失がある場合には任務を怠った行為と相当因果関係がある範囲で無限責任を負うと解されております。
なお、第三者に対する責任といたしましては、森林組合法第49条の3第8項の規定により、役員がその職務を行うについて悪意または重大な過失があったときは第三者に生じた損害について賠償責任を負うこととされております。
以上でございます。
◆小林東一郎
この補助金不正受給問題から浮かび上がってくるのは、公金感覚の欠如と県の管理意識の低さです。前任者のやってきたことに疑問を抱きつつも、それを踏襲する。県の検証委員会の中間報告には、「現場の判断でルールから逸脱した運用が許される慣行があったことは否めない。」との指摘がありますし、「申請に対していわばフリーハンドで交付される補助金」との表現がその全てを物語っていると感じます。
つまりは、実力のない組合に過剰な庇護を加え、結果として不正受給を許す構図を県がつくってきたことがうかがえるのです。しかも、不正を突きとめるきっかけがあったにもかかわらず、それを逃してきた組織の体質があるように思います。
知事は、このことをいかに総括され、組織の立て直しを図っていかれるおつもりか。お聞きいたします。
また、アクションプランが林務部内、現地機関、あるいは林業事業体にとって過重となっていた状況が双方の報告書から読み取れるのですが、改善を図るお考えがあるか。あわせて知事にお伺いします。
◎知事(阿部守一)
県組織の体質の立て直しについての御質問でございます。
今回の不適正受給に対する総括、検証委員会の最終報告を拝見した上でしっかり行わなければいけないというふうに思っておりますが、ただいま小林議員からもいろいろ御指摘、御質問の中でいただいたように、どうしてもっと早い段階で組織的に問題が共有できなかったのかという思いはあります。一部の職員がいろいろ問題を感じて、今回発見できたのも職員がちょっとおかしいなということから契機になったわけですが、もっと早い段階でそうしたことが行われるような組織であればこれほど問題を深刻化させるまでには至らない可能性もあったんじゃないかというふうに思っております。
そういう意味で、今回、林務部の職員あるいは県庁職員一人一人が今回のことを自分のこととして考えていかなければいけないというふうに思いますし、組織のあり方としてはこれからより風通しのいい組織を考えていくことが求められているというふうに思います。
また、他方で、コンプライアンスをより県庁組織の中にも徹底していくということが必要ではないかというふうに思っています。内部牽制体制の強化でありますとか予算執行のあり方であるとか、こうしたことをしっかり考えて、今後、こうした案件が再び起きることがないように徹底的な取り組みを行うと同時に、県民の皆様方からの信頼回復に努めていきたいというふうに思います。
それから、森林づくりアクションプランについてでございます。
平成16年度を始期とします第1期のアクションプランにおきましては、当時喫緊の課題となっていた間伐を集中的に進めていくための目標値を設定しています。この策定段階、県全体で間伐が必要な森林面積を本庁において算定して、必ずしも地域の状況を十分考慮せずに地域に配分したということから、大北地域では過重になっていた部分があったのではないかというふうには考えています。
他方で、今現在は第2期のアクションプランでありますが、平成23年度に策定いたしましたけれども、これまでの保育間伐中心の取り組みから搬出間伐など森林資源の利活用に力点を置いた内容とする中で、本庁と現地機関とが情報を共有し、地域の実情を十分考慮したものに改善を図ったところであります。
県としては、現行のアクションプランの目標の実現に向けて着実に森林・林業施策を展開していきたいというふうに考えておりますが、本年度が5年目の見直し時期ということにもなっています。より実効性の高い計画とするべく、社会情勢の変化等を踏まえ、必要に応じた見直しを行ってまいりたいというふうに考えておりますし、今回得られた教訓を踏まえて改善すべき点があればしっかりと対応していきたいと思っております。
以上です。
◆小林東一郎
会計局や監査委員も長きにわたり不正を素通りさせたことになります。形式が整っているならそれでよしとのことなら、権限を有効に行使していないとのそしりを免れないのでは。仮に組織内で談合でもあればどうなるのでしょう。とりわけ監査委員の監査は事業の的確性や効率性にまで及んでいます。
今回の不正受給でチェックが及ばなかった原因と再発防止に向けての具体的な対応策をお示しをいただきたい。会計管理者と代表監査委員にお聞きします。
また、この質問の締めくくりとして、知事に、組合からの補助金の返還及び国への返還についての基本的な考え方をお聞きいたします。
◎会計管理者兼会計局長(石田訓教)
補助金不適正受給事案に関しチェックが及ばなかった原因と再発防止に向けた対応策についての御質問でございます。
会計局及び各会計センターにおいては、執行機関から履行確認、完了検査の結果に関する帳票類の提出を求め、それらをもって債務の確定、支払い義務の発生を判断し、支出を決定しているところでございます。
このたびの事案につきましては、検証委員会の中間報告にも執行機関による履行確認、完了検査が適切に行われていなかったと指摘されているところで、そうした事実を提出された帳票類をもってしては把握できなかったことに支出審査としての大きな課題があったと認識をしております。
会計局といたしまして、このことを重く受けとめ、去る6月19日、各会計センターの所長を招集し、補助事業の支出審査に当たって完了写真を初めとした証拠書類の提出を求めるなどして、執行機関による履行確認、完了検査が着実に実施されているかの審査を徹底するよう文書をもって指示したところでございます。
また、このことにつきましては、6月23日開催の地方事務所長会議、さらには県内4会場で開催した財務会計事務担当者を集めた会議において執行機関に対しても周知を図ったところでございます。
会計局といたしましては、これまでにも増して的確な審査を実施することでかかる不適正事案が発生することのないよう取り組んでまいりたいと考えております。
以上でございます。
◎監査委員(田口敏子)
このたびの大北森林組合の補助金不正受給、これは県民の信頼を著しく損なう行為であり、甚だ遺憾、残念と考えております。
林務部に対して早期かつ徹底した調査の実施を求めるとともに、県が設置しております検証委員会の検証の進捗状況などについても報告を求めているところでございます。
私ども監査委員は、合規性、正確性の観点はもとより、経済性、効率性、そして有効性をも重視した監査を心がけ、監査に当たっては、それぞれの会計上の手続を経た上で、監査対象機関から提出される監査調書をもとに実施しておりますが、限られた人員と時間の中でも行っており、残念ながら今回の不正を明らかにできなかったと思っております。
今後は、林務部、それから行政執行機関において提示された再発防止対策についてその有効性を立場として検証し、着実に実行されるよう厳しくチェックしてまいりたいと考えております。
以上であります。
◎知事(阿部守一)
補助金返還についての基本的な考え方という御質問でございます。
大北森林組合からの補助金の返還につきましては、国庫補助金も入っている状況でございます。国とも十分協議をしながら、県の補助金等交付規則にのっとって厳正かつ速やかに進めていくことが必要だと考えております。
また、国への返還につきましては、県から組合への返還請求額をもとに国庫補助相当額を算定し、適正に対応していく考えであります。
以上です。
◆小林東一郎
次に、現地機関のあり方を中心とした県の行政機構のあり方について伺います。
去る6月8日に開催された第1回行政機構審議会において、しあわせ信州創造プランや地方創生推進のため効果的な市町村支援や住民の利便性向上への配慮がより求められている、限られた財源の中、機能発揮のため現地機関の効率化を図る、試験研究機関が本県の産業振興に貢献するための機能等の強化の三つの観点からあり方検討の諮問がされたところです。
また、知事からは、縦割りの弊害を排し横断的に対応、人員削減ありきでないとの方向性も示されています。
知事は、御自身が考えておられる問題点として、地方事務所長等には知事と同じ感覚で業務に当たってもらいたいが、それには権限とか財源の制約があると発言されておられますが、権限や財源の現地機関への移譲についてはどのような感覚で進めていかれるおつもりですか。
また、知事の言われる、現地機関が知事の目、耳の役割を果たすとのことなら、本庁組織のスリム化もあわせて検討すべきと思いますが、知事の御見解をお聞かせください。
審議会では、早速、人口減少を踏まえ、現地機関の人員は減らすべきとの意見も出されたところですが、例えば、深刻の度合いが増している子供の虐待の問題を考えるとき、児童相談所の機能向上が求められている現実があります。切実な問題を抱える県民が頼るべき身近な機関の機能強化についても検討がされるのでしょうか。
また、大北森林組合の問題で県の検証委員会が指摘している、不適正受給を見過ごしてきたフレキシブルでない組織体制についても検討すべきと思います。知事にお聞きをいたします。
◎知事(阿部守一)
現地機関のあり方についての御質問でございます。
今回、視点の一つとして掲げておりますのが、現地機関が主体的かつ総合的に取り組むことができる課題解決型の組織体制という部分がございます。こうしたことを実現していく上では、本庁から現地機関への権限あるいは予算の移譲、あるいは、これは現地機関だけではなくて、市町村も視野に入れて、市町村に対する権限移譲、あるいは県と市町村との事務の共同化、こうしたことも幅広く視野に入れて現地機関のあり方を見直していくということが重要だというふうに考えております。
また、本庁組織につきましては平成26年度見直しを行ったところでございますが、御指摘にもありましたが、現地機関と本庁の関係性というのは密接に関係している部分もございます。現地機関を支援する立場である本庁がどういった組織、機能を持っていくことが将来に向けて望ましいのかということについても検討していく必要があるんじゃないかというふうに思っております。本庁と現地機関、総体として県民の皆様方に信頼され、期待に応えることができる組織体制となるよう努力していきたいと考えています。
それから、児童相談所、あるいは今回の大北森林組合の不適正受給にかかわる組織等、こうしたものをどう考えていくかという御質問でございます。
まず、児童相談所でありますが、これは、虐待等の相談件数の増加あるいは相談内容の複雑化等に伴いまして、児童福祉司あるいは児童指導員等の専門職員を増員してきております。私が就任してからの5年間でも8名増員をして五つの児童相談所全体で90名体制ということで、順次体制強化してきております。
また、大北森林組合の補助金不適正受給に関しましては、今回、検証委員会の中間報告の段階ではございますが、林務部の事業実施に当たってのチェック体制あるいは地方事務所における管理監督のあり方等について御指摘をいただいているという状況であります。こうしたものをやはり真摯に受けとめて対応していく必要があるというふうに考えています。
そういう意味で、児童相談所であるとか、地方事務所の例えば林務関係のあり方、あるいはチェック機関のあり方、こうしたもの総体を含めてめり張りをつけて現地機関のあり方をしっかり考えていくことが重要だというふうに考えています。
以上です。
◆小林東一郎
最後に、中信地区特別支援学校再編整備計画案について伺います。
県教委が6月18日に示した計画案にかかわる懇談会が、先週の金曜日、松本合同庁舎で開催され、児童生徒の保護者を初め、盲学校やろう学校のOB、それに現場の教職員が参加、意見交換では計画案に対するさまざまな疑問が示されました。県教育委員会には、それぞれの学校関係者に丁寧に説明し、疑問に答え、理解を得る努力をする責務があります。
中信地区特別支援教育の最大の課題は、松本養護学校の過大化、過密化をいかに緩和するかにあります。県特別支援教育連携協議会の検討においても早急な対策が必要とされたところです。
計画案の基本的考え方は、今ある特別支援学校の人的資源、物的資源を有効活用し、再編整備を進めるにありますが、これは、これまで、県教育委員会が知的障害のある児童生徒の増加により過大化、過密化した知的障害特別支援学校の課題解消の手法として分教室の設置を進めてきた方針に沿うものです。しかし、この手法は、先行する長野地区再編の際、長野養護学校に通う児童生徒の保護者と長野盲学校、ろう学校に通う児童生徒の保護者間の対立を生みました。
さきの懇談会においても、松本養護学校の保護者から、松本盲学校に高等部分教室と医療的ケアが必要な重度・重複障害部門の設置を認めてほしいと松本盲学校関係者に懇願される場面がありました。過大化、過密化を少しでも解消してほしい松本養護学校関係者と、分教室等の受け入れ先となる松本盲学校、ろう学校の関係者が対立する構図だけはつくってはなりません。
そこで、先行した長野地区での再編で得られた教訓は何か。また、その教訓を生かしどのように取り組んでいかれるのか。教育長に伺います。
◎教育委員会教育長(伊藤学司)
中信地区の特別支援学校再編整備計画案についてのお尋ねでございます。
先行した長野地区の状況と中信地区の計画案への反映についてでございますが、長野地区では、平成21年5月に再編整備計画を策定し、これに基づき、平成22年度に長野盲学校内に長野養護学校の高等部分教室を、平成25年度には長野ろう学校内に小学部分教室を設置をしたところでございます。
障害の異なる児童生徒が同じ敷地内で学ぶことについては計画策定の過程で懸念する声はございましたが、校内における児童生徒の導線に配慮することや、高等部分教室は障害が比較的軽い生徒の学びの場としたことなどにより、分教室設置後、これまで不都合は生じておらず、むしろ、生徒同士、教員同士の交流が進んだことで教育活動が活性化されつつあるというふうに承知をしてございます。
中信地区の特別支援学校再編整備計画案の策定に当たりましては、先行した長野地区の状況を参考にしつつ、学校関係者や地域の保護者、専門家から成る特別支援教育連携協議会において昨年度1年間かけて検討された結果を十分踏まえ、再編整備により松本養護学校の過大化、過密化を解消するとともに、中信地区の特別支援教育の充実に資するものとなるようにしているところでございます。
◆小林東一郎
松本盲学校等での分教室設置等は、8月上旬予定の計画決定後、本年度中に開設準備をし、来年度からスタートとのスケジュールが示されています。わずか8カ月足らずで視覚障害に特化した学校に新たに別の障害種の子供を受け入れる準備が整うのか大きな疑問を感じます。余りに拙速ではありませんか。
しかも、盲学校では、開設、受け入れと同時に施設改修を始めるとのスケジュールが示されています。必要な施設整備を後回しにするということが、異なる障害種の子供がともに学ぶという特別な配慮が必要とされる教育の場で許されることなのでしょうか。教育長にお聞きいたします。
特別支援学校に子供を通わせる保護者の願いは、よりよい環境で障害の程度に応じた専門的な教育を我が子に受けさせたい、自立の力をつけさせたいに尽きると思います。分教室設置で過大化、過密化の緩和という場当たり的な対応ではなく、知的障害の特別支援学校の新設による抜本的対策こそが多くの関係者の願いでしょう。しかし、県教育委員会は、特別支援学校に在籍する児童生徒数が増加傾向から横ばいに転じ、将来的には減少するとして、学校新設に前向きな姿勢を示したことはありません。
そこで、教育長に伺いますが、計画案に従い再編が進められたとして、現在、当初の想定規模を大幅に上回っている松本養護学校、160人規模の想定ですが現在の生徒数は263名であります。安曇養護学校、こちらは分教室の設置で緩和されつつあるとされていますが、85人規模の学校に現在も165名が学んでいます。これら二つの学校が想定規模となり、当初の教育環境を取り戻すのはいつだと予測しておられますか。教育長に伺います。
◎教育委員会教育長(伊藤学司)
再編整備計画案のスケジュールについてのお尋ねでございますが、昨年度の特別支援教育連携協議会において、松本養護学校の過大化、過密化の解消は喫緊の課題とし、早急な対応が求められたところでございます。
県教育委員会といたしましても、過大化、過密化の解消をできるだけ早期に実現するため、松本盲学校への松本養護学校高等部分教室設置と、松本盲学校、寿台養護学校への医療的なケアの必要な児童生徒の受け入れについては、平成28年4月から着手する案としているところでございます。
このうち松本盲学校につきましては、平成28年4月からの受け入れに必要となる一部教室の配置がえとそれに伴う室内の改装、分教室の学習に必要な備品の調達など施設整備を今年度中に行い、万全な体制で分教室を開設できるよう努めてまいりたいと考えております。
加えて、再来年度以降の受け入れに必要となる施設や教育環境の向上に向けた施設整備については、来年度以降行ってまいりたいと考えてございます。
次に、松本養護学校、安曇養護学校の過大化、過密化の解消の時期についてでございますが、松本養護学校は、大幅な児童生徒数の増加に対応し、14教室を既に増設をしているところでございますが、これに加え、特別教室の普通教室への転用等で何とか対応してきたところでございますが、今御指摘のとおり今年度は本校において263人が学んでいる状況であり、この過大化、過密化の解消は急務となっているところでございます。
今回の再編整備計画案が実現すれば本校に通う児童生徒数が200人を下回る規模となり、転用している教室をもとの機能に戻すなど、過大化、過密化の解消は図られるものと考えてございます。
具体的な時期につきましては、中信松本病院移転にかかわる諸調整なども必要ではございますが、5年程度先にはこの計画に基づいた望ましい教育環境を整えられるよう取り組んでまいりたいと考えてございます。
また、安曇養護学校は、児童生徒増に対応し7教室の増設や、平成22年度に南安曇農業高校内に定員24人の高等部分教室を設置したことにより、本校の児童生徒数はピーク時の202人から今年度は165人と約2割ほど減になってございまして、過密化は緩和されつつある状況であるというところでございます。
以上でございます。
◆小林東一郎
過密化緩和というふうに今おっしゃいましたが、私がお聞きしたのは本来の教育環境を取り戻すのはいつなのかということです。
先ほど教育長は、特別教室の普通教室への転用であるとか、教室を増設してきた、このようにおっしゃいましたが、これらはもともと教育環境の一部を損なって行われたものであって、必ずしも充実に値するものではありません。本来の姿に戻るのはいつなのか。
ちょっと観点を変えて伺います。20年以内に当初の教育環境を取り戻せるとお考えでしょうか。
◎教育委員会教育長(伊藤学司)
再度のお尋ねでございますが、当初の想定というものは教室を増加して新たにつくっていない段階での施設設備を前提とした数でございますので、その後、教室を増加してつくった部分につきましては一定の教育環境を改善をしてきているところでございます。
ただし、先ほど御答弁申し上げましたとおり、特別教室を普通教室に転用しているという点については私どもできる限り早急にこの解消に向けて取り組んでいく必要があるというふうに考えてございまして、先ほど申しましたように、整備計画案を実現すればおおむね5年程度先に、特別教室の普通教室への転用等を解消しながら、適切な教育環境の達成ができるのではないかと、このように計画をしているところでございます。
◆小林東一郎
答弁をいただいたところでありますけれども、私の言っていることをよく御理解をいただきたい。もともとあった教育環境を損なって教室が増設をされているんです。そちらの解消がなければ本質的な解決にならないのではないかというふうに申し上げている。もう一度伺いまして、質問を終わります。
◎教育委員会教育長(伊藤学司)
教室を増加させた部分につきましては学校等と相談しながら教育活動に支障が生じないような場所に施設を増設をしてきたところでございますので、教室の増によって今の教育環境が大きく損なわれているところはないというふうに私どもは承知をしているところでございます。