平成28年11月定例県議会 発言内容(石和大議員)


◆石和大

   

 人口減少社会は、これまでの社会生活のいろいろなところに変化を生じさせます。県内のように中山間地が多く過疎化が進行する地域が少なくない状況においては、交通弱者や買い物弱者という状況に置かれてしまう人々がふえています。好むと好まざるとにかかわらず、住んで暮らしていたところがいつの間にか人が減り、今まであったものがなくなり、暮らしづらいところになってしまったということになります。

 郊外の大型店舗がありにぎわいを見せていた地域から、売り上げ減少を主な理由として、先の見通し不安から、核となっていた店舗が突然撤退する。これは日本中の住宅地の周辺でも起きています。中山間地だけのことではありません。

 人口減少社会への対応と少子化に歯どめをかける対策が喫緊の課題です。とはいえ、一朝一夕にどうなるものではありません。複合的な要素を多面的に制度改善をしていくことが求められます。

 そこで、まず少子化対策と子育て支援について質問をいたします。結婚支援についてお聞きします。

 県では、平成23年度から、具体的に結婚支援という事業を展開してきました。最初の2年間は企画部が所管し、その後、県民文化部が所管しています。当初は、行政が結婚支援をやるのかという感じでした。私もこの件については何度か質問していますが、なかなか成果があらわれにくい事業だと感じています。6年目を迎えている結婚支援の施策の経過と成果をお聞かせください。

 これまで行ってきた県の結婚支援で成果を上げつつあるのが婚活サポーターです。これまでに約1,200件近いお見合いをセットして、約80件の結婚を導いています。行政が行う結婚支援としては大きな成果だと感じています。やはり何事も人だなと感じますが、サポーターの皆さんはどんな活動をされているのか、具体的にお聞かせください。

 また、これをさらに充実することが大事だと感じますが、10月4日に長野市にオープンした長野県婚活支援センターは婚活サポーターの後押しとなるのか、また、オール信州の結婚支援がうたわれているが、どんな機能を持っているのか、お聞かせください。

 次に、あるデータによると、日本人100人のうち放っておいて恋愛できるのは30人、ほかの70人のうち8割は、恋愛も結婚もしたいけれどどうしたらいいかわからないというようなものがあります。特に男性にそんな傾向が強いようですが、次世代サポートという観点から、どう捉えてどんなサポートが可能と考えているのか、県民文化部長にお聞きをいたします。

      

◎県民文化部長(青木弘)

 

 結婚支援施策の経過と成果についてのお尋ねでございます。

 本県の結婚支援といたしましては、まず、平成23年度に市町村等の公的な結婚相談所でお相手の紹介を行うためのツールとして、未婚者のプロフィールをデータベース化いたしましたながの結婚マッチングシステムを構築いたしました。

 また、平成25年度からは、本格的に結婚支援を行うため、ながの出会い応援プロジェクト事業を開始し、出会いの仲立ちなどをボランティアで行っていただく婚活サポーター制度、出会いや成婚につなげるためのさまざまな講座、交流会による婚活セミナー等を行ってまいりました。

 さらに、本年10月には、本県の結婚支援を一層強化するため、長野県婚活支援センターを開所いたしました。若者への情報発信を強化するとともに、市町村等の公的な結婚相談所や民間企業、婚活サポーター等との連携を強化し、県内の婚姻件数の増加につなげてまいりたいと考えております。

 県の結婚支援によるこれまでの成果につきましては、6年間でお見合いが1,636件行われ、成婚数は166件となっております。特に、婚活サポーターは、11月18日現在の登録者が713名となり、1,214件のお見合いと82件の成婚支援をいただくなどの成果を上げていただいております。

 続きまして、婚活サポーターの活動とセンターの機能等についてでございます。

 婚活サポーターの活動は、友人や知人、近所の方などからの依頼を受け、お見合いの仲立ちを行うものでございまして、昔の地域の世話焼きをイメージしております。こうした個人の活動に加えまして、婚活サポーター同士がグループを結成し、さまざまな婚活支援に取り組む動きも活発化しております。現在20のグループが結成されておりまして、婚活イベントやセミナーの開催など積極的な活動が展開されております。

 一方、婚活サポーターには未経験者も多く、婚活支援のスキルアップが課題となっております。平成26年度から実施しております婚活コーディネーターによるサポーター活動の支援に加えまして、このたびの長野県婚活支援センターでは、経験等に応じたレベル別の研修会を実施するなど、さらなる活動の後押しに努めてまいります。

 未婚者に対するサポートについてでございます。

 内閣府の平成26年度結婚・家族形成に関する意識調査によりますと、未婚者が挙げます交際への不安として、特に男性では、どのように声をかけてよいかわからない、どうしたら親しい人と恋人になれるかわからないといった回答が多くなっております。

 議員御指摘のとおり、恋愛や結婚における関係づくりに対する不安感を持つ傾向は男性に特に強い状況で、こうした未婚者へのサポートは結婚支援を行う上で重要な視点と考えております。

 長野県婚活支援センターでは、婚活コーディネーターが婚活相談を実施しておりまして、異性との交際の仕方や会話のコツなどを助言し、出会いにつながる婚活イベント等を紹介しております。一方、婚活イベントが苦手な未婚者には、個人に寄り添った支援を行います婚活サポーターを紹介するなど、適性に応じたサポートを行っております。

 今後とも、長野県婚活支援センターにおきまして、若者の出会いや交際につながる環境づくりに努めてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

      

◆石和大

 

 現代社会においては、おせっかいも大事なことであります。そういうことについて、県としてもまたさらなる推進をお願いしたいというふうに思います。

 次に、子育て支援についてお聞きをいたします。

 子供を生み育てやすい長野県を目指すことは、県の目標の一つであります。子育てするなら長野県ということをうたっています。県内にいる皆さんはもとより、子育てをするために長野県に移住する、そんな人たちにとって、さまざまな制度の違いは戸惑いを感じさせます。

 そんな制度の違いの中に、子供の医療費があります。東京都の場合、子供が医療機関で診療を受けたとき、窓口で医療費を払う必要はありません。長野県では、窓口で一旦負担額を支払い、後にそれが給付されるという形です。東京から移住してきたら戸惑いを覚えるでしょう。

 長野県及び各市町村は、これまで、地域の実情に応じ、工夫を凝らしたさまざまな少子化対策に取り組んできています。特に、子供の医療については、全ての市町村において、子育て家庭の経済的負担を軽減し、安心して医療が受けられるよう、医療費の自己負担に対して補助する市町村単独の医療費助成を実施しており、県は市町村が負担している費用に対して補助金交付により支援を行ってきているということであります。

 一方国は、このような地方自治体による医療費助成の取り組みに対して、現物給付化した場合には医療費の波及増が生じるとし、その波及増分は実施自治体が負担すべきものとして、本来国が負担すべき国民健康保険国庫負担金等の減額調整措置を講じています。

 この減額調整措置について、国では、6月に閣議決定した一億総活躍プランの中で、国保の減額調整措置のあり方について見直しを含め検討し、年末までに結論を得るとされているところであるが、現在の国の動向と県の対応はどうなっているのか。

 これまで本県が現物給付化、いわゆる窓口無料化の導入をしていない理由として、国保減額調整措置、いわゆる国のペナルティーが言われてきているが、それ以外に財政面での理由はあるのか。国が国保減額調整措置を見直し、それを受けて本県でも現物給付化をする場合には、住民や医療機関の中で混乱を生じさせないために県統一のルールづくりが必要ではないか。また、現物給付化の検討に当たっては、実施主体である市町村と十分な協議を行う必要があると考えるがいかがか、健康福祉部長にお聞きをいたします。

 次に、信州やまほいくについてお聞きします。

 森のようちえんという形態があり、県でもそのようにも表現をしているわけですが、この二つの表現についての相関関係はどのようになっているのか。さらに、この信州やまほいくの推移と成果はいかがか。また、対象児童と保護者の反応はどうか。さらには、森のようちえんという形態はいささかの歴史もあると思いますが、子供たちへの影響の分析と評価についてはどんな研究があるのかお聞かせをください。

 次に、信州やまほいくは県内外の子育て世代の移住にもつながると考えますが、事故防止対策はいかになされていて、それはいかに広報されているのか。特に、県外については、信州で子育てをしたいという移住希望者には魅力だと考えますが、部局横断的に発信できているのか、県民文化部長にお聞きをいたします。

      

◎健康福祉部長(山本英紀)

 

 子供の医療費の現物給付化への課題と対応について、順次お答えをさせていただきます。

 国では、今月18日に開催された社会保障審議会医療保険部会において、国保の国庫負担金減額調整措置のあり方について、子供の医療制度のあり方等に関する検討会における議論を踏まえ、見直しの対象範囲や時期など、考えられる論点が提示されたところです。同部会での議論を踏まえ、年末までに具体的な見直しの内容が示されるものと考えております。

 県ではこれまで、県単独要望のほか、全国知事会を通じて、国保の減額調整措置は一億総活躍社会の実現に向けて少子化対策を推進する国の方針に逆行するものとして、直ちに廃止するよう国に対して要望してきたところであり、引き続き国の動向を注視するとともに、国が減額調整措置の見直しを行った場合には、速やかに検討を行いたいと考えております。

 現物給付を導入した場合に、市町村の財政面で最も大きな影響があるのは、議員御指摘の国保の国庫負担金減額調整措置となります。ほかに考えられるものとして、一部の健康保険組合で医療費の自己負担に対して組合独自の付加給付を行っておりますが、現物給付化することで、この付加給付が停止されることが見込まれます。停止されることとなる付加給付相当額については、新たに市町村が負担することとなるため、現物給付化に伴って生じる財政的な負担と考えております。

 次に、県統一のルールづくりと市町村との連携については、国が国保減額調整措置を見直した場合、これまで重ねてきた実施主体である市町村との検討の前提条件が大きく変わることになるため、子供の医療費の現物給付化について、市町村のお考えを丁寧にお聞きしながら検討していくことになると認識しております。

 その際は、議員御指摘のとおり、県民や医療機関の窓口で混乱が生じないよう、制度の導入時期や医療機関における福祉医療費の請求方法などについて全県的なルールづくりが必要と考えております。

 県としては、国の見直し内容を精査した上で、先ほど申し上げた停止される付加給付の財政的影響を含めて、どういった見直しを行うのか、市町村の皆様と一緒に検討してまいります。

 以上であります。

 

◎県民文化部長(青木弘)

 

 信州やまほいくにつきまして、2点お尋ねをいただきました。

 まず、森のようちえんとの関係、信州やまほいくの成果、評価等についてでございます。

 森のようちえんは、自然体験活動を基軸にした保育、教育の総称でございますが、本県では認定基準を定め、全国初の認定制度であります信州型自然保育認定制度を平成27年3月にスタートさせたところでございます。

 信州やまほいくとは、この制度の普及のために一般公募により本年1月に定めた愛称でございます。この信州やまほいくの認定園は、平成27年度に72園でございましたが、本年度も10月末までに28園を新たに加えまして100園となっております。約9,000人の子供が自然保育を受けているという形になります。

 信州やまほいくは、信州の豊かな自然環境と多様な地域資源を活用した、屋外を中心とするさまざまな体験活動を行うものでございまして、保護者からは、心の豊かさが育つ、自己肯定感が持てるようになる、伸び伸びとした子供時代が過ごせるといった肯定的な声が寄せられているところでございます。

 また、上田女子短期大学の上原教授が会長を務めます日本自然保育学会からも、子供が生来持っているみずから学び成長しようとする力が育まれると高い評価を受けております。

 県としましても、子供たちの学びの原動力でありますわくわくどきどきの感性が持続し、将来の自立した人生につながります自己肯定感と自信が育まれることを期待しているところでございまして、今後も信州やまほいく認定制度のさらなる普及に努めてまいりたいと考えております。

 信州やまほいくの事故防止対策と情報発信についてでございます。

 まず、事故防止対策ですが、信州やまほいく認定制度の認定基準には、安全管理に配慮した保育者の配置のほか、安全管理マニュアルの作成や損害保険の加入などを設けているところでございます。また、質、量ともに自然保育に重点を置いております特化型園においては、加えて救急法の講習などの安全管理に関する専門講習の受講を義務づけてもおります。

 こうした認定基準につきましては、信州やまほいくの郷のポータルサイト等に掲載しましたほか、それぞれの園におきましても、入園者説明会の際などに具体的な保育内容や安全管理を説明するとともに、緊急時等の対応やその連絡方法をあわせて周知いただいているところでございます。

 続きまして、情報発信でございますが、信州で子育てや暮らしに関心がある方を対象に、昨年7月に銀座NAGANOで認定制度や認定園に通う先輩移住者の子育てぶりを紹介しましたほか、本年度も、しあわせ信州やまほいくセミナーと題しまして、認定園の活動紹介などを行っております。

 また、信州やまほいくの郷のポータルサイトには、本年1月開設から約12万回のアクセスをいただいているところでございます。加えて、信州での学びをPRする一環といたしまして、信州やまほいくも本年1月から2月に山手線や都バスへの車体広告に加え、あずさ、しなのの車内広告も行って認知度向上を図ったほか、6月には長野市で行われました全国植樹祭でも、会場内にブースを設けまして、全国に信州やまほいくの魅力を発信するなど、部局の垣根を超えた広報活動も行ってきたところでございます。

 今後も県内外に信州やまほいくの魅力を多くの方々に伝えることができますよう、関係部局とも連携して取り組んでまいりたいというふうに考えております。

 以上でございます。

      

◆石和大

 

 次に、文化振興についてお聞きします。

 県では昨年度、平成27年度に、本年度を文化振興元年とするとうたって施策を展開したわけですが、どんな取り組みをし、どんな成果があったのか、具体的にお聞かせください。

 さらに、元年はスタートの年で次年度以降につながっていくわけですが、本年度はどう進化しつつあるのかお聞かせください。

 先般、東御市の北御牧地区、これは旧北御牧村のエリアですが、八重原と御牧原という二つの大地を舞台に、天空の芸術祭2016が開催されました。旧北御牧村出身の保科豊巳氏が芸術監督を務められました。保科氏は、東京芸大の教授、美術学部長を務め、現在は副学長であります。故郷で自分の中にある原風景の中でいろいろなアーティストが表現できたら、そして地域に暮らす人々も一緒になって表現できたらすばらしいという思いがあったということであります。

 秋の一月の間、天空の大地はすばらしい芸術表現の空間になりました。多くの住民の皆様が毎日交代で受付や管理に当たり、全国から2万8,000人余りの人が来訪したということであります。東京芸大の学生や出身者はもちろん、国内や海外からもアーティストが集い、滞在し、さまざまな表現がありました。

 県の文化振興計画にもあるアーティスト・イン・レジデンス、これは、アーティストが滞在して作品を制作するというものですが、今回の東御市の天空の芸術祭でも、小規模であっても行われています。現在のこのレジデンスに対する県の取り組みはどうか、お聞きします。

 あわせて、このレジデンスは、世界中のネットワークが広がっているとのことです。県でも、取り組みを充実させ、国内外からアーティストを呼び込めたらおもしろい展開になる期待がありますが、お考えはいかがか、お聞きをいたします。

 さらに、信州の自然の中で開催される芸術祭は、大小いろいろ開催されるとおもしろいと考えます。大きくなると、2年に一度のビエンナーレ、3年に一度のトリエンナーレということになりますが、県内での取り組みの状況と今後の見通しはどうか、お聞きをいたします。

 次に、信濃美術館についてお聞きします。

 立地的に善光寺との連携が必要だと感じるが、計画はどうなっているのか。ランドスケープ、つまり景観と調和ということが大事だと感じるが、設計に反映されるのかどうか。人を呼べる美術館、美術館を目的に人々が訪れる美術館であってほしいと考えますが、収蔵品は魅力的なものが多くあるのかどうか。それを多くの県民が知らなければ魅力とならないと考えますが、休館中に巡回展や県内の多くの美術館への貸し出しをして、県民に作品の愛着を持って、また新しい美術館で見たいというリピートの感覚を醸成すべきと考えるがいかがか、お聞かせください。

 先ほど、大小の芸術祭について触れましたが、新しい県立美術館では、長野県出身の芸術家と連携し、企画展を開催できるスペースを確保し、さまざまな表現ができるように工夫をすべきと考えますがいかがか、県民文化部長にお聞きをいたします。

 次に、地域の文化の継承についてお聞きします。

 文科省は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて文化芸術立国中期プランを発表し、そんな中で、文化財の保存修理、防災対策の強化等の抜本的強化をうたっています。

 文化庁では、平成29年度の文化遺産総合活用推進事業をうたい、目的として、我が国の宝である地域の多様で豊かな文化遺産を活用した伝統芸能、伝統行事の公開、後継者の育成、古典に親しむ活動など、各地域の実情に応じた特色ある総合的な取り組みに対して補助金を交付することで、文化振興とともに地域活性化を推進することを目的とするとしています。県ではどんな取り組みを考えているのか、お聞きします。

 あわせて、世界遺産に対して日本遺産という取り組みがありますが、その取り組みに対する進捗を教育長にお聞きをいたします。

 

◎県民文化部長(青木弘)

 

 文化振興について、順次お答えを申し上げます。

 まず、文化振興元年の成果というお尋ねでございますが、文化振興元年と位置づけました昨年度は、新たに文化振興基金を創設し、文化施設の連携強化や担い手の育成、伝統文化の継承活用の取り組みを進めてまいりました。

 具体的には、県立文化施設と市町村の文化施設との協働、連携による音楽公演等の実施、南信州における民俗芸能継承の取り組みなど、長野県の文化芸術の新たなステージに向け、一歩を踏み出すことができたと考えております。

 本年度は、文化芸術のさらなる振興を目指し、基金の増額を図り、これまでの取り組みをさらに充実させるとともに、新たな取り組みとして、複数の芸術分野からなる4名の芸術監督団を配置し、人材育成や文化施設のネットワーク化など文化芸術を支える基盤づくりを推進するとともに、障害のある方を含め、県民がより質の高い文化芸術に触れる機会の拡大に取り組み始めたところでございます。

 続きまして、アーティスト・イン・レジデンスについてでございます。

 この取り組みは、アーティストが一定期間地域に滞在し、住民と交流を図りながら地域の自然や文化を生かした作品を制作するもので、文化芸術の振興はもとより、国際交流の促進、さらにはクリエーティブな人材の移住、定住など、地方創生の観点からも期待が大きいところでございます。

 県では、昨年度後半から、大町市と連携してモデル事業を実施してございます。遊休施設を滞在制作の拠点として整備する中で、これまで5カ国7人のアーティストが滞在し、市民との交流を図りつつ、地域資源を生かした映像等の作品を制作展示し、市内外の方に鑑賞していただいたところでございます。

 また、県内への普及を推進するため、今月18日に、芸術監督団の本江邦夫氏を講師に、市町村職員等を対象としました講演会、それから長野市や東御市など県内の取り組み事例の発表会を開催したところでございます。

 今後も、モデル事業で得られた課題等を整理しますとともに、県内各地のレジデンス相互の情報の共有、ネットワーク化を進め、事業の普及と国内外への情報発信に取り組んでまいりたいと考えております。

 続きまして、トリエンナーレ等の芸術祭についてでございますが、全国的には、大地の芸術祭、越後妻有アートトリエンナーレや瀬戸内国際芸術祭を初め各地で地方の豊かな自然や文化と現代アートの融合による芸術祭が開催され、地域活性化の起爆剤として注目をされております。

 県内では、ビエンナーレ、トリエンナーレとして開催されております他県のような大規模な取り組みは行われていないものと承知をしているところでございます。

 続きまして、信濃美術館についてでございます。

 まず、善光寺との連携についてでございます。

 信濃美術館が善光寺に隣接する有利な立地条件を美術館の集客につなげられていないことは課題であると認識しております。整備基本構想では、立地条件を生かした整備を掲げまして、善光寺と美術館がある城山公園との回遊性を高めるための周辺整備を行うこととしております。

 具体的には、長野市におきまして、善光寺東庭園と城山公園との間の交差点付近の改良も検討しておりまして、この改良には、善光寺も積極的に賛同いただいております。引き続き善光寺や長野市と連携をしっかり図りながら整備を進めてまいりたいと考えております。

 また、景観との調和につきましては、新美術館のコンセプトの第1番目にランドスケープミュージアム、いわゆる風景画のような美術館を掲げております。その意味で、景観との調和は新美術館の整備に当たり非常に重要な要素と考えておりまして、善光寺や周辺の山並み、自然美と調和した美術館となりますよう、今後行います基本設計に反映させてまいりたいと思います。

 それから、信濃美術館の収蔵品についてでございますが、信濃美術館は、東山魁夷作品はもちろんのこと、池田満寿夫の版画のパーフェクトコレクションなどの美術品を収蔵しております。また、このほか、菱田春草、池上秀畝、菊池契月など信州ゆかりの作家の作品や、信州の山岳風景を描いた作品のコレクションなど、県として将来に引き継ぐべき貴重な作品も収蔵しております。

 休館中の収蔵品の県内への巡回というようなお話がございましたけれども、休館中は、信濃美術館の収蔵品を積極的に県内各地に巡回をさせまして、広く県民の皆さんに鑑賞機会を提供してまいりたいと考えております。

 来年度も、信濃美術館本館の収蔵品約40点を中信、南信、東信の県内3カ所で展示する巡回展を開催する予定でございますし、東山魁夷作品は、本制作、習作、スケッチを中心に約70点を展示する展覧会を伊那文化会館で開催する予定でございます。

 県内の多くの公立美術館から信濃美術館収蔵品展の開催希望が寄せられております。平成30年度以降、これらの美術館と連携した巡回展を開催してまいりたいと考えておりますし、これら巡回展にあわせまして、新美術館整備のPRを積極的に行い、県民の皆様の美術館整備への機運醸成を図ってまいりたいと考えております。

 最後に、長野県出身の芸術家との連携についてでございます。

 整備基本構想では、信州ゆかりの芸術家や地域の芸術活動を支援するため、今後活躍が期待される若手芸術家を初めとした信州ゆかりの芸術家に創作活動や発表の場を提供することとしております。

 また、県内各地のアーティスト・イン・レジデンスにより制作された作品の展示や若手作家による公開制作等の取り組みを通じまして、さまざまなジャンルの芸術家と学芸員や来館者が交流し、互いに刺激し合える場を提供してまいりたいと考えております。

 これら整備基本構想の趣旨を踏まえ、今後行う基本設計の中で、実際に利用される方の意見も取り入れながら、長野県出身の芸術家を支援できるよう具体的な施設整備を検討してまいりたいと考えております。

 以上でございます。

      

◎教育長(原山隆一)

 

 文化遺産総合活用推進事業についてでありますけれども、文化庁では従来から文化遺産を活用した地域活性化の取り組みを支援しておりまして、本県におきましても、県の教育委員会や市町村教育委員会が文化庁からの補助を受けて事業を実施しております。

 県教育委員会では、本年度は文化遺産や埋蔵文化財などの体感ツアーの実施、伝統芸能の普及、公開、地域資料のデジタルアーカイブ化を実施しているところであります。

 文化庁におきまして、平成29年度事業の募集が開始されましたことから、現在、来年度の事業内容を検討しているところでございますが、引き続き文化庁の補助事業を有効に活用して、文化財の公開活用を推進してまいりたいというふうに考えております。

 次に、日本遺産についてでありますけれども、日本遺産の認定を受けまして、木曽地域におきましては、ことし6月に木曽地域文化遺産活性化協議会が設立されまして、文化庁の日本遺産魅力発信推進事業補助金を受けて、日本遺産に関する情報発信等の事業を実施しているところであります。

 また、この日本遺産の認定を受けたことによりまして、テレビ番組等で取り上げられることがふえましたり、あるいは県立歴史館で企画展を開催する、そういったような取り組みの中で、木曽の街道文化や伝統産業等を日本遺産としてPRが進んでいるということから、日本遺産の認定が地域の活性化に効果をもたらしているというふうに考えております。

 平成29年度の日本遺産認定を目指す市町村と協働で、縄文文化や教育遺産などをテーマとしたストーリーづくりを進めておりまして、ぜひ本県から2件目の日本遺産が認定されるよう努めてまいりたいというふうに考えております。

           

◆石和大

 

 私は、今回、東御市で開催された天空の芸術祭2016を見て、信州の農村とそこに生きる人々の力を改めて感じました。そして、そこにある景観と作品の調和にも、わくわくするような多様な可能性と価値を感じました。来年も恐らく充実した芸術祭となるというふうに思います。知事も自宅のすぐ目の前の大地でありますから、ぜひお運びをいただいて、お楽しみいただければというふうに思います。

 これからも信州らしい文化振興を期待をしております。伝統文化の継承と新しい文化の創造が融合する、それが信州らしいこれからの文化の創造だと感じております。そんな振興を祈って、質問を終わります。