平成28年11月定例県議会 発言内容(寺沢功希議員)


◆寺沢功希

   

  今議会において、平成29年4月の現地機関見直しに関する条例案と関連予算が提出されております。見直しの必要性として、地域社会の維持、活性化のため、地域の強みや特性を最大限に生かした地域づくりがさらに重要とされており、地域の課題は地域で解決する組織への見直しが必要としています。

 しかし、現在の県の事業に関しては、地域に偏りがあり、格差が生じているように思え、これは現地機関の見直しでは解消できない問題であると考えます。あくまでも、規模は考慮せず、数のみであり、比較対象となるかわかりませんが、地域別の県有施設の数は、全8,497施設中、長野地方事務所管内が2,082施設と最も多く、次いで松本地方事務所管内が1,606施設、佐久地方事務所管内が893施設となっております。

 一方、県民税と事業税の合計税収入では、調定税額で長野地域が約459億1,000万円と最も多く、次いで松本地域が273億4,000万円、諏訪地域が約142億5,000万円となっております。ちなみに、諏訪地域の県有施設数は711施設で5番目となっております。

 そこで、総務部長にお聞きします。

 今年度の当初予算約8,757億円は、本庁と10の地方事務所地域、県外事務所においてどのような割合で使われておられるのでしょうか。また、各地域での事業実施決定には、先ほど申しました各地域での税収入は考慮されておられるのでしょうか。そのほか検討基準があればお聞かせください。

 知事にお聞きします。

 地方として、政治も経済も東京に一極集中していることに異論を唱えながら、長野県内においても同じように政治も経済も長野市に集中しているという意見もあります。以前知事は、この広い県土において、北信で南信の話をしてもわからないし、南信で北信の話をしてもわかってもらえないとおっしゃいました。しかし、行政としてはこうなってはいけません。一方から見渡すのではなく、中央から360度目を向けたほうがよいのではないでしょうか。

 そこで、そろそろ真剣に県庁移転について検討する場を設けてはいかがでしょうか。昨年6月定例議会の清沢議員の質問に対し、知事は、平成26年3月に51億円を超える全体事業費をかけて耐震化工事が完成したところであるため、当面は現庁舎でと答弁されました。

 しかし、仮に議論を始めたとしても、短期間で結論が出る問題ではないと思います。じっくりと議論をするためにも、まずは議論をする場をつくることからだと考えますが、御所見をお聞かせください。あわせて、直近で移転した場合の費用、また経費の増減について試算されたことはありますでしょうか。お聞かせください。

 

◎総務部長(小林透)

 

 地域の強みや特性を生かした地域づくりについての御質問にお答えをいたします。

 当初予算の本庁、現地機関での執行割合についてでございますが、議員御質問の本年度当初予算における本庁と現地の割合や10地域の割合につきましては、まず実施箇所を予算執行時に決定し配分する事業があること、あるいは教育事務所、労政事務所など、10所ないところの管轄区域が地方事務所と異なる現地機関があること、さらには、本庁で執行する予算の中にも地域において実施する事業が含まれることなどから、算出することは困難であるものと考えております。

 ただし、得られるものといたしましては、平成27年度決算における支払い金額ベースでは、一般会計歳出約8,565億円のうち、本庁執行分が約8割、県内の現地機関執行分が約2割、県外事務所執行分は約0.01%程度となっているところでございます。

 このうち、本庁執行には、職員人件費、県債償還経費、社会保障関係の負担金、県税交付金なども含まれるため、本庁の割合が高くなっているという側面もございます。

 また、事業実施に当たっては、各地域からの税収入を考慮しているかどうかとのお尋ねでございますが、事業実施に当たって、個別の事業ごとにその必要性を踏まえ、市町村等地域からの要望や地域の実情等も含めて、それぞれ一定の方針や基準などに基づいて決定されるものと考えているところでございます。

 以上であります。

 

◎知事(阿部守一)

 

 県庁移転の検討についてという御質問でございます。

 まず、長野県は広い県土を持っており、県庁まで相当な距離となってしまう地域があるということ、これは現状事実だと思います。そういう中であるからこそ、地域振興局を充実したり、あるいは市町村への権限移譲を進めたり、こうした各般の取り組みを進めてきているところであります。

 県庁をどこに置くかということについては、長い歴史の中でさまざまな御議論があったわけでありまして、さまざまな経過を経て現在に至っているというふうに考えております。

 現庁舎につきましては、平成23年に耐震化工事に着工し、平成26年3月に51億円を超える全体事業費をかけた上で大規模地震に備えた安全な施設として完成をしたところであります。したがいまして、当面この現庁舎を大切に使いながら県政課題に向き合っていくということが重要だというふうに考えております。

 なお、県庁移転に係る費用については試算をしたということはございません。

 

◎県民文化部長(青木弘)

 

 高等学校入学者選抜に関連してのお尋ねでございます。

 私立高校の入学者選抜につきましては、それぞれの学校設置者の判断によりまして、学力検査日や試験科目、試験内容を決定しているところでございます。

 お話のございました旧11通学区の一般入試の日程をずらしまして私立間の併願を認めるということになりますと、議員御指摘のとおり、実際の入学者数が予測できない面がございまして、入学者数が募集定員を大きく上回る可能性もございます。その場合、必要な教室や教員が確保できないなど、生徒に対する適切な教育環境を損なうおそれもあるものと考えております。

 こうしたことから、旧11通学区の私立高校では一般入試を同じ日に実施しているというふうに考えてございまして、日程をずらすことは難しいのではないかなというふうに理解をしているところでございます。

 それから、公立高校と私立高校の募集定員の比率についてのお尋ねでございます。

 高等学校教育の充実発展には、公立高校と私立高校がそれぞれの特色を生かしてその役割を果たすことが重要と認識しております。公立高校の募集定員の充足率は、近年98%前後で推移しているのに対しまして、私立高校にありましては、中高一貫教育の導入や困難を抱えた生徒へのきめ細かな指導、あるいは全国レベルのクラブ活動といった、受験生にとりましての魅力ある学校づくりに取り組んできた結果、平成22年度の86.9%から、本年度96.5%、約10ポイント上昇している状況でございます。

 公私の募集定員枠の調整につきましては、公私立高等学校連絡協議会におきまして、私立高校や県教育委員会の代表者が特色ある教育を継続実施するための私立高校生徒の一定数の確保や、公立高校に対する期待や果たすべき役割などの視点から協議をいたしまして現在の公私比率に至っているところでございます。

 今後とも、公私立高等学校連絡協議会におきまして、公私協調体制を堅持する中で丁寧に協議してまいりたいというふうに考えているところでございます。

 以上でございます。

 

◎教育長(原山隆一)

 

 愛知県のような入学者選抜方法の導入を検討したらどうかというお話でございます。

 議員御指摘のとおり、愛知県の方式は、通学区内の公立高校を第2志望まで選べることが特徴でありまして、通学区内の高校を二つのグループに分けて、各グループから一つずつ選択でき、公立高校の併願を可能とするものであります。一般入試の学力検査の受験機会が2回ある点も含めて、制度としては非常に複雑な制度で、他県にも例がございません。

 しかし、その結果、第2志望の受験生が第1志望の受験生を押しのけて合格したり、あるいは第2志望校の選択肢が限定されるために不本意入学を生んだりという、受験生の本来の意思がゆがめられているのではないかという課題があるということも聞いております。いかなる入学者選抜制度においても、メリットとデメリットがあるというふうに考えております。

 学びの改革基本構想(案)の中にもあるとおり、長野県の入学者選抜制度がその時代に応じた適切かつ最善なものとなっているかという点については点検し、他県の例も参考にしながら新しい制度について検討してまいりたいと考えております。

 

◎知事(阿部守一)

 

 高校受験に関連して、子供たちが置かれている現状をどう考えるかという御質問でございます。

 高校受験に向かう子供たちにとっては、人生の中で大変大きな関門だというふうに思います。できるだけ子供たちの希望が実現できるようになってほしいというふうに願っております。

 公立学校、私立学校ともに生徒の進路希望に応じた多彩なカリキュラム、あるいは中高一貫教育の導入等、これまでも魅力ある高校づくりに取り組んできていただいているわけでありますけれども、より多彩な、子供たちの希望を実現できるような高校を考えていってもらいたいというふうに思いますし、また、こうした高校側の取り組みだけではなくて、お話が出ておりますように、入学者選抜のあり方、あるいは中学校における進路指導等のあり方、こうしたことは、これは公立側、私立側、あるいは行政、民間含めて、関係者が問題意識をしっかり共有して子供たち本位で考えていくということが重要だというふうに思います。

 教育委員会、あるいは私立学校、それぞれの立場は立場としながら、子供たちにとってどういう形が望ましいのかということをこれからもぜひしっかり考えていっていただきたいなというふうに思っております。

 以上です。

 

◆寺沢功希

 

 少子化で子供が減るのでしばらく様子を見るといったようなことではなく、また、大人からの目線だけではなく、子供の目線にも立って早急な対応をお願いしたいと思います。

 次に、美術館の数が全国一と言われております我が県において、1966年10月、長野県信濃美術館は開館し、その後1990年4月、同所に東山魁夷館が開館し、城山公園内で県立の美術館として50年の歴史を刻んできました。

 本年は50周年記念事業として、ジブリの立体建造物展や東京富士美術館コレクション展など、内容豊かな展覧会が行われ、現在は、企画展「西洋民藝の粋―生活を彩る道具たち―村田コレクションから」が12月11日まで開催されております。

 県は昨年4月、この老朽化した信濃美術館について、有識者らによる整備検討委員会を設置し、検討委により、ことし9月、基本方針がまとめられました。これを受け、今月18日、県は来年秋に一旦閉館し全面改築する基本構想を決定しました。

 また、新館長には、東京国立近代美術館前副館長の松本透氏を起用する方針を発表され、知事は記者会見で、松本透氏について、公立美術館が果たすべき役割機能について熟知しており、館長予定者にふさわしいと紹介をし、松本透氏は、長野県ゆかりの作家を支援し応援していく。新美術館が、年齢、立場、地域等の違いを超えた県民の皆様のコミュニケーションの場となることを念願していると語られました。

 そこで、県民文化部長にお聞きします。

 新館長予定者の松本透氏は、東京国立近代美術館にて松本市出身の前衛芸術家で文化勲章を受賞された草間彌生さんの企画展も担当され、県内ゆかりの作家に精通されておられるとお聞きをしております。大変すばらしい方にめぐり会えたと思いますが、どなたかから紹介があったのでしょうか。どのような経緯で起用に至ったのかお聞かせください。

 また、整備基本構想では、新美術館は作品を収集、展示するだけではなく、芸術家や美術館員、来館者など人本位で運営すること、広い県土の特徴を踏まえ、地域への出張活動も展開し、県民に身近な開かれた存在として運営することを理念とされております。さらに、県内各地の美術館とこれまで以上に緊密な連携をとっていくともされておりますが、具体的にはどのようなことを想定されておられるのでしょうか。お聞かせください。

 加えて、文化芸術のさらなる振興に関連し、今回の補正予算案に芸術文化活動推進事業費として、芸術監督団が企画し文化振興事業団が実施する演劇公演への支援2,400万円が計上されております。具体的にどこでどのような団体のどのような演劇を予定されておられるのでしょうか。また、どのような支援を行う予定で、支援先との調整は現在どのようになっておられるのか、お聞かせください。さらに、この事業の成果目標を巡回公演の集客率70%とされておりますが、この目標値にされた根拠をお聞かせください。

 

◎県民文化部長(青木弘)

 

 芸術文化関係につきまして、3点のお尋ねをいただきました。

 まず、信濃美術館の館長予定者の選任についてというお尋ねでございます。

 松本氏につきましては、複数の美術関係者から適任とのお話をいただいたものでございまして、その後、こうしたお話を受けましたので、知事と面談をいただいた上で、松本氏の経験や実績、また公立美術館の役割、機能を熟知している点、さらには東山魁夷作品にも造詣が深いことというようなことの評価をいたしまして、改めて知事から松本氏に就任をお願いいたしましてお引き受けをいただいたと、こういう経緯でございます。

 それから、新美術館の理念と具体的な取り組みについてのお尋ねでございます。

 まず、人本位で運営することということでございますけれども、それは、作品をつくる芸術家、見せる学芸員、作品を見る来館者など、美術館にかかわりますあらゆる人を中心に捉えて運営することとしてございます。

 具体的には、例えば芸術家への支援といたしまして、現在活動している県出身の芸術家の展覧会を継続的に開催することや、それから学芸員の支援といたしましては、調査研究のためのアートライブラリーを整備すること、また、来館者に対しましては、子供からお年寄りまで障害の有無にかかわらず誰もが学べる美術館教育プログラムの充実を図ることなど、開かれた学びの場としての美術館を想定しているところでございます。

 また、県内美術館との連携につきましては、信濃美術館の収蔵品の巡回展はもちろんのこと、各地域の美術館と共同した展覧会を企画することなども想定しております。また、県民に身近な美術館といたしまして、県内各地の学校や地域に学芸員が出張して美術作品の解説などを行いますアウトリーチ活動も展開していくことを想定してございます。新美術館では、このような取り組みを通じまして、その理念の具体化を図ってまいりたいというふうに考えております。

 最後に、芸術監督団が企画します演劇公演についてのお尋ねでございます。

 この公演そのものは、芸術監督団の一員でございます串田和美氏がシェイクスピア原作の演劇であります「テンペスト」を新たに演出するもので、舞台の周囲に客席を配置した臨場感のある設定が特徴の先駆的な演劇公演を予定しているものでございます。

 実施主体は長野県文化振興事業団でございまして、伊那市、飯山市、長野市の3カ所で開催するために必要な経費に対し支援をするものでございます。

 開催に当たりましては、障害のある方や高校生を招待し、鑑賞機会の拡大を図りますとともに、文化活動の基盤となる人材を育成するため、文化会館のスタッフ研修も予定をしてございます。また、文化芸術の創造性を生かしました地域づくりを目指しまして、芸術監督団と地域づくり関係者や高校生等との座談会等も予定しておりまして、これらの具体的な内容につきましては、今後、文化振興事業団や公演を開催する各施設と調整してまいりたいと考えております。

 なお、公演の集客率についてのお尋ねでございますが、70%につきましては、過去の同種の公演の集客率を参考に目標値として設定をさせていただいたものでございます。

 以上でございます。

 

 

◆寺沢功希

 

 県民文化部長に確認ですが、この巡回公演は既に決定しているものではなく、仮に今回補正予算案が否決された場合、演劇公演は行われないと理解しておりますが、それでよろしいでしょうか。お答えください。

  

◎県民文化部長(青木弘)

 

 仮にというお尋ねでございますので、お答えはちょっと差し控えさせていただきたいというふうに思いますけれども、私どもとすれば、必要な事業を盛らせていただいたというふうに考えているところでございます。

 

◆寺沢功希

 

 仮にということでお答えできないということでありましたが、この議案について審議し、賛成する、反対するは私たち議員でありますので、再度私の質問に答えていただければと思います。

 続いて、加えて部長にお聞きします。

 公演の経費総額に対して、補助金をどのような基準で幾ら支給する予定でしょうか。あわせてお願いいたします。

 

◎県民文化部長(青木弘)

 

 お答えを申し上げたいと思います。

 先ほどは、仮にというふうに申し上げましたけれども、ちょっと想定をしておらなかった御質問でございますので言葉足らずであったかというふうに思います。県予算が認められなければ、それは県としては執行はできないというのが当然であろうというふうに思います。

 ただ、その後、事業団としてその事業を行うかどうかというのは、これはあくまでも事業団の事業でございますので、それはまた別の判断ということになろうかと思います。とりあえず、そういうお答えをさせていただきたいというふうに思います。

 それから、公演の経費総額ということで、補助金はどのような基準で幾ら支給していくのかというお話でございます。

 経費総額ということでは、これは長野市、それから伊那市、飯山市で開催されますそれぞれの必要な費用として盛らせていただいたものでございまして、先ほどもお答えを申し上げたかと思いますが、2,400万円を計上させていただいておりますけれども、これは文化振興事業団に負担金として支出するという形でお願いをさせていただいているものでございます。芸術監督団が実施いたします戦略的な事業の企画実施ということで予算化をさせていただいた内容でございます。

 以上でございます。

  

◆寺沢功希

 

 再度部長にお聞きします。

 芸術監督団が企画したものに対し補助をするわけですが、今回は監督団のメンバーである串田和美氏が演出を手がける演劇に補助をするということでありますが、企画した監督団に利害関係者が存在することに問題はないのでしょうか。お答えください。

 

◎県民文化部長(青木弘)

 

 今回の事業につきましては、芸術監督団がみずから実施いたします戦略的事業の企画実施に対する支援といいますか、負担金を支出するものでございます。

 その上で、串田和美氏が手がける演劇、それはちょっと答え方が難しいんでございますけれども、そもそも芸術監督団が実施する事業についてこれを支援していくというスキームでございますので、利害関係ということには当たらないかなというふうに考えております。

 ちなみに、今回の事業は、会場は伊那市、飯田市、それから飯山市、長野市というところで、特に飯山市は新しい会館ということもございます。それから、長野市も芸術館という新しい会館でございまして、そういったところのスタッフの人材育成というような観点も含めて、また、伊那文化会館でも実施させていただきますけれども、そこもそういった観点を含めまして事業を行わせていただく予定でございます。

 以上でございます。

 

◆寺沢功希

 

 舞台、演劇の最新ニュースを毎日配信しているステージナタリーというウエブサイトの10月31日に更新された記事に、公演の決定が掲載されております。補正予算で計上されている以上、予算成立後に公演決定ないしは公演の予定が発表されるべきだと思いますが、今回のように予算成立前に公演が発表されることには問題があると思いますがいかがでしょうか。これでは議会軽視と言わざるを得ません。さらには、せっかくのすばらしい事業、またこの作品に対しても泥を塗る行為であると思いますが、知事の見解を伺います。

 

◎知事(阿部守一)

 

 県予算の計上と事業団側の公演実施告知との関係についての御質問でございます。

 今、御質問いただきました内容については、先ほど議場に入った後に御指摘いただいているということで通告が入ってまいりましたので、恐縮ですが、私の段階で今のやりとりの状況を十分確認できておりません。そういう意味で、まずは早急に事実確認を行った上で必要な対応を行っていきたいというふうに思っております。

 以上です。

 

◆寺沢功希

 大北森林組合問題を初めさまざまな問題がある中、疑念を持たれるようなことがないよう、しっかりと事業を進めることをお願いして、私からの一切の質問を終わります。ありがとうございました。