平成28年6月定例県議会 発言内容(寺沢功希議員)
◆寺沢功希
皆さんおはようございます。それでは早速質問を始めさせていただきます。
昨年度、国による地域消費喚起・生活支援型交付金を活用し、多子世帯応援クーポン券・プレミアムパスポート事業が実施されました。このうち、クーポン券事業は、平成27年5月31日現在、年度末年齢18歳未満のお子さんが3人以上いらっしゃる世帯に、3人以上のお子さん一人に対し平成28年1月末まで利用できる1万円分のクーポン券が配られたもので、2万9,588世帯、3万3,905人が対象であったとお聞きをしております。
そこで、県民文化部長に伺います。
昨年の12月定例会でのこの事業に関する髙島議員の質問に対し、当初の締め切り時点で、対象世帯のうち約1,500世帯から申請されておらず、期間を延長して受け付けているという答弁がありましたが、最終的な申請世帯数及び人数、また利用率はどのような結果となったのでしょうか。また、この事業に対する対象世帯や協賛店舗等からの反響や効果をどのように捉えておりますでしょうか。
加えて、このクーポン券は、まず対象家庭に申請書が郵送され、申請書を返送することによりクーポン券が郵送にて配布されました。つまり、クーポン券が手元に届くまでに、1世帯につき3回分の郵便料金がかかっていることになります。そもそも、この事業に先立ち、実施市町村に対象世帯の確認を依頼し報告を受けており、先ほど申しましたとおり対象世帯数が2万9,588世帯であると把握していたわけですから、直接クーポン券を配布すれば郵便料金は3分の1で済み、仮に郵便料金を82円とすれば約485万円が、さらに期間延長の再通知分が無駄になっているのではないでしょうか。この事業に実際にかかった郵送料金額と内訳、また、なぜこのような配布方式にされたのかをお聞かせください。
さらに、この事業は多子世帯、子育て世帯の生活支援を目的としておりましたが、ウルトラCがない以上、このような事業を幾つか複合的に、かつ継続的に行うことが結果的に少子化対策となっていくと考えますが、国からの交付金、また幾つかの改善点等を踏まえ、今年度以降の同様の事業に対するお考えをお聞かせください。
◎県民文化部長(青木弘)
多子世帯応援クーポン券・プレミアムパスポート事業についてのお尋ねに順次お答えを申し上げます。
まず、多子世帯応援クーポン券事業の最終的な利用状況でございますが、2万9,596世帯の子供さん3万3,915人を対象といたしまして、3億3,915万円分のクーポン券を配布をさせていただきました。実際に御利用いただいた金額で申し上げますと3億1,363万7,000円となってございまして、利用率は約92.5%となっております。本事業につきましては、多くの対象世帯の方から、子供が多く生活が苦しい中で助かったなどの御意見をいただいたところでございます。 また、子育て家庭優待パスポート協賛店舗数は現在4,000店舗を超えてございますけれども、これは、事業開始前に比べ500店舗以上増加いたしております。多子世帯向けサービスの協賛店舗も1,000店近くとなってございます。こうしたことから、社会全体で多子世帯を応援する観点で一定の効果があったものと受けとめているところでございます。
続きまして、クーポン券の配布方式についてのお尋ねでございます。
県は直接各家庭にクーポン券を送付できたのではないかとのお尋ねでございますけれども、県は、世帯主の名前や住所、子供の数など個別の世帯情報は保有をしてございません。そういったことから、住民基本台帳のデータを直接使用できます市町村に対象世帯の抽出と申請書の送付を委託したところでございます。
また、市町村におきましても、お子様が県外に住民票を移しているケースなど、住民基本台帳上の情報だけでは対象世帯や子供の数等を正確に把握することが難しいことがございまして、各世帯みずから申請書を提出いただくことにしたところでございます。
クーポン券の発送に至るまでこうした作業が必要となりました関係上、3回にわたる手順が必要となった次第でございます。
さらに、申請の締め切りの9月末時点では未申請世帯が約2,300世帯あったことから、できる限り多くの世帯に御活用いただくため、申請期間を延長し、再度御案内をさせていただいたところでございます。
市町村に委託しました各家庭への申請書の発送費用でございますけれども、未申請家庭への申請期間延長の御案内分40万5,000円を含め、計336万2,500円となっております。また、世帯からの申請書の郵送費は237万8,000円、クーポン券の各世帯への郵送費は580万円となっております。
次に、今年度以降の同様の事業に対する考えについてのお尋ねでございます。
県では、多子世帯への支援といたしまして、市町村と共同して第3子以降の保育料の軽減などに取り組んでいるところでございます。今回の事業につきましては、国の交付金を活用して行われまして事業費は3億円を超えるため、今後県単独で同様の事業を実施することは難しいものと考えております。
県といたしましては、地域の実情に応じました少子化対策、子育て支援を行うため、継続的、安定的な財源の確保を引き続き国に要望していきますとともに、今後も国、市町村と連携しながら、少子化対策、子育て支援の取り組みの充実に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
以上でございます。
◆寺沢功希
長野県では、平成22年4月より、子育て世帯が買い物の際に割引などの各種サービスを受けることができるながの子育て家庭優待パスポート事業が実施されており、協賛店舗数は、6月17日現在、4,086店舗となっております。また、本年4月より、このパスポート事業の全国共通展開を内閣府が実施し、本県を含め41道府県が参加し、平成29年4月までに全都道府県が参加予定とお聞きをしております。
そこで、県民文化部長に伺います。
県のホームページにありますこの事業のページにも、全国共通展開参加都道府県のパスポート事業リンク集が3月22日より公開ということで張られております。事業自体は順調に実施されているのでしょうか。また、県はこの事業に賛同いただける県内企業の拡大と事業の普及を図っていくということでありますが、パスポートの提示により受けることができるサービスは、協賛店、企業の御厚意によるものであり、その内容、特典はさまざまで差もある中、どの程度まで踏み込んで取り組んでいくお考えか。お聞かせをください。
続いて、本年4月、アメリカの雑誌「タイム」が2016年版世界で最も影響力のある100人を発表し、日本からはただ一人、松本市出身のアーティスト、草間彌生さんが選出されました。草間さんは、水玉のモチーフを使った前衛的なアート作品で知られ、ファッション業界にも多大な影響を与えてきており、ファッションデザイナーのマーク・ジェイコブスは、長い間アートの世界で実に急進的で革命的なことをなし遂げてきたと同雑誌に紹介文を寄せています。
このニュースは、大変すばらしいことであり、県民としてはうれしい限りでありますが、一方で、もっと大きく報道され注目されるべきではなかったのかと大変残念に思います。草間さんも大変苦労したようですが、いまだに海外と日本とでは芸術に対する評価に差があるようであります。
そこで、知事に伺います。
県では、本年度、県観光戦略推進本部が新設され、観光施策に部局横断で対応し、観光資源の掘り起こし等に取り組んでいくとお聞きをしております。県出身の芸術家の活躍、さらに、このすばらしい長野県の自然の中で芸術に触れるという点からも、芸術文化施設をもっと観光資源として活用すべきではないでしょうか。信濃美術館の建てかえに向け検討がされている中、その先を見据え、観光と芸術の融合の地盤づくりは必要不可欠であると考えますが、御所見をお聞かせください。
続いて、県民文化部長に伺います。
例えば中信地方では、大町市、安曇野市、池田町、松川町及び白馬村に点在する芸術文化施設が広域的に安曇野アートライン推進協議会を組織し、観光宣伝と誘客を行い、地域全体の芸術文化の長期的な連携と発展を目的に活動しておられ、事業の一つでありますサマースクール及び夜のミュージアムは、本年度、元気づくり支援金事業に採択されました。
このように、県内の芸術文化施設は、それぞれが知恵を絞りながら観光誘客に取り組んでおられますが、元気づくり支援金のような総合的な補助金とは別に、芸術文化施設と観光といった結びつきの中でこれに特化した補助金制度はありますでしょうか。また、観光部と連携をし、芸術文化施設を観光資源とした観光施策に取り組んでいくお考えがありますでしょうか。お聞かせください。
◎県民文化部長(青木弘)
まず、子育て家庭優待パスポート事業の全国展開の関係でのお尋ねでございます。
御指摘のとおり、子育て家庭優待パスポート事業につきましては、来年4月には47都道府県での利用が可能となる予定でございます。全国共通展開を推進しております内閣府に確認いたしましたところ、事業は開始されたばかりでございまして、全国での利用状況等の詳細は把握されていないとのことでございますけれども、今のところ順調に利用されているとの見解でございました。
本県では、パスポート協賛店舗約4,000店舗のうち、1,500店舗につきまして全国共通展開の協賛をいただいております。協賛店舗から提供されるサービスにつきましては、御指摘のありましたように、各店舗の御厚意によるものであり、サービス内容は各店舗の御判断で設定をしているところでございます。
今後も、パスポートの協賛店舗の拡大を図りながら、店舗の皆様に本制度の趣旨を御理解をいただきまして、御協力いただける範囲で全国共通展開への参加などもお願いをしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
続きまして、芸術文化施設と観光についてのお尋ねでございます。
美術館等の文化芸術施設につきましては、本県の重要な観光資源の一つでございまして、その魅力を積極的に発信し、さらなる誘客につなげていく必要があるというふうに考えてございます。
お尋ねの文化芸術施設を対象とする観光面に特化した補助制度というものはございませんが、文化振興基金を活用いたしまして、文化財の活用による地域活力創出など、観光誘客の効果も期待できる取り組みも支援しているところでございます。
また、銀座NAGANOにおきまして、安曇野アートラインや善光寺平アートライン等の美術館の作品を展示するなど、観光分野とも連携しながら、県内の文化芸術施設の情報発信や誘客活動への支援を行っているところでございます。
今後も、観光部、教育委員会など関係部局ともしっかり連携しながら県内文化施設の魅力や知名度を高めるとともに、情報発信の一層の強化を図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。
以上でございます。
◎知事(阿部守一)
私には、芸術文化と観光についての関係性の御質問をいただきました。
長野県としては、これまでも長野県のさまざまな文化施設、文化芸術、こうしたものを観光に生かそうということで取り組みをしてきております。
例えば、安曇野や善光寺平等におきましては、美術館等が連携してアートラインの取り組みが進められているところでありますし、県といたしましても、銀座NAGANOにおいて作品展示を行ったり、あるいは「季刊信州」や県の公式観光サイト等でも県内の文化芸術施設等を紹介する特集を組み、文化と結びつけた観光誘客を行ってきております。
また、本年度は、県内の美術館、博物館数は全国1位でございますので、こうした特色を生かして、信州ミュージアム・ネットワーク事業、例えば夏休み期間中の子供料金の無料化等を皆さんに協力していただいて一斉に展開するといったような事業にも取り組んでまいります。
また、来年夏のデスティネーションキャンペーンにおきましても、文化財、あるいは文化芸術施設を生かした取り組みを関係者の皆様方にも御協力いただきながら進めていきたいと考えております。
ただ、御質問にもありましたが、まだまだ取り組みの姿勢は弱いなというのが私の率直な感想でもございます。先ほど草間彌生氏の御紹介もありましたが、先日ルイ・ヴィトン展というのをやっていましたのでそこへ行ってまいりましたら、草間彌生さんデザインのルイ・ヴィトンのバッグを大変大勢の皆さんが取り囲んで、すごい人気を博しておりました。長野県ゆかりの芸術家がこのような形で活躍されているということを、我々もしっかり受けとめなければいけないと思います。
そういう意味で、観光振興、これから県の観光戦略推進本部をつくって県全体で進めていくわけでありますけれども、これまでの自然環境系の、もともとある風土、自然、こうしたものを生かしていくと同時に、長野県の強みとしてのこの文化、あるいは歴史、こうしたものを他県と差別化するツールとして使っていきたいというふうに思っています。
もとより、ベースとしての長野県の強みを磨いていくということとあわせて、今、草間彌生さんの例を御指摘いただきましたけれども、その時々の世の中の流行というか、世の中の方向性というものも敏感にアンテナを高くして察知をしながら、それに合わせた観光振興策ということもしっかり取り組んでいきたいというふうに思っております。
以上でございます。
◆寺沢功希
引き続きの取り組みをよろしくお願いいたします。
最後に、子どもを性被害から守るための条例について質問いたします。
県議会を初め県政タウンミーティング等で議論が交わされ、骨子案、骨子が示され、いよいよ今定例議会に条例案が提出されました。
もし仮に我が子が被害に遭い、加害者を現行法により罰することができなかった場合、何と声をかけるだろうか。おまえにも責任があるから諦めろとさらに追い詰めるのか、あるいは、我々大人の県民運動が足りず申しわけないと言い、同時に自分自身の怒りや憎しみを抑え込むことができるのかと考えたとき、私は子を持つ親の立場としても条例制定に賛成であります。
とはいえ、私もこの条例で子供たちを守れる、性被害がなくなるとは思っておりません。先ほどの少子化対策同様ウルトラCがない以上、幾つかの取り組みを複合的に行うことにより被害を減少させていかなければならず、この条例制定はその中の一つの取り組みであり、「この条例が必要」ではなく、「この条例も必要」であるのではないでしょうか。賛成の立場であるからこそ、県にはしっかりとした意識を持ち、取り組んでいただきたいと思っております。
そこで、県民文化部長に伺います。
県では、県政運営の参考とするためとして県政モニターアンケートを実施しておられますが、子供の性被害防止については、平成25年度の第2回に調査した以降取り上げられておりません。運営要綱によれば、県政モニターへのアンケート事項等は、関係部局長の申し出に基づき広報県民課長が決定するものとなっております。これだけの重要案件にもかかわらず、申し出なかったのでしょうか。また、それはどういった理由からでしょうか。
加えて、去る6月16日、法務大臣の諮問機関である法制審議会の性犯罪部会が、性犯罪の厳罰化に向けて刑法を改正する答申案をまとめたそうであります。答申案には、強姦罪や強制わいせつ罪について、被害者の告訴がなくても罪に問える非親告罪化が盛り込まれたほか、18歳未満の子供に対し、親などの生活を支える監護者が影響力に乗じてわいせつ行為や性交をすることを罰する罪も新設され、被害者が抵抗したかどうかに関係なく処罰でき、親による性的虐待などが対象になるようであります。今後、この影響力に乗じた罪の新設とのバランスはどうお考えでしょうか。お聞かせください。
次に、警察本部長にお聞きします。
条例の制定に対しては、冤罪を指摘する声が多くあります。平成25年、26年の2年間に、相談を受けたが現行法では処罰できなかった案件が17件であったと聞いておりますが、一方で、この2年間の福祉犯、子供の性犯罪に関係する犯罪による検挙人数が174人いるわけでありますが、現在までにこの中から冤罪を疑う声が上がっているのでしょうか。ないのであれば、今までどおり捜査をした上で、17件のような案件に対し条例適用を視野に捜査をすれば冤罪の可能性は非常に低いと考えますが、いかがでしょうか。
とはいえ、本部長、悔しくありませんか。これだけ冤罪が懸念されているということは、県警の捜査能力が疑われているということではないでしょうか。そんなに能力が低いのですか。そんなことはないはずです。これでは県民が不安になってしまいます。本部長以下約3,900人の名誉のためにも、胸を張って、そんなことはないんだと、信頼してほしい、任せてくれと、どうか思いを、意気込みを聞かせていただけないでしょうか。
最後に、知事にお聞きします。
骨子案、骨子、条例案と、非常に慎重に進められてこられたと思います。また、議会におきましても、多くの議論が交わされてまいりました。それぞれが独自にアンケートをとるなど、調査、行動をし、議論の中では、賛成の立場、反対の立場を問わず、非常に熱いものを感じました。
しかし、冷静さゆえか、知事からこの条例への熱い思いが感じづらかったのは私だけでしょうか。知事のこの条例制定への思いは、ただ47分の1でいたくないというような単純なものではないはずです。長野県の子供たちのためにという思いで、真剣に情熱を持って取り組んでこられたと思います。ぜひともその熱い思いをお聞かせください。
◎県民文化部長(青木弘)
まず、子供を性被害から守るための取り組みに関します県政モニターアンケートについてのお尋ねでございます。
県では、平成25年6月に県政モニターアンケートを実施いたしました。県民の子供の性被害の現状認識、必要と考える取り組みなど、さまざまな課題を把握することができまして、議論の初期段階でのアンケートの実施は大変意義があったものというふうに考えているところでございます。
このアンケート結果を受けまして、県民の皆様に子供の性被害の現状や課題、これまでの取り組みの経緯などについて説明をさせていただいた上で意見交換することが必要であり、その上で議論を深めていくことが必要と考えたところでございます。
この意見交換につきましては、御案内のとおり、平成25年11月からこれまで、県政タウンミーティングを6回、地域での意見交換を4回、子供の相談支援関係者、若者、保護者との意見交換を7回開催し、延べ約900人の県民の皆様と直接意見交換を行ったほか、子供の育成支援関係団体53団体とも意見交換を行ってきたところでございます。
その際には、子どもを性被害等から守る専門委員会の報告書や条例のモデル、条例の骨子案など、段階に応じて適切な資料を県民の皆様にお示しをし、説明をさせていただく中で、意見交換等を実施してまいりました。
また、条例骨子案につきましては、幅広く県民の皆様の意見を伺うことが必要でございますので、限られた県政モニターを対象とするアンケートではなく、県民全体を対象といたしましたパブリックコメントを実施したところでございます。
このように、それぞれの段階にふさわしい手法を選択することで、県民の皆様の思いを酌み取る努力をしてきたところでございます。
それから、続きまして、刑法における監護者の影響力に乗じた罪の新設の関係でございます。
これまで、県といたしましても、国の法制審議会の状況を注視しながら条例の検討を進めてきたところでございます。法制審議会刑事法部会では、18歳未満の者を監護する立場にある親等がその影響力に乗じて性交等を行うことに係る罪の新設などの審議が行われ、監護者としての影響力に乗じわいせつな行為をした者については6月以上10年以下の懲役刑に、性交等をした者については5年以上の懲役刑に処することが検討されているものと承知をしてございます。
これに対しまして、条例案での処罰対象は、行為者を親などの監護者に限定せず、広く大人が子供に対して行う威迫、欺き、困惑等の不当な手段による性行為等を対象とするものであります。したがいまして、刑法改正が行われましても、条例案との整合といった問題は生じないものと考えているところでございます。
以上でございます。
◎警察本部長(尾﨑徹)
議員御指摘のとおり、平成25年からの2年間で、仮に他都道府県と同様の条例があった場合、捜査対象となり得る事案が17件ございました。また、児童買春や児童福祉法などの福祉犯のうち、子供の性被害関連犯罪の検挙人員は174人で、これらの事案ではいずれも処分が確定しており、警察捜査が問題にされた事案は承知しておりません。
一方、子どもを性被害から守るための条例の検討の過程において、一部の県民の皆様に冤罪を懸念する声があることは承知しております。警察捜査は、具体的な事案に即して、法令に規定する構成要件に該当する事実があるか否かについて証拠に基づいて判断するとともに、捜査に当たりましては、個人の基本的人権を尊重しつつ、公正誠実に行うことが基本であります。
県警察では、この基本を踏まえ、被疑者取調べ監督制度による取り調べの不適正行為の防止、客観証拠を確保するための携帯電話や防犯カメラ画像の解析など各種施策を推進し、緻密かつ適正な捜査のさらなる徹底を図っているところであります。
条例が制定された場合には、県警察といたしまして、条例の趣旨を十分に尊重し、その適切な運用を徹底してまいります。
◎知事(阿部守一)
子どもを性被害から守るための条例案についての思いを述べよということでございます。
まず、これは提案説明で申し上げましたけれども、子供の性被害、子供に対する性的な行為というのは、魂の殺人というふうに称されるように、子供の尊厳を踏みにじる許されない行為だというふうに思っております。
そういう中で、私ども長野県には、長い間条例によらずに県民運動を中心に取り組んできた歴史があるわけであります。私も、そうした歴史はしっかりと尊重しなければいけないという思いがありますが、他方で、子供たちを取り巻く環境がこれまでと大きく変化する中で、今までと同じような対応で立ちどまっているということが本当にいいのかという問題意識を持ってこの問題に臨んでまいりました。
そういう中で、私自身は、いわゆる他県の青少年保護育成条例と同じような条例をつくるということではなくて、子供の性被害に特化したものを今回成案として取りまとめて県議会にお諮りしているわけであります。そういう意味では、47分の1というお話がありましたけれども、私は47番目の県ということではなくて、性被害に特化した条例を最初につくった県だというふうにしていきたいという思いでございます。
他県のいわゆる青少年保護育成条例は、議員も御承知のとおり、例えば有害文書図画の規制であったり、あるいは場所の提供の禁止であったり、入れ墨の規制であったり、ありとあらゆる規制、罰則が条文に記載されております。しかしながら、こうしたものは、これまで県民運動を中心に取り組んできた長野県としては、規制あるいは罰則ということではなくて、引き続き県民の皆さん、県民会議の皆さん、県民運動を担っていただいている皆さんと一緒になって取り組んでいくということで、あえてこうしたものは今回の条例案に盛り込んでおりません。
しかしながら、この性行為等に関する禁止規定、それに加えて、これは他県の条例にはない予防のための教育であったり、あるいは不幸にして被害者になってしまった方々への救済であったり、こうしたことまで広く展開して条文の記載をさせていただいているわけでありまして、そういう意味では、どうも報道等ではそういうところがなかなか伝わっていない感じはしますけれども、私の認識は、47番目に青少年保護育成条例をつくる県ではなくて、最初に子供の性被害に特化した条例をつくる県にしていきたいというふうに思っておりますし、この条例をもとに総合的な対策、子供を性被害から守るための対策を進めていきたいというふうに考えております。
この条例については、法的な問題、それから県民の理解と、この二つが重要な問題だと思って考えてきておりますが、法的な論点についても、専門家の皆様方の御意見をいただく中でしっかりと整理をさせていただきました。また、県民の皆様方の御理解も、対話あるいはパブリックコメント、こうしたことを通じて御理解をいただくという形になってきています。
県議会の皆様方にも、ぜひこうした思いを共有していただいて御理解をいただければというふうに思っております。
以上でございます。
◆寺沢功希
仮に本議会で条例案が可決されたとしても、それはゴールではなく、あくまでも通過点にすぎません。余りにも早い時代の流れへの子供たちの適応能力に対し、我々大人たちの対応が一歩も二歩もおくれをとっているのが現実であります。
この差を埋めるべく、県には引き続き、また早急にさらなる取り組みをお願いするとともに、我々大人たちがその議論や活動に参加することにより子供たちの未来が明るく安全なものとなることを願い、私からの全ての質問を終わります。