平成28年9月定例県議会 発言内容(山岸喜昭議員)


◆山岸喜昭

   

 順次質問に入ります。

 外国人観光客の戦略的誘致と受け入れ環境とおもてなしの整備についてお聞きします。

 先般、G7交通相会合が軽井沢で開催されました。歓迎会では、長野県産の食材や地酒で各大臣をおもてなしするとともに、木遣りや真田陣太鼓といった本県の伝統文化にも触れていただきました。また、山々に囲まれた豊かな自然環境など、本県の魅力と信州流おもてなしを海外にしっかりとアピールできたものと思います。そして、このアピールがイベントの一過性のもので終わるのではなく、本県の観光振興、インバウンドなどの増加につなげていくことが肝要であります。

 円安効果やビザの発給要件の緩和を追い風に、訪日する外国人観光客が急増し、2015年には2,000万人超えと過去最高を記録しました。政府では、観光先進国の実現に向けて、2020年の訪日外国人旅行者数4,000万人、訪日外国人旅行消費額8兆円などの新たな目標を設定し、観光振興への取り組みの方針を明日の日本を支える観光ビジョンとして策定しております。

 また、2019年のラグビーワールドカップ、2020年の東京オリンピック・パラリンピックなど国際イベントが相次ぎ、日本は世界からより一層注目されることになります。長野県としても、こうしたチャンスを最大限に生かすべく、観光をめぐる世界的なニーズを把握し、中長期的な視点を持って観光資源の磨き上げや開発、また、ハード・ソフト両面のインフラ整備を加速する必要があると感じています。

 そこで、まず県は、観光大県づくりをキーワードに観光戦略を抜本的に見直すと言っておりますが、外国人旅行者の誘客については、市場が拡大している中国やアジア各国から観光客をどう取り込むかが大きな課題と考えております。戦略的な観光プロモーションとはどのように仕掛けていくのか。また、長野県は範囲が広く、それぞれの土地や地域の特性があります。県内を訪れる外国人旅行者に各地域の特性に合った複層的なPR施策をどのように展開をしていくのか。さらに、外国人観光客の誘客には、交通網や宿泊地など近隣の都道府県や観光事業者等の広域的な連携による誘客活動が必要と考えますが、いかがでしょうか。

 次に、外国人観光客が快適に過ごすためのおもてなしや受け入れ環境の整備についてお伺いいたします。

 観光とは「光を観る」と言われております。光とは、景観のすばらしさや食べ物のおいしさもあるでしょうが、それ以上に忘れがたい思い出となるのは、その土地の人たちとの触れ合いではないでしょうか。特に外国人は、言葉以外にも、文化、風習、民俗が異なる分、より一層の気配り、心配りが大切であるというのは言うまでもありません。一度訪れた人がリピーターになるか否かは、観光立国、観光立県の成否を握る鍵だとすれば、それはまさにおもてなしという接遇応対にあると言えるでしょう。

 そこで、主要観光地や宿泊施設での接客担当者への活用を目的として、外国語での一般的な会話表現や接遇上の基礎知識をわかりやすく記載した外国人観光客おもてなしマニュアルなどを求めるが、いかがでしょうか。

 今回のG7におきましても、地元の通訳ボランティアが情報案内人として大活躍し、長野のおもてなしを世界に発信することができました。そこで、今後の観光ボランティアの育成についてはどのようにお考えか。

 また、旅行者が観光情報を収集する主な手段は、口コミサイトやSNSを利用した観光情報の入手のほか、宿泊の予約ではオンラインサイトを活用する方法が普及しております。一方で、外国人旅行者に対するアンケート調査の結果を見ると、訪日旅行中に困ったことの上位は、無線LAN環境がないこと、施設等でスタッフとのコミュニケーションがとれないこと、観光案内、多言語表示がないことなどとなっています。

 そこで、外国人旅行者の滞在中の満足度を上げるため、無線Wi-Fiなどの通信環境の整備を初め、多言語表示、観光案内標識の整備、広域的な観光案内拠点の整備や案内機能の充実が求められるが、どのようにお考えか。

 以上、観光部長にお聞きします。

  

◎観光部長(吉澤猛)

 

 外国人観光客の戦略的誘致と受け入れ環境の整備につきまして、六つ御質問いただいております。

 1問目が、戦略的な観光プロモーションの展開についてでございます。

 急増する中国や東南アジアなどからの外国人旅行者を本県に誘客するため、県としては、各市場の特性を踏まえたプロモーション展開を図ることとしております。

 具体的には、まず中国に対しては、富裕層向けの健康長寿や癒しをテーマとした新たな滞在型ツアーの旅行会社への提案や、冬季オリンピックを控え、ウインタースポーツ熱が高まっていることから、スキープロモーションの現地開催を行っていきます。

 また、タイやシンガポールなどの東南アジアに対しては、リピーター層や富裕層に対して、雪や紅葉などの本県の四季の美しさを訴求テーマとし、現地旅行会社の訪問やメディア招聘などのプロモーションを展開していきます。

 今後とも、個人旅行化の進展やリピーター層の増加など、インバウンド市場のトレンド変化を見据えながら、本県の強みである山、アウトドア、健康長寿といったテーマを中心に滞在型の商品造成を行っていくことにより、県内への誘客に積極的に取り組んでまいります。

 2問目が、各地域の特性に合った複層的なPR施策についてでございます。

 日本で4番目に広い県土を有する本県は、地形により多様な生活圏が生まれ、それぞれの地域で独自の文化、歴史、食、景観などが育まれており、魅力的な観光資源となっております。県としましても、点在している各地域の観光資源を、特定のテーマやストーリーのもとに、周遊ルートや滞在型の旅行商品のモデルコースなどとして再編し、それらを本県の観光外国語サイトである「Go!NAGANO」で紹介したり、国内外へPRすることにより、外国人旅行者の県内の周遊促進を図っております。また、海外プロモーションや商談会においては、観光事業者等が直接現地の旅行会社等へPRする取り組みを進めており、今後とも、こうした複層的な観光PR施策を行ってまいりたいと考えております。

 3問目が、他県との広域的な連携による誘客活動についてでございます。

 いわゆるゴールデンルートに集中している外国人旅行者を地方に取り込むためには、議員御指摘のとおり、近隣の都道府県などとの連携により、広域的な視野から誘客活動に取り組むことが重要であると考えております。本県が現在行っている取り組みとしては、北陸新幹線の沿線自治体やJR東日本、西日本の両者との連携で行っているグランドサークルプロジェクト、また、富山県や岐阜県との連携による立山黒部アルペンルートを活用した台湾などからの誘客促進事業、そして、石川県や富山県との連携による中国からの誘客活動などがございます。

 さらに、国が認定する広域観光周遊ルート形成促進事業についても積極的に参画しており、中部北陸9県をエリアとする昇龍道プロジェクトや関東とその周辺をエリアとする東京圏大回廊を活用した誘客事業にも取り組んでおります。

 今後とも、他県と連携、協力しながら、広域的な視野からの効率的な誘客活動に引き続き取り組むことで、本県への外国人旅行者の一層の取り込みを図ってまいります。

 4問目が、外国人観光客おもてなしマニュアルについてでございます。

 議員御指摘の外国人観光客おもてなしマニュアルにつきましては、特にインバウンドの受け入れ拡大やおもてなしの充実を希望している観光事業者や宿泊施設の皆様にとって有効な手段と考えております。現在、観光庁や公益社団法人日本観光振興協会などが作成した基本会話集や訪日外国人のおもてなしに関するマニュアルなどが多数発行されておりますので、県としては、今後、これらのマニュアル等を活用し、講習会やセミナー等を通じて知識やノウハウの定着拡大を図ってまいりたいと考えております。

 5問目が、観光ボランティアの育成についてでございます。

 国内外から本県への旅行者の誘客促進を図り県内の観光を満喫していただくためには、観光ボランティアの皆様が行うガイド活動の重要性が今後ますます高まるものと考えております。県としては、観光ボランティアの育成を図っていくために、ボランティアガイド活動をされている団体や個人の方や意欲のある方々を対象として、活動の状況や課題等の共有化を図るための情報交換会や研修会などを開催し、活動の活性化や人材育成に向けた取り組みを検討してまいります。

 最後に、外国人旅行者の受け入れ環境の整備についてでございます。

 外国人旅行者のさらなる増加が見込まれる中、外国人旅行者がストレスを感じることなく、安心かつ快適に県内に滞在、観光していただくためには、受け入れ環境の整備が重要でございます。

 まず、Wi-Fiの整備については、外国人旅行者からの要望が多い宿泊施設に対しては、昨年度、国の交付金を活用し、集中的に整備を行ったところでございます。今後は、外国人旅行者が多いエリアにおいてWi-Fiが利用できる環境の実現を目指して、国、市町村、民間事業者等と連携しながら、必要な整備のあり方を検討してまいります。

 次に、多言語表示や観光案内標識、広域的な観光案内拠点の整備については、市町村等の関係機関と連携しながら、外国人旅行者が多く訪れる主要観光地や新幹線駅などにおいて、外国人旅行者の移動経路や表示の統一性にも配慮しつつ、整備方策を検討してまいります。

 以上でございます。

 

◆山岸喜昭

 

 続きまして、観光防災・観光危機管理についてお伺いします。

 ツーリズムにおける安全、安心の担保は危急の課題であるという認識が広まっています。地域や観光事業者は、地震、噴火、台風などの自然災害の危機に備え、対応策をあらかじめ検討し、計画やマニュアルを作成するとともに、スタッフが迷うことなく行動できる訓練をしておくことが観光危機管理であります。

 災害対策基本法は、国民の生命、身体及び財産を災害から保護することを目的としています。また、観光客の対応を具体的に記載している各自治体での防災計画はまだまだ少数であります。今後も、さまざまな危機が国内外で発生することは避けられません。大きな震災や噴火、台風などの経験を経て、人々や企業の防災や危機管理に対する意識は大いに高まりましたが、その中で、観光分野での危機管理となる具体的な取り組みはなされていません。

 地元住民と観光客の最も大きな差は、観光客はその地域の土地勘がほとんどない上、災害や危機に見舞われたときどのように対処すればよいのかわからないこと、帰宅支援が必要なことが観光危機管理の重要な要素であります。仮に、こうした甚大な震災や台風が県内に発生した場合、高原や山岳、温泉など観光地が豊富な信州は、やはり大きな打撃を受け、地元の住民の暮らしと並行して観光客の安全確保は大変重要であります。

 危機は必ず起きるという大前提に立って考え、いざというときに現場が動ける仕組みができているのか。観光危機管理において、民間事業者と地域、行政の連携が非常に重要であります。災害発生時に誰がどこの宿泊施設に何名泊まっていたかなど、民間の観光関連事業者の持つ情報が観光客の安否確認のためには不可欠であり、公的施設に加え、ホテルや企業のビルなど民間施設との連携体制を整えておくことによって、災害発生時に地域全体として迅速な対応をとることが可能となってきます。

 そこで、どのように災害や危機の被害から外国人旅行者を含めた観光客や観光産業を守り、危機におけるリスクを軽減し、災害後の観光事業の復興を迅速に行えるよう準備が必要ではないか。

 以上、観光部長にお聞きします。

 また、いつ起きてもおかしくないと言われている大規模地震、大災害の発生時には、自衛隊への要請も必要であります。県内における各種災害が多発している状況を鑑み、自衛隊の知見を活用できる制度として、市町村防災会議、市町村国民保護協議会があります。自衛隊との顔の見える関係や市町村の防災委員委嘱状況など、災害が発生した場合において、災害復旧に関し、自衛隊と公的機関との相互間の連絡調整はどのようにされているのか。危機管理部長にお聞きします。

      

◎観光部長(吉澤猛)

 

 観光客の安全確保など観光危機管理についてのお尋ねでございます。

 観光客の安心、安全の確保は、観光振興や魅力ある観光地域づくりの観点からも非常に重要であり、県の地域防災計画においても、観光地の災害応急対策を定めているところです。観光客は災害弱者であるとの認識の上に立って、いざというときに、現場が迅速、的確に動ける仕組みづくりという観点からも、議員から御指摘がありました民間事業者と行政機関の役割や相互連携の方策などの点で、地域防災計画の見直しが必要であると考えております。

 あわせて、発災直後からの正確な情報提供や復旧段階での積極的なプロモーション活動などを行うことにより、風評被害の防止を図るとともに、金融支援や被災市町村の支援等により、災害後の観光事業の復興を迅速に行えるような形で観光危機管理対策の強化に努めてまいります。

 以上でございます。

 

◎危機管理監兼危機管理部長(野池明登)

 

 平時、有事の際の自衛隊と公的機関との連絡調整についてでございます。

 災害発生時には、自衛隊から県及び被災市町村にまず情報連絡員が派遣され、迅速かつ的確な連絡調整が行われ、さらにそれが災害対策本部として引き継がれた場合には、一体となって災害対応が行われているところでございます。

 また、平時にありましては、自衛隊から、県総合防災訓練を初め県や市町村の各種訓練等に参加してもらい、また、自衛隊主催の各種訓練には県及び市町村職員が参加をし、観光客の視点も含め相互に連携を深めているところでございます。さらに、県及び市町村では、防災会議等の委員に松本の第13普通科連隊の自衛官を任命し、その専門的な知識や経験を生かしております。

 なお、委員への任命のない市町村には、会議の場などで自衛隊長野地方協力本部からその有効性について説明をし、活用の働きかけを行っているところでございます。

 また、県そして松本市、伊那市、茅野市では、退職自衛官を職員として採用するなど、自衛隊と緊密な連絡調整を行っているところでございます。

 今後も、引き続き市町村とともに自衛隊との連携をさらに深めるよう努めてまいります。 

 

◆山岸喜昭

 

 観光危機管理は重要であります。観光大県を目指す本県にとって、観光産業は県経済に大きく貢献する極めて重要な産業であり、観光産業の持続的発展を図ることは観光行政にとっても最も重要な施策であります。観光産業に負の影響を与える観光危機に関し、観光客の安全、安心が守られる県内観光地の形成を図ることを要望し、質問を終わります。