平成29年11月定例県議会 発言内容(寺沢功希議員)


◆寺沢功希

   

 大規模木材加工施設と木質バイオマス発電施設を整備することにより木材の新たな需要創出と循環型社会の形成を目指す信州F・POWERプロジェクト、林業再生と再生エネルギー利用における先駆的なモデルとなるべく大きな期待が寄せられているプロジェクトであります。9月定例会一般質問におきまして我が会派の依田議員より質問いたしましたが、再度、その後の状況も含め質問をさせていただきます。

 本プロジェクトの事業計画は、平成25年3月25日に策定され、平成27年3月25日に最終改定されております。この改定の際の幾つかの事業計画の変更点、また計画内容について林務部長にお聞きします。
 木材加工事業に係る事業費は、当初44億2,400万円、うち県補助金21億800万円でありましたが、改定の際、61億円、うち県補助金23億8,000万円に増額されておりますが、その理由及び内訳はどのようなものでしょうか。
 同様に、木質バイオマス発電事業に係る事業費は、当初57億3,200万円、うち県補助金14億5,900万円でありましたが、改定の際、65億円、うち県補助金1億2,000万円となっております。事業費の増額及び補助金減額の理由及び内訳はどのようなものでしょうか。また、現時点でさらに金額に変更が生じておりますでしょうか。
 加えて、事業費に対して県補助金は事業計画に明記されておりますが、国等そのほかの補助金の交付を受けている、または交付を受ける予定がありますでしょうか。あればその額もお聞かせください。
 また、木質バイオマス発電施設概要において、当初発電出力は10メガワット、1万キロワットでありましたが、改定の際、燃料消費量ほか施設概要に変更がない中、発電出力が14.5メガワット、1万4,500キロワットにふえたのはどういった理由からでしょうか。
 事業計画では、プロジェクトの実施により、素材生産による雇用で約250人/年、運搬による雇用で約100人/年、製材工場の雇用で約40人/年、発電施設の雇用で約25人/年、合計約400人/年の新たな雇用が創出される見込みとされておりますが、現在未稼働の発電施設以外において、見込みどおりの雇用が創出されているのでしょうか。また、そもそも、この「人/年」の単位が、毎年この人数の雇用が創出されるとも捉えられかねないような非常にわかりにくいものでありますが、なぜこの単位を使用されたのでしょうか。
 加えて、事業計画では、民間監査法人の試算により、プロジェクトによる経済効果は20年間で500から700億円と見込まれているともされております。プロジェクトから熱供給事業が事業主体となる塩尻市が断念したため外れましたが、経済効果はどのように変更になるのでしょうか。
      

◎林務部長(山﨑明)

 

 信州F・POWERプロジェクトについての御質問に対しまして順次お答え申し上げます。
 初めに、プロジェクトの事業費についてのお尋ねでございます。
 まず、加工事業費につきましては、為替の変動及び資材の高騰、機械の規格等の見直しに加えまして、外構工事、チップ製造施設及び用地造成費の追加により、当初の44億2,400万円から61億円に増額となっております。
 また、補助金も、貯木場とチップ製造施設が補助対象となり、約2億7,000万円分増額となっております。また、木質バイオマス発電事業につきましては、為替変動と資材の高騰により、当初の57億3,200万円から65億円に増額となっております。
 あわせて、発電施設の補助金につきましては、当初、企業1社で運営する予定でしたが、意欲ある企業の出資により特定目的会社を設立して運営されることとなり、発電施設本体は出資金と金融機関からの融資により建設されることとされました。
 県では、当初、補助金約15億円を支援する計画でしたが、民間企業の自主性が最大限発揮されるよう、補助事業による支援は最小限にとどめ、発電事業の収益発生時から返済していくことのできる資金融通により約1億2,000万円を支援することとして減額したものでございます。
 なお、現時点で事業費の変更はなく、ただいま説明しましたほかに国等による他の補助金の交付は受けておらず、現在予定もされておりません。
 続いて、木質バイオマス発電施設の出力に関するお尋ねでございます。
 平成25年3月に公表した事業計画では、構想段階のものとして1万キロワットと計上しておりましたが、その後、事業者において発電施設の詳細設計が行われ、プラントの性能を精緻に分析、評価した結果、1万4,500キロワットの出力とされたものでございます。
 続いて、雇用創出についてのお尋ねでございます。
 現在、製材加工施設の雇用は46名と、おおむね当初の計画どおりとなっております。また、林業の雇用効果は多段階に及ぶ分野であり、素材生産や運搬による雇用人数は発電を含めた本格稼働時の試算となっております。製材加工施設は、本格稼働に向け調整を進めている中で、現状では当初の計画に達しておりませんが、今後の発電施設の稼働等により雇用創出効果が十分発揮できるものと考えております。
 なお、単位につきましては、本プロジェクトは、1年間の雇用効果を示すため、その木材の生産、加工などにかかわる雇用者数を算出しております。一般的な雇用効果1年間当たりの人数をお示ししているものでございます。
 続いて、プロジェクトの経済効果に関するお尋ねでございます。
 当初計画していた熱供給事業にかわって、新たに熱利用事業の検討がなされており、また、この分野での経済効果は全体の1%程度と見積もっていましたことから、これを含めたプロジェクト全体としての経済波及効果に大きな変更はないものと考えております。
      

◆寺沢功希

 

 本年9月28日付の市民タイムス掲載のインタビュー記事内で、小口塩尻市長は、プロジェクトについて、初物にリスクはつきもので、加工した床材の販売が順調にいかないのも想定内だと述べています。塩尻市と征矢野建材株式会社とともにプロジェクト宣言をし、同じ理念のもとプロジェクトに取り組んでいる県としても、同様に床材の販売が順調にいかないことを想定していたのでしょうか。であるならば、順調にいかないと想定した事業に23億8,000万円という補助金を支給したということでしょうか。
 さらに、同記事内で、小口塩尻市長は、床材にならない部分を燃料にする収益でそのリスクを相殺するのが木質バイオマス発電の目的で、両輪で行わなければならないとも述べております。これについても県は同様のお考えでしょうか。つまり、木質バイオマス発電事業は木材加工事業の赤字補填事業という理解でよろしいでしょうか。このような考えでは出資者の理解が得られないと思いますが、いかがでしょうか。
 以上、林務部長にお聞きします。
 また、これらのプロジェクトにおきまして、連携関係にある塩尻市のトップであります市長の発言に対して、同じく県のトップであります知事の見解をお聞かせください。
 今回監査委員より提出されました定期監査の結果に関する報告の中で、プロジェクトに対し、「本事業には多額の補助金等を交付しており、期待された成果を達成することが強く求められます。プロジェクト全体の調整役として、事業の進捗管理、支援態勢の強化等に努めてください。」と意見が記されております。確かにこのとおりだと思います。
 しかしながら、私は、この意見の中の調整役という部分に違和感を覚えました。プロジェクト事業計画は、県、塩尻市、征矢野建材株式会社の3者で策定され、知事、塩尻市長、征矢野建材社長の連名によりプロジェクト宣言をされていることや、プロジェクトへの期待や熱い思いが込められた過去の答弁などから、私は県は共同事業主体の立場であるという感覚でおりました。
 しかし、今回、過去の資料、プレスリリース等を確認すると、県はプロジェクト全体の総合調整役として事業主体及び関係各機関との連絡調整を図るなど、計画の実行に向けた取り組みを推進してまいりますと記されておりました。
 調整役と聞くと一歩引いた立場のような印象を受けるのは私だけではないと思いますが、改めて、このプロジェクトにおいて県はどのような立場でどう取り組んでいくのでしょうか。知事にお聞きします。
      

◎林務部長(山﨑明)

 

 続きまして、F・POWERプロジェクトの木材加工施設の補助についてのお尋ねでございます。
 当プロジェクトは、本県の豊富な森林資源の利活用による林業再生と木材産業の振興を図るとともに、環境負荷の少ない環境型社会の形成に寄与するため、県内初の集中型製材加工施設と木質バイオマス発電施設が併設する日本で初めての取り組みでございます。
 これまでほとんど利用が進んでいなかったアカマツや広葉樹を利用して付加価値の高い床材製品等を製造する集中型製材加工施設については、本県には県産材を消費できる拠点施設がない中で、専門家による経営診断や各種調査を重ね、事業計画の妥当性を判断し、補助金交付を決定したものでございます。
 続いて、製材事業部門と木質バイオマス発電事業部門の関係に関するお尋ねでございます。
 このプロジェクトは、アカマツ材等を多段階で利活用することにより収益性を向上させ、本県の林業、木材産業の活性化に寄与することを目的としており、製材、加工、発電事業が一体的に稼働することで、A材から未利用材まで全てを消費することができることとなるものでございます。
 このうち、木質バイオマス発電事業は、これまで活用しにくかった製材端材も発電燃料とすることで価値が生まれ、資源の有効活用と収益性の向上の両面で成果が期待できるものでございます。
 したがいまして、製材事業部門及び発電事業部門に関しては、事業連携しながらも自立的な経営を行い、相互に収益を確保していくものとして出資者の御理解を得ている状況と聞いております。
      

◎知事(阿部守一)

 

 私には、まず、小口塩尻市長の発言に対する見解という御質問でございます。
 小口市長の御発言内容の詳細を承知しているわけではありませんけれども、本プロジェクトは、林務部長からお答え申し上げましたとおり、本県の豊富な森林資源を無駄なく活用して、その利益を山側にも還元するために、集中型加工施設に木質バイオマス発電施設を併設した全国初の取り組みであります。こうしたプロジェクトを進めていく上では、引き続き塩尻市を初め関係の皆様方と十分連携を行いながらプロジェクト全体がしっかり進んでいくように取り組んでいきたいというふうに思っております。
 また、県の立場であります。
 9月定例会で依田議員の御質問にもお答え申し上げましたとおり、このプロジェクトは、本県を森林県から林業県へと飛躍し、展開させていくという意味で大変重要なプロジェクトだというふうに考えております。
 このプロジェクトは、スタート時から産学官それぞれが主体的に役割を分担し、責任を果たしながら連携して進めてきているものでございます。具体的には、集中型製材加工施設やバイオマス発電施設の整備、運営につきましては民間の事業者が実施をし、熱利用については地元塩尻市が取り組み、製材、発電に必要となる木材の安定供給を林業、木材産業団体が担っていくものという位置づけになっております。
 県としては、原木の安定供給体制の構築に取り組みますとともに、プロジェクト全体の調整役としての役割を果たしていきたいと考えております。
 以上です。
      

◆寺沢功希

 

 御答弁をいただきましたが、私の質問の仕方がまずかったのか、もう一度林務部長にお聞きをします。
 私は、小口市長の発言について、初物にリスクはつきもので、加工した床材の販売が順調にいかないことが想定内だったのか。同様に県も想定内であったのか。また、木質バイオマス発電については、木材加工事業の赤字補填事業であるという見解であるのか。もう一度林務部長にお聞きをします。
 地域未来投資促進法に基づき、長野県と県内3地域の市町村が連名で申請を行った基本計画が9月29日に国から同意を得たとプレスリリースされました。県内の3地域は、上伊那地域、南信州地域、塩尻市で、全国では39県にて70地域の基本計画が同意され、塩尻市における基本計画は信州F・POWERプロジェクトを中心としたものだと聞いております。
 そこで、産業労働部長にお聞きします。
 この地域未来投資促進法の概要はどのようなもので、今後はどのように進められていくものなのでしょうか。また、塩尻市における基本計画の中心となるプロジェクトが予定どおり順調に進んでいないことに対し国からは指摘を受けなかったのでしょうか。加えて、この現状が今後に影響するおそれはないのでしょうか。
      

◎林務部長(山﨑明)

 

 2点お尋ねいただきました。
 初めに、小口塩尻市長がおっしゃった、初物にリスクはつきもので、加工した床材の販売が順調にいかないのは想定内だという発言に対しての見解でございます。
 今回、製材工場で主に製品として出荷する予定のものはアカマツフローリングでございます。アカマツフローリングといいますのは、この工場が立ち上がった時点で他にそういう製品があるものではございません。したがいまして、このフローリングが市場の中で浸透し、その価値が認められていくには一定の時間がかかるというふうに私どもは考えております。
 また、製材工場におきましても、極めて複雑なラインを海外から輸入し、設置し、稼働させているものでございまして、当然初期のトラブルはつきものだろうということは想定した上での支援を行っているものでございます。
 また、木材加工事業の赤字補填事業という理解でよいかという考えでございますが、木材加工事業とバイオマス発電事業は、これはあくまでも両輪の事業でございます。したがいまして、単に赤字補填という話ではなくて、双方がそれぞれ相乗的な効果を発揮できるように両輪となることが望ましいというふうに考えているものでございます。
      

◎産業政策監兼産業労働部長(土屋智則)

 

 信州F・POWERプロジェクトと地域未来投資促進法の関連で2点御質問をいただきました。
 最初に、同法の概要についてでございます。
 本年7月に施行されました地域未来投資促進法は、従来の企業立地促進法を改正したものでございまして、これまでの製造業の立地を中心として地域の産業振興を図ろうという、いわば全国一律の視点を転換いたしまして、今後高い成長が期待される環境・エネルギー、観光・スポーツなどの幅広い産業分野を対象業種としたこと、地域の特性を生かして地域に高い経済波及効果を生み出す事業を促進するということ、これを主眼としているものでございます。
 同法に基づく手続といたしましては、まず、県及び市町村が共同で対象とする産業分野を定めた基本計画を策定し、次いで、事業者がこの基本計画に沿った事業の具体の事業計画を申請をし、県の承認を受けることとなるといったところでございます。そして、この承認を受けた事業につきましては、設備投資減税、土地利用調整に係る配慮、地方創生推進交付金の活用などの各種支援措置が講じられるといったものでございます。
 現在、先行した3地域に続いて、残る県内全地域の基本計画を国に申請しているところでございまして、今後、この枠組みの中で地域産業の振興が図られ、地域経済が活性化するよう市町村と連携して取り組んでまいりたいと考えております。
 2点目でございます。信州F・POWERプロジェクトの進捗状況による影響についてのお尋ねでございます。
 基本計画につきましては、先ほども申し上げましたとおり、地域特性を踏まえた産業分野の選定というものを主な内容としているものでございまして、具体的な事業内容を特定するものではございません。したがいまして、基本計画の同意に際しまして、国から信州F・POWERプロジェクトの進捗状況に対する指摘というものは特に受けておりません。
 また、今後の影響についてでございますが、事業計画申請前であり、具体の事業に基づき判断できる段階ではございませんけれども、現状というものが制度の運用に当たって必ずしも影響を与えるものではないというふうに考えております。
 いずれにいたしましても、必要な支援措置がしっかりと活用されるよう、林務部や塩尻市などと連携をとって進めてまいりたいというふうに考えてございます。
      

◆寺沢功希

 

 それぞれ御答弁いただきました。
 床材販売の不振についてはリスクは想定していた、また、木材加工及び発電事業は両輪で行うため、つまり片方だと事業は成り立たないというふうに答弁より理解をさせていただきました。
 続いて、本年2月議会において、着工がおくれている木質バイオマス発電事業について出資予定者と事業の収益性を精査中、発電プラントの工事契約、出資契約、融資契約の締結に向けた内容合意や内容確定の最終調整中との説明がありましたが、9月定例会の依田議員へも同様の状況にある旨の答弁があり、いまだに進展がありません。
 通常、事業においてこのような状況にあれば、わずかな期間で結論が出るものでありますが、本当に現在説明されている状況にあるのでしょうか。だとすれば、進展しないネックとなっているものは何なのでしょうか。また、各機関との交渉及び調整の場に県は同席されているのでしょうか。つまり、現在の状況の把握は征矢野建材からの聞き取りだけか、そうではないのか、どちらなのでしょうか。
 本年9月3日付の信濃毎日新聞の記事内において、征矢野建材の社長が、取材に対し、着工に関して近く発表できることがあると述べておりますが、その内容はどのようなものだったのでしょうか。
 また、本年6月以降アカマツの受け入れを提示している件に関して、9月2日付の信濃毎日新聞の記事内で、征矢野建材は、取材に対し、受け入れ再開時期などは10月のサプライチェーンセンターの会議で説明すると述べており、会派として9月初めに現地調査を行った際にも同様の説明を受けましたが、会議ではどのような説明がされたのでしょうか。
 木材加工品の販売が順調ではなく、現地調査の際にも事業に関しては赤字であると説明がありました。征矢野建材の決算状況はどうなのでしょうか。
 以上、林務部長にお聞きします。
      

◎林務部長(山﨑明)

 

 続きまして、木質バイオマス発電事業のおくれている理由等に関するお尋ねでございます。
 9月定例会で依田議員の御質問にお答えいたしましたとおり、発電施設の発注に向けた出資及び融資契約の調整がまさに行われているところでありまして、大詰めの段階となっているものでございます。
 これまで時間を要した原因といたしましては、多くの企業がかかわっていることから、確実な事業実施に向けて細部にわたる契約条項を積み重ねているためであると認識しております。県としては、各出資者からの聞き取りを行う中でそうした事実関係を把握しているところでございます。
 一方、県といたしましても、その役割を踏まえて、必要な関係者との打ち合わせに参加し、情報の共有を図りながら、早期に着手されるよう求めるとともに、原料となる未利用木材の安定供給に向けた調整を進めているところでございます。
 なお、事業主体からは、今後のスケジュール等が定まった段階で発表する考えがあるとお伺いをしているところでございます。
 次に、アカマツ材の受け入れ再開についてのお尋ねでございます。
 アカマツ材の受け入れにつきましては、事業主体において、丸太及び製品在庫のバランスを図るため、一定期間アカマツ材を納入停止としていたところでございます。その再開につきましては、10月5日に開催されたサプライチェーンセンター需給調整会議におきまして、秋から冬期間はアカマツ材の生産時期となることから、事業主体により10月21日からの床材製品の製造に合わせた受け入れ再開と来年4月20日までの受け入れ量を提示するなど、林業事業体が計画的な木材生産ができるような調整を図っていく旨の説明がなされております。
 続きまして、事業主体の決算状況についてのお尋ねでございます。
 9月定例会で依田議員の御指摘にもお答えしたとおり、現在、製材事業については、製品の販売開拓と原木の安定供給が課題であり、平成28年度7万立方メートルの丸太を製造する計画に対して、実績は5割ほどとなっている状況でございます。
 事業主体においては、営業強化に全力を尽くしており、さまざまな企業との連携も図られてまいりましたので、今後、販売量は着実に伸びていくものと考えております。
 なお、事業主体のプレカット部門や海外製品の輸出入部門は好調な状況と把握しております。
      

◆寺沢功希

 

 決算状況については、一民間企業のことですので、細かい部分までは答弁できないということは理解できますが、補助金の額が多額、また事業も途中という観点からも把握しておかなければならないと思いますが、決算状況について細かい数字まで把握されておりますでしょうか。再度林務部長に確認いたします。
      

◎林務部長(山﨑明)

 

 決算状況について再度お尋ねをいただきました。
 決算状況につきましては、補助事業上、その決算書等は報告をいただいており、把握しておりますが、個別企業にかかわる問題ですのでこの場では申し上げられないということでございます。
      

◆寺沢功希

 

 決算状況は、先ほど申しましたとおり、現地調査の際の説明に加え、私も民間リサーチ会社による資料で確認しましたが、厳しい状況であると認識しております。
 しかし、厳しい状況になったのは木材加工施設が稼働し始めた平成27年度からでありました。連携をし、プロジェクトに取り組むことにより、結果的に民間企業に赤字を負わせてしまっている現状、何かみこしに乗せられ担がれたが、担がれた者だけが傷を負ってしまったようなこの状況をどうお考えでしょうか。知事の見解をお聞かせください。
 先ほども申しましたとおり、木材加工品、無垢フローリングの販売が順調ではないのが現状であります。プロジェクトの事業計画の中では、一部上場企業の建材メーカーであり、もちろんフローリングの製造販売もしている大建工業が連携体制の中で販路開拓を担うことになっておりますが、事業主体の征矢野建材は、当初よりOEMは考えておらず、無垢フローリングのメーカーとして事業を進め、販売していく考えだったようであります。だとすれば、大建工業の担う販路開拓とは一体何を意味しているのでしょうか。
 現在、木質バイオマス発電施設の完成、稼働予定を平成32年とされております。しかし、この時点で完全稼働ということではないようです。現地調査の際の説明によりますと、3年間試験稼働をした後、つまり平成35年に完全稼働となるようであります。また、木材加工施設も同様で、現在の稼働状況は半分にも達しておらず、木質バイオマス施設が100%稼働しないと木材加工施設も100%稼働にはならないとも説明を受けました。
 つまり、このプロジェクトが100%の状態で進み出すのは、早くて平成35年からということになります。スケジュールについてはこのような認識でよろしいでしょうか。また、現在の半分以下の稼働状況での生産量でも販売に苦慮されておりますが、平成35年までに100%稼働時の生産量に応じた販売体制を整えられる見通しは立っているのでしょうか。
 さらに、全国的に見ますと、バイオマス発電事業から撤退した企業のほとんどが、すさまじい熱により配管を初めとする設備に負担がかかることにより生ずる破損等のふぐあいに対するメンテナンス費用が経営に対して大きな負担となったとも聞いております。そういった検討を踏まえての3年間の試験稼働期間であると思いますが、完全稼働前にメンテナンスが必要になる可能性も想定されておりますでしょうか。また、設備に対するメンテナンス費用を想定した事業計画、資金計画を立てられているのでしょうか。
 連携体制のもとで取り組みを進め、また、多額の補助金を投入している以上、県としてはあらゆる可能性を想定しておく必要があると思います。このまま木材加工品の販売が順調にいかず、また木質バイオマス発電事業も思うように進んでいかない場合、例えば、先ほど触れました、今までプロジェクトにかかわってきた大建工業を初めとする大きな資本力のある企業等が征矢野建材にかわり事業を引き継ぐことも十分に考えられます。そうなった場合、県としては、今までと同様に、その企業を新たな事業主体として連携していくのでしょうか。その場合、それまでに支出した補助金の取り扱いについてはどのようになるのでしょうか。
 以上、林務部長にお聞きします。
      

◎知事(阿部守一)

 

 通告なしで私に御質問いただいたわけでありますけれども、この事業全体については応援をいただいている立場で御質問いただいているというふうに理解をしておりますが、この事業自体が多くの関係者の皆さんとの信頼関係、協力関係に基づいて進められているということについてはぜひ十分御理解いただいた上で、みこしに乗せられるとか、乗せたとか、そういうものでは全くないということについては十分御理解いただきたいというふうに思います。
 先ほど申し上げましたように、このプロジェクトは、それぞれの主体が役割を分担しながら連携して進めているものであります。そういう中で、我々が林業県へと飛躍していく上で、このプロジェクトをこれからも関係者間の信頼関係、協力関係をしっかり築きながら前進させていくということが我々県の役割だというふうに思っています。どうか寺沢議員初め県議会議員各位におかれましても、そうした観点で、ぜひ御理解、御支援をいただければというふうに思っております。
 以上です。
      

◎林務部長(山﨑明)

 

 続きまして、大建工業株式会社の担う販路開拓についてのお尋ねでございます。
 事業主体によれば、当企業は業界最大手の建材メーカーでございまして、全国的に事業展開をしているところでございます。もともと複合フローリングのメーカーでございますが、最近では少しずつ無垢材にシフトしつつあるということも聞いているところでございます。
 この大建工業は、アカマツや広葉樹を主体とした無垢床材製品を取引先である全国の工務店等へ販路開拓するとともに、今後は製品開発の分野でも連携すると聞いているところでございます。
 続きまして、木質バイオマス発電事業の稼働までのスケジュール等に関するお尋ねでございます。
 発電施設は、現段階では、平成31年度中に試験稼働を行った上で、平成32年度には商業運転開始というスケジュールになっております。また、製材事業の販売体制につきましては、事業主体におきまして、発電施設の本格稼働を見据え、アカマツ材の新たな販路の開拓等により平成32年度を目途に安定した製品供給体制の構築に取り組んでいるところでございます。
 なお、事業計画及び資金計画につきましては、事業主体とプラントメーカー間でメンテナンスを含め十分な調整が図られているものと承知しているところでございます。
 続いて、事業の承継等についてのお尋ねでございます。
 現時点ではそうした状況は想定しておりませんが、補助制度上は事業の承継は可能とされているものでございます。
 以上でございます。
      

◆寺沢功希

 

 今回、信州F・POWERプロジェクトについて質問をさせていただきました。通告なしに知事に質問をいたしまして大変失礼をいたしました。ただ、勘違いしていただきたくないのは、この事業を否定したり、やめさせたいというような考えは一切ありません。豊富な森林資源を無駄なく活用しながら環境へも配慮したこの事業に取り組む企業はもちろんのこと、ただでさえ疲弊していた上に、大北森林組合問題により停滞してしまった林業の再生、復活、そして、何より森を生かす、木々に輝きを与えるためにも、ぜひこのプロジェクトは成功していただきたいと思っております。
 そのためには、このプロジェクトに参画する企業、行政、団体が、それぞれがかかわる事業だけを考えるのではなく、全員がプロジェクト全体を考え、携わっていく必要があります。しかし、現状は、それぞれの意識、連携がまだまだ薄いように感じられます。まずはこのプロジェクトの真のスタートに向けて、知事のリーダーシップのもと、それぞれが強い意識を持ち、一致団結し、全力で取り組んでいただきますことをお願いいたしまして、私からの一切の質問を終わります。ありがとうございました。