平成29年11月定例県議会 発言内容(埋橋茂人議員)


◆埋橋茂人

   

 信州・新風・みらいの埋橋茂人です。よろしくお願いいたします。

 私はきょう三つ大きな質問を申し上げます。一つ目は福祉、社会保障政策についてであります。
 樋口恵子さんの著書「その介護離職、おまちなさい」という本が話題を呼んでいます。超高齢化社会の中、年間10万人を超える労働者が介護、看護のため離職を余儀なくされています。要介護者は今後さらに増加することは必至であり、仕事と介護の両立は喫緊の課題であります。 介護保険制度が十分に活用されないまま多くの労働者が介護により離職している現状があります。市町村とともに介護保険制度の周知を徹底し、介護休業制度についても十分に利用されていない現状を踏まえ、関係機関と連携し周知活動を行うなど、介護を理由とする離職防止に向けた取り組みを強化すべきだと思います。
 2025年には団塊の世代全てが75歳以上となり、医療や介護を必要とする高齢者、とりわけ認知症やひとり暮らしの高齢者の増加が懸念されており、介護サービスに対する需要は加速度的に増大することが想定されます。2017年4月から、新しい総合事業として、これまで介護保険で行っていた要支援1、2の高齢者に提供されていた訪問介護と通所介護が自治体に移行されました。自治体の財政状況により、サービスの質や量に対しての偏りが懸念されています。
 介護労働者の確保と処遇改善についても喫緊の課題です。医療や介護、生活支援を一体的に提供する地域包括ケアシステムについては、2025年度の本格実施に向け、関係機関がそれぞれ主体的に推進していくことが肝要と思いますが、一体的、体系的にサービスを提供するには、関係機関同士の連携が最も重要であるため、モデル事業の検証を行い、県としてのサポートを進めるとともに、職員への実践的な研修や人材確保など、機能充実に向けた支援体制を強化していくことが重要だと思います。
 そこで伺います。
 一つとして、新しい総合事業の現状と課題についてどう捉えているのか伺います。
 二つとして、医療と介護の比率が、日本は欧米より医療の比率が高く、社会保障費の抑制の観点からも、今後は介護の比率を高めることが重要だと多くの関係者、識者が指摘していますし、私も同様に思います。介護福祉士等介護職員の確保の現状と今後の対策を伺います。
 その中の一つとして、国は、団塊の世代の全員が後期高齢者となる2025年には全国で37万7,000人の介護人材が不足するとしています。一方、県は同時期に介護人材の需要を4万6,000人と見込んでいますが、過不足はいかがですか。また、不足するおそれがあるとすれば、確保策をどう考えているのか伺います。
 二つ目として、介護が必要な高齢者と家族が安心して介護サービスが受けられるよう地域ぐるみの体制づくりを要望しますが、より充実した介護サービスを確保提供できる体制を構築するため、介護労働者の処遇改善を図るとともに、介護従事者の離職防止と人材の確保が必要です。
 2点お尋ねします。
 1点目ですけれども、県内の介護、看護を理由とする離職者数はいかがですか。
 2点目、地域医療介護総合確保基金の現況と、そのうちの3重点施策、多様な人材の入職促進、介護職員の資質向上、労働環境や処遇改善による職場定着、すなわち離職防止の現況はいかがか、伺います。
 三つ目として、介護サービスが県民に十分に提供されるよう、必要な施設の増設など地域での格差是正に向け、市町村への補助、指導要請を行うなど市町村と連携し、介護ニーズに合った介護サービスを充実すべきだと思いますが、特養ホームなど施設介護について、待機状況と今後の整備目標を伺います。健康福祉部長にお願いいたします。
      

◎健康福祉部長(山本英紀)

 

 福祉、社会保障政策についてのお尋ねに順次お答えさせていただきます。
 今年度から全ての保険者でスタートした介護予防・日常生活支援総合事業は、介護予防訪問介護、通所介護と同等のサービスから多様な担い手によるサービスまでさまざまなサービスを提供できることから、要支援者等の在宅生活を支える重要な事業であると認識をしております。本年4月時点で、これまでと同じ基準の指定事業者によるサービスは全ての保険者で提供されていますが、地域住民やNPO等の多様な担い手によるサービスの提供は、63保険者中11保険者にとどまっています。
 要支援者等のニーズは、指定事業者によるサービスでは対応できなかった庭掃除や雪かきなど多岐にわたっており、これらの多様なサービスを提供できる体制を構築していくことが不可欠であると認識しております。県としては、地域で活動する生活支援コーディネーターの養成等により、要支援者等のニーズに対応できるサービス提供体制の構築を支援してまいります。
 続きまして、介護人材の状況と介護離職についてお尋ねがございました。
 本県では、現行の第6期長野県高齢者プランを作成した際、2025年に必要とされる約4.6万人の介護職員に対し供給は約3.8万人と推計しており、特段の対策を講じなかった場合には約8,000人の不足が見込まれます。また、総務省の平成24年就業構造基本調査によりますと、県内で介護、看護のために離職した15歳以上の者は、平成19年から24年の5年間に6,600人と推計され、その前の5年間と比較すると減少はしております。
 この需要と供給のギャップを解消し、介護離職を防止することは重要な課題であり、より多くの質の高い介護人材の確保に向け、質と量の好循環を生み出せるよう総合的に対策を講じていくことが重要であると考えております。したがいまして、地域医療介護総合確保基金を活用し、質の高い介護従事者の継続的な確保及び定着を図るための事業として約2億4,500万円を当初予算に計上しております。
 具体的な取り組みとしては、多様な人材の入職促進として、適性に合った職場とのマッチングと介護資格取得費用の助成を組み合わせた信州介護人材誘致・定着事業を実施し、本年10月までに81名が新たに県内介護事業所に就業しております。また、介護職員の資質向上として、長野県版キャリアパスモデルに基づく福祉職員生涯研修を実施しており、昨年度末までに延べ約1万1,000人の方に受講いただいております。
 離職防止としては、介護事業所の施設内保育所への運営費助成や経営専門家の派遣等を通して、労働環境や処遇の改善を図る取り組みを支援しております。基金活用事業などの取り組みにより、県内介護職員数は平成25年から平成27年の2年間で約2,200人増加しているところであり、今後ともこうした取り組みを総合的に推進し、介護従事者の確保に努めてまいります。
 特別養護老人ホーム等の介護保険施設については、市町村が策定する介護保険事業計画を踏まえ、県が3年ごとに策定する長野県高齢者プランに基づき計画的に整備を進めており、特別養護老人ホームの定員数は、平成30年3月末には1万3,270人となる見込みです。
 在宅での特別養護老人ホームへの入所希望者数は平成29年3月末現在2,328人で、前年度に比べ310人減少し、申し込みから入所までの平均期間は約350日であり、平成27年度から新規入所が原則要介護3以上に限定されたこともあり、大幅に短縮をされております。また、介護老人保健施設及び介護療養型医療施設の入所までの待機期間は、それぞれ約50日、約30日となっております。
 県としては、今年度策定する平成30年度からの第7期高齢者プランにおいて、市町村の意見を聞きながら、今後3年間と2025年の介護サービス見込み量及び平成32年度までの整備目標を盛り込むこととしておりますので、これらを踏まえ、地域の実情に応じた施設整備を進めてまいります。
 以上でございます。
      

◆埋橋茂人

 

 続いて、地方創生についてお伺いいたします。企画振興部長にお伺いします。
 地方創生推進交付金に係る国の採択率や数に県間で差が出ています。県として原因をどう分析しているのか、また、それに対する見解を伺います。
 二つ目、県内各地域の活性化に当たっては、持続可能な地域経済、地域社会の形成のため、地域の特性を熟知している地域住民や地元産業の一体となった参画が重要です。地域におけるさまざまな主体、地元住民の声が行政に届く仕組みが必要だと思います。
 長野県における地方創生の取り組みについて、地方活性化につながる施策とするためにも、地域におけるさまざまな主体がPDCAサイクルの議論に参画できる場を設置することとあわせ、各市町村においても同様な仕組みが確立できるよう働きかけるべきではないかと思うところであります。
 地域で暮らす住民、地元企業が主役となった村、まちづくりが進められるよう、産、官、学、金、労、言、プラス専門家という意味だと思いますが、士、それに、女性、若者、高齢者など多くの人々の協力、参画を促し、地域で暮らす多種多様な住民の声を反映する体制を充実すべきではないかと思っています。
 しかし、市町村に深く関係する組織に市町村の地方創生とのかかわりについて伺ったところ、商工会においては、平成28年5月時点で、地方創生交付金を受けて、プレミアム商品券、創業塾、自然エネルギー等に取り組んでいるのは69商工会中25商工会です。ほとんどが商品券で、継続的な事業は少ないとのことでありました。
 労組が参画しているのは10市町村であります。JAが地方創生の推進に向けて市町村と締結している連携協定については、市町村区域とJAの区域が一致しないところもありますので一部輻輳した部分がありますが、平成29年1月31日時点で、分野別に、総合農協16のうち、農業振興では7JA、20市町村、地域振興では5JA、20市町村、防災・火災支援では6JA、10市町村、高齢者見守りでは5JA、20市町村、子育て支援では3JA、13市町村となっています。
 9月定例会における私の地方創生に係る質問に対して、住民主体の地域運営組織が取り組みを続けていくことが大事と企画振興部長に答弁をいただきましたが、私も全く同感です。しかし、実際は、今申し上げたように、主要な主体のかかわりが十分とは言えません。多様な皆さんの参画がないとすれば、自治体の官、すなわち市町村がやらざるを得なくなり、実効のあるものとなるか危惧するところです。市町村の推進状況の現状について県の所見を伺います。
 続いて、知事に伺います。
 今回の地方創生推進交付金は、従来の、ともすれば箱物に偏りがちだった地域振興策に比べ、地域の知恵と仕組みづくりが必要なソフトの分野が重視されており、そのこと自体は評価しますが、一方で、国が査定するなど制度自体が中央集権の仕組みになっています。作文競争にならないかと懸念しています。国に、もっと現場が使いやすく実効性の上がる制度になるよう要望すべきと思いますが、いかがですか。
 以上2点伺います。
      

◎企画振興部長(小岩正貴)

 

 地方創生について、私には2点御質問いただきました。
 まず、地方創生推進交付金の採択状況についてでございます。
 国が公表しております新規採択額を見ますと、平成28年、29年度の2カ年で都道府県分、市町村分のトータルでは、本県は全国で9番目となってございます。もっとも、このうち県分だけを見ますと、本県の採択額が決して多くはないことは率直に受けとめなければならないと捉えております。
 その原因でございますが、政策間あるいは県と市町村間の連携の問題であったり、また、同額の一般財源が必要という財政上の制約などが考えられるところでございます。今後は、国の評価基準も意識しつつ、庁内の議論を活発化し、各部局が連携して幅広く事業をリストアップしたり、申請に先立って国との意見交換をこれまで以上により緊密に行うなど、積極的に交付金を活用できるよう努めてまいります。
 次に、市町村における推進組織の現状についてでございます。
 多くの市町村におきましては、総合戦略の策定段階からその実行段階を見据え、多様な分野から参画を得ているものと認識をしております。例えば、小諸市では、JAや区長会、猟友会などから成る有害鳥獣に関する協議会と連携し、シカ肉をペットフード用に加工し、商品化する取り組みを実施しております。また、松本市では、産学官連携による協議会が中心となり、松本ヘルス・ラボ事業を推進中でございます。県といたしましても、引き続き地域振興局を中心とした関係者間の橋渡し、また地方創生交付金の活用に当たっての具体的な助言、優良事例の紹介などを通じまして市町村の取り組みをしっかりと支援してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
      

◎知事(阿部守一)

 

 地方創生推進交付金制度について課題があるんじゃないかと、国に要望すべきじゃないかという御質問でございます。
 まず、基本的な問題意識は私も共有いたします。地方創生推進交付金に関連いたしましては、これは国から財源をもらえるという意味ではありがたい部分もありますが、反面、もっと地域に任せてもらいたいと、まさに自治でありますから、できるだけ地域の実情に合った使い方ができるようにと、これは県議会の皆様方にも予算を認めていただくわけでありますから、地方に判断を委ねてほしいというふうに思っておりますし、県としても、あるいは全国知事会を通じても、より使い勝手のいい制度にしてほしいと、地域の実情に応じた取り組みが行えるようにしてほしいという要請をさせていただいております。
 ただ、国の立場に立てば、あくまでも国の予算でありますので、国の考え方が全く入らないというものであれば、それはもう交付税にするとか、税源移譲するとかという話になりますので、私は、やはり地方財政のあり方までしっかりと踏み込んだ検討を今後はしてもらうということが重要だというふうに思っております。
 なお、国の名誉のために申し上げますが、まち・ひと・しごと創生本部には、この地方創生推進交付金の活用について地方の相談にかなり丁寧に応じてもらっておりますので、そういう意味では、昔のような上意下達的な国の対応では必ずしもなく、そういうスタンスはかなり変わってきておりますけれども、国の予算ということの制約はどうしてもあるというのが現状だと考えています。引き続き国に対してはより柔軟な活用ができるように求めていきたいと考えております。
 以上です。
      

◆埋橋茂人

 

 御答弁をいただきました。大変ありがとうございました。
 ぜひ地域がもっと元気になるように創生交付金を活用いただくようお願いします。
 続いて、雇用労働政策に関し、大学での連合寄付講座を設けたらいかがということで伺います。
 長野県内における有効求人倍率は、9月末は1.68倍と全国平均1.52倍を上回り、全国10位となっていますが、新規求人数に占める正社員の割合は35.9%と、昨年の同時期と比較しても水準は変わらず、県内の雇用環境の改善にはほど遠い状況です。若年層の安定雇用につながる就労支援として、正社員雇用の採用拡大と正社員転換に向けた企業への働きかけ、離職後早期に再チャレンジできる支援について、労働局や企業経営者、関係団体と連携した取り組みを強化することを要望します。
 若年者の離職理由として、職業意識、勤労観の欠如、進路意識や目的の希薄化などが指摘されています。若者が健全な勤労観を育むため、就労前の学生を対象とした勤労観醸成に向けた取り組みが重要であると考えます。企業経営者、労働団体などの関連団体と労働行政の連携により、実際の就労に即した内容で取り組むべきだと思います。
 そこで、公益社団法人教育文化協会による大学での連合寄付講座の活用を検討されてはいかがかと提案いたします。この寄付講座は、2005年に日本女子大学で初めて開設されて以来、約7,000人が受講しています。現在、同志社大学、一橋大学、埼玉大学、中央大学で開講されています。また、地方連合の寄付講座として、2012年の山形大学を最初に、開設順に山形、佐賀、三重、福井県立、滋賀、長崎、沖縄、大分、岩手、山口、首都大学東京、広島修道、大阪市立、九州の14大学に設けられています。県内にはありません。内容は労働法制等々で、講師は大学教官、経営者協会、連合役員、生協、農協の役員等が当たります。回数は15回で、単位としてもちろん認定されます。
 そこで、玉井県立大学設立担当部長に伺います。
 新県立大学のグローバルマネジメント学科にはふさわしいものだと思いますので、設置を検討いただきたいが、いかがですか。
 続いて、青木県民文化部長に伺います。
 信州大学ほか他県内大学への設置を働きかけていただきたいと思いますが、いかがですか。
      

◎短期大学事務局長兼県立大学設立担当部長(玉井裕司)

 

 長野県立大学における連合寄付講座の設置についてお尋ねをいただきました。
 長野県立大学は、設置に当たりまして、開学後4年間のカリキュラムにつきまして文部科学大臣から認可を得たところでございます。その中で、グローバルマネジメント学科においては、労働基準法などを学びまして、雇用の場で発生する問題の法的解決の力を身につける労働法の授業も開設することとしております。
 寄付講座の導入によりまして新たな科目を追加するには、大学において教育課程の体系の中での位置づけ、養成する人材像との関係について教育研究の見地から検討していく必要がございます。一方、寄付講座には、大学が団体、企業などから寄附金をいただきながら新たな講座を開設できるというメリットもございます。長野県立大学においても、寄付講座の開設につながるようなさまざまな団体や企業などとの関係づくりを幅広く進めながら、教育研究の見地を踏まえ、寄付講座導入のあり方を研究してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
      

◎県民文化部長(青木弘)

 

 連合寄付講座の県内大学への設置についてでございます。
 長野県立大学以外の県内大学につきましては、それぞれの大学が独自の教育理念のもとキャリア教育等を実施しており、また、寄付講座も複数の大学で実施されていると承知をしているところでございます。
 御提案の連合寄付講座の設置につきましては、今後その内容につきまして各大学にしっかりとお伝えさせていただきたいと考えているところでございます。
 以上でございます。