平成29年6月定例県議会 発言内容(荒井武志議員)


◆荒井武志

   

 初めに、消防防災航空体制のあり方についてであります。

 去る3月5日、長野県所有の消防防災ヘリコプター「アルプス」が訓練途上墜落し、消防防災航空隊員9名のとうとい命が失われてしまうという事態は、言葉を失う痛ましい事故でありました。改めて心から御冥福をお祈り申し上げますとともに、御遺族、御関係の皆様に謹んでお悔やみを申し上げます。
 知事議案説明では、消防防災航空体制再構築の検討とともに、県警や国土交通省運輸安全委員会による事故原因の究明に全面協力すること、消防防災航空体制のあり方検討会においてできる限り早期に当面の体制を整えるよう取り組んでいくことなどが表明されました。
 今後どうしていくのかを検討するに当たっては、事故原因が何であったのかの解明が重要であり、必要であるわけですけれども、機体そのものから得られる原因特定は運輸安全委員会などの調査に委ねざるを得ないと認識もしているところであります。
 昨日の小山議員への答弁では、運輸安全委員会での調査結果が出るまでに通例では1年半ほどかかるとのことでしたが、けさの新聞報道で、墜落につながるようなふぐあいや故障が墜落機体からは見つかっていないことがわかったとのことでした。
 そこで、危機管理部長に伺います。
 まずは、このたびの突然の事故を受けて、消防防災航空体制の課題にはどのようなものがあったのか。事故前からあったもの、今後に向けて取り組んでいかなければならない課題についてお聞かせください。
 二つに、墜落をしたヘリ「アルプス」本体に係る、いわゆる車でいえば車両保険的な万が一の際の補償制度はどのようになっていたのでしょうか。
 三つに、消防防災航空体制のあり方検討会における検討に当たり、市町村や消防本部の意見をお聞きする手法をどのようにお考えですか。
 四つに、当面の体制整備の取りまとめはいつごろと想定しておりますか。
 五つに、直営化、民間委託化などを含めた中長期的な方策の取りまとめ、公表時期をいつごろと想定しておられますか。
 続いて、知事にお伺いします。
 5月30日には、山岳救助の最前線で身命を賭して人命救助活動に献身的に当たられてこられました9名の皆様の合同追悼式をお済ませになり、6月20日には第1回の消防防災航空体制のあり方検討会が開催されたところですが、これらを受けての率直な御所見をお伺いします。
      

◎危機管理監兼危機管理部長(池田秀幸)

 

 消防防災航空体制のあり方についての御質問をいただきました。順次お答えを申し上げたいと思います。
 最初に、消防防災航空体制の課題についての御質問でございます。
 事故前までの課題として重点的に取り組んでまいりましたことは、操縦士の確保と現場で活動できる技術の習得でございました。このため、平成27年に2名を採用いたしまして、操縦士の資格取得と実践的な操縦訓練を積んでまいったところでございます。
 6月20日に開催をいたしました第1回消防防災航空体制のあり方検討会では、消火活動再開に向けたさらなる安全対策でありますとか、民間委託も含めた運航方法の検討などの課題が提起をされております。
 今後は、あり方検討会で示された課題を整理いたしまして、さまざまな角度から検討を行い、早期の運航体制の再構築を目指してまいりたいと考えております。
 次に、「アルプス」の車両保険的な補償制度についての御質問でございます。
 本県が契約をしておりました「アルプス」に係る航空機保険につきましては、搭乗者傷害保険と第三者賠償責任保険でございまして、機体に係る保険につきましては、高額であるため、費用対効果の観点から加入はしておりませんでした。
 次に、あり方検討会における具体的な検討についての御質問でございます。
 最初の市町村や消防本部の意見を聞く手法につきましては、あり方検討会の委員といたしまして、地域の消防防災に直接かかわる立場でございます市町村と消防本部の代表の皆様に御参加をいただき、御意見をお聞きしております。あわせまして、航空隊OBの皆様からも御意見をお聞きするなど、現場からの声をしっかり酌み取ってまいりたいと考えております。
 続いて、当面の体制整備の取りまとめの時期につきましては、第1回のあり方検討会におきまして、来年春の山林消火に間に合うよう体制を整えてほしいとの御意見が出たところでございまして、今後、スピード感を持って検討を進めてまいりたいと考えております。
 最後に、自主運航あるいは民間委託など、中長期的な方策の取りまとめの時期につきましては、当面の課題に係る検討の成果を踏まえまして、これにつきましてもできる限り早期に方向性を取りまとめていきたいと考えております。
 以上でございます。
      

◎知事(阿部守一)

 

 消防防災ヘリコプターの墜落事故の合同追悼式と今後のあり方検討会を受けての所見について御質問いただきました。
 先月30日、消防防災航空隊員9名の皆様方を追悼する式典を、御遺族初め多くの関係者の皆様方の御参列の中でとり行わせていただくことができました。その場でも申し上げましたけれども、二度とこうした事故が起きないよう消防防災活動の安全確保に全力で取り組む。このことを改めて強く決意したところでございます。
 6月20日に開催いたしました第1回の消防防災航空体制のあり方検討会におきましては、市町村長、あるいは消防長を代表する各委員の皆様方から多くの積極的な御意見が出されたところであります。検討会として、ヘリコプターによる防災機能は必要不可欠だ。運航再開にはさらなる安全対策が必要である。山林火災が多発する来年春再開を目途として検討してはどうか。消火活動と山岳救助活動を分けて考える必要があるのではないか。こうした方向性が確認されたところでございます。
 今後、こうした方向性を踏まえまして、実務者によります作業部会において航空の専門家などの御意見もお伺いをしながら議論を深め、山岳県として、空からの安心、安全を確保することができるよう責任を持って取り組んでまいりたいと考えております。
 以上です。
      

◆荒井武志

 

 答弁をいただきました。今後に向けて率直な御所見ということでお伺いしましたが、消火活動、救急活動、それぞれ分けて検討したいというようなお話もお聞きしたところであります。
 森林が県土のおよそ8割を占める本県にあって、山林火災が後を絶たず、これへの緊急出動をおろそかにできない状況や、世界に誇れる山岳高原リゾート地を目指していることなどを踏まえれば、中長期的な方策につきましては、県がまさに万端責任を持って対応すべき体制整備が極めて重要と考えます。その辺を改めて認識いただきまして今後の検討が進められるよう強く要望しておきます。
 加えて、事故原因につきましては、当該機体などの物証から得られるものは相当の時間を要すると理解していたところでしたが、機体そのものの大きなふぐあいではなさそうだということが明るみに出てまいりました。引き続き徹底した解明を求めたいと思います。
 訓練マニュアルや管理上の課題、職員体制の確保や職員の安全衛生管理など、その他の部分について早期にしっかり検証、精査され、県民への公表とともに今後の方策策定に生かしていかなければならないことを指摘し、次の質問に移ります。
 次に、小規模企業者の振興についてであります。
 長野県中小企業振興条例が制定、施行され、はや3年余が経過しましたが、この間、県では、しあわせ信州創造プランやものづくり産業振興戦略プランに基づき、次世代を担う産業の創出や企業の経営基盤の強化などに積極的に取り組んでこられたものと承知をしております。
 さきに行われた2月定例会の議案説明で、知事は、地域経済の活性化を図るとして、企業等の技術革新や新分野展開を支援する産業イノベーションの推進、県産品の輸出拡大やインバウンドの推進などグローバル経済への対応、足腰の強い地域経済をつくるための地消地産の推進に取り組んでいくと表明されましたが、このことは、中小企業振興条例の前文冒頭に記されている「長野県の中小企業は、産業発展の原動力であり、地域社会を担う重要な存在である。」ということを踏まえてのものと理解をしているところです。
 具体的な中小企業支援では、融資制度の充実を図り、金融面からの支援を強化すること、地域の暮らしを支える産業の振興を図ること、小規模事業者の経営体質の強化を図るために商工会、商工会議所が実施する経営改善普及事業や経営指導員等の資質向上対策事業などに対して助成すること、高度に専門的な指導事案に広域的に対処するため、シニア専門指導員を引き続き設置していくことなどに取り組むとしております。
 これらの取り組みによって、まさに中小企業者が未来への希望を持ち、新たな挑戦を行うことにより一層発展することを期待しているところですが、さらなる支援策も必要ではないかということで、過日、会派、信州・新風・みらいとして、昨年、平成28年4月に施行された北海道小規模企業振興条例を調査してまいりました。
 北海道では、企業数の9割余りを小規模企業が占める。2009年からの3年間で1万社以上が減少。廃業率が開業率を上回る。後継者不足が74%と全国一。代表者の半数が60歳以上。休廃業、解散が10年前に比べ倍増などの現状や課題が山積する中、経営体質の強化や事業承継の円滑化、創業等の促進のほか、地域における支援体制の整備、小規模企業振興方策の策定、公表、顕著な功績があった者に対する顕彰の実施などを積極的に盛り込み、条例化を図ったとのことでした。
 そこで、産業労働部長に伺います。
 一つに、中小企業振興条例制定以後3年余の成果をどのように捉えておりますか。
 二つに、とりわけ小規模企業者を取り巻く現状や課題をどのように認識しておりますか。
 三つに、小規模企業者の事業振興という点ではどのように取り組んできたのでしょうか。
 四つに、経営体質強化や事業承継、創業等に顕著な功績のあった事業者等の顕彰制度等の充実、さらには小規模企業者に特化した振興方策の制定も必要と考えるが、いかがでしょうか。
 次に、知事にお伺いします。
 一つに、小規模企業の支援体制の整備や円滑な資金の供給に当たっては、地域での連携、一体的な取り組みが重要と考え、既存の商工団体の取り組みに加え、地域振興局が主体性を発揮するような取り組みや支援方策が必要と考えるが、いかがでしょうか。
 二つに、これからの小規模企業者へ寄せる期待について御所見をお伺いいたします。
      

◎産業政策監兼産業労働部長(土屋智則)

 

 小規模企業者の振興について、私には4点御質問をいただきました。
 まず、条例制定の成果についてのお尋ねでございます。
 長野県中小企業振興条例は、中小企業者が未来への希望を持ち、新たな挑戦を行うことで一層発展することを目指し制定したものでございまして、これまで、この条例のもと、産学官金の連携を深めるとともに、趣旨に沿った各種施策を推進してまいりました。
 この間、次世代産業の創出や集積を促進するため、県航空機産業振興ビジョンを策定し、アジアの航空機システム拠点づくりが進んでいること。地場産業の振興を図るため、しあわせ信州食品開発センターを整備し、高付加価値食品の創出や販路拡大などが図られていること。日本一創業しやすい県づくりを目標に、創業に係る制度資金利用者の自己負担額を全国一低くなるよう利率を引き下げたことなどによりまして利用件数が増加していること。そういった成果を上げてきているところでございます。
 次に、小規模企業者を取り巻く現状や課題についてのお尋ねでございます。
 県の企業数に占める中小企業の割合は99.8%、そのうち小規模企業が88.6%と多くを占めております。一方で、企業数の減少や後継者の不足、代表者が高齢化しているという現状に加えまして、開業率が平成26年度に廃業率を上回り、平成27年度には過去最高の率になったものの再度廃業率が逆転するといったこと、調査をされた北海道と同様、小規模企業は厳しい状況にあるというふうに認識してございます。
 また、これらの状況に加えまして、製造業が多い本県の特徴といたしまして、小規模企業においては開発や営業に対して人材などの資本投資を十分に向けられないことから、経営基盤が弱い下請型企業が多いというふうに認識しております。
 こうした状況を踏まえまして、小規模企業の資金、設備、そして人材といった経営資源をしっかりと確保し、経営を安定化させるとともに、新たな挑戦に取り組むことにより、一層の企業経営の発展を図っていくことが課題というふうに考えているところでございます。
 次に、こうした課題を踏まえた上での小規模企業者の事業振興の取り組みについてでございます。
 まず、資金、設備の確保につきましては、県の制度資金において、これまで金利の引き下げや要件緩和を行いながらより活用しやすい制度としてきたところでございます。特に小規模企業者の大きな課題でもございます事業承継につきましては、今年度から創業と同様に1.1%と全国トップクラスの低い金利としたところでございます。
 また、人材の確保育成の面では、技術専門校等において在職者向けのスキルアップ講座を開催するなど、技術力の向上を図っているところでございます。加えて、近年は小規模企業者の求める支援ニーズが高度・専門化してきておりますことから、広域的な視野に立って、高度で専門的な支援を実施するため、商工会議所等のシニア専門指導員による支援体制をさらに充実をいたしまして経営の安定化を図ってきたところでございます。
 さらに、工業技術総合センターを拠点といたしまして、下請型・受託加工型企業から、提案・研究型企業への転換を支援し、小規模企業者の新技術、新製品開発や高付加価値化を図っているところでございます。
 最後に、事業者等の顕彰制度等の充実及び振興方策の制定についてのお尋ねでございます。
 県では、これまで、県民等の中小企業の振興に関する理解を深めるとともに中小企業者の受注機会の増大を図るため、長野県百年企業<信州の老舗>表彰や、NAGANOものづくりエクセレンス制度によりまして表彰を行ってまいりました。引き続きすぐれた中小企業者を顕彰し、応援してまいりたいというふうに考えてございます。
 また、小規模企業者の振興につきましては、先ほどお答えいたしましたとおり、中小企業振興条例の趣旨に沿った施策を進めてきたところでございます。今年度は、次期総合5カ年計画を初め、ものづくり産業振興戦略プランやサービス産業振興戦略などの改定の年でございます。御指摘いただいた視点を踏まえましてこのプランを策定してまいりたいというふうに考えてございます。
 以上でございます。
      

◎知事(阿部守一)

 

 小規模企業者の振興について2点御質問を頂戴しました。
 まず、小規模企業支援への地域振興局のかかわりについてという御質問でございます。
 小規模企業が活躍していただくということは、これは地域におけるイノベーションを進める上でも、また、その企業で働く皆さんの幸せにとっても大変重要なことだというふうに思っております。
 これまでの地方事務所におきましても、景気動向調査や、あるいはさまざまな機会を捉えた企業訪問等によりまして、小規模企業の実態を把握した上で多様な支援機関とも連携しながらきめ細かな対応を行ってきたところでございます。
 今年度から地域振興局を設置したわけでありますので、地域振興局長がこれまで以上に幅広い視点を持ってリーダーシップを発揮して小規模企業の支援に努めていただきたいというふうに思っております。
 例えば、商工会等との連携によります経営革新支援であったり、ながの創業サポートオフィスと連携した創業支援、また、商工観光課、農政課を所管しておりますので、両者の連携による6次産業化の支援、こうしたことを主体的、積極的に進めてもらうということを期待しているところでございます。
 次に、小規模企業者に対する期待ということでございます。
 小規模な企業、組織の柔軟性、機動性を生かしていただくことによりまして、多様な消費者ニーズあるいは地域の課題にもきめ細やかに対応していただくことが可能だというふうに思っておりますし、そうした部分が小規模な企業の強みだというふうに思っております。
 こうした強みを生かすことによりまして、地場産業、伝統産業といった地域に根差した産業の振興、あるいは大企業がなかなか進出しないようなニッチな分野での取り組みを進めること、さらには加工食品等地域の特産物を生かした産業、事業の展開、さらには多様な主体と協働して地域社会の課題解決を図っていく上で新たな事業を創出していただくと、こうしたさまざまなことを期待しているところでございます。
 例えば、取り組みの例として申し上げれば、県産の果物や水、ホップを使用したフルーツビールの開発製造に取り組んでいらっしゃる松本の企業、あるいは、木製サッシをつくってほしいという要望に応えて県産材を使用した断熱性の高い木製サッシを開発製造している千曲市の企業など、多くの活躍の取り組み事例があるわけであります。
 長野県としては、こうしたきらりと光る企業が一つでも多く育っていっていただくことができるように、国、市町村、関係機関とも十分連携しながら引き続きしっかりと支援をしていきたいと考えております。
 以上です。
      

◆荒井武志

 

 答弁をいただきました。長野県の地域社会を支える重要な中小企業、そしてまた小規模企業者の方々が頑張っている、そしてそれをさらに県が条例のもとにしっかり下支えをしていく、これが大事だということを改めて痛感をしたところでございます。
 今、知事のほうからも、きらりと光る、そういう支援をしていくんだと、こういうお話もいただきましたので、そういう思いをこれから一層大事にしていただいて、企業が発展しますように願いまして、一切の質問を終わります。