平成29年6月定例県議会 発言内容(下沢順一郎議員)


下沢順一郎

 

 松本空港活性化策についてお聞きしてまいります。国際チャーター便についてお聞きします。

 県は、昨年11月1日に松本空港利活用・国際化推進室を設置、松本市の職員も4月1日には派遣され、松本空港の国際化に向けて各方面との連携も一層密となり、今後への期待がますます高まるばかりです。
 さて、そのような中、4月19日に2年ぶりの国際チャーター便が韓国から、5月11日には台湾高雄市チャーター便が就航しました。7月にはロシアとのチャーター便の就航も予定されています。松本市長は、今後も、270万人の高雄市を交流都市として位置づけ、健康、教育、観光も含めて経済交流もできれば図っていきたいと希望されていました。
 マスコミによると、阿部知事も、台湾台東県の代表団との会談で、長野県の大きな課題の一つは松本空港の国際化だと述べられた上で、残念ながら国際定期便がまだ就航していない。まずは国際チャーター便を就航させ、将来的には国際定期便が就航できる空港にしたいと強調されたと書かれています。今後の松本空港のあり方は、国際チャーター便の定期便化がその行方を大きく左右するであろうことを考えると、知事のトップセールスの重要性と、近隣の国々への、また、それらを結ぶ各航空会社への働きかけが一層必要であると考えるものです。そこで、知事としての国際チャーター便への思いのたけをお聞きしたいと思います。
 空港の課題と対策についてお聞きします。
 平成29年度の航空局予算の基本方針の中で、観光ビジョンの実現と地方創生のための空港ネットワークの拡大がうたわれています。政府の明日の日本を支える観光ビジョンでは、訪日外国人旅行者の目標を、2020年、4,000万人、2030年、6,000万人とし、3大都市圏以外における宿泊者数も、2020年、7,000万人泊、2030年、1億3,000万人泊としていることからしても、今後さらなる航空需要が拡大すると予想されます。
 そこで、政府は、外国人受け入れ態勢強化のため、また、観光ビジョンの実現と地方創生に向けた国内外航空網の強化策としてさらなる地方空港の活用が必要となり、国土交通省は、3月15日、国際線の格安航空会社の誘致など、訪日外国人旅行者の呼び込みに向け、着陸料の軽減などを支援する訪日誘客支援空港の募集を行う国際線就航加速パッケージを予算化しました。そして、この6月に全国の地方空港から15空港程度を選考することになっています。そこで、この訪日誘客支援空港の認定に長野県としてどのように対応されたのか、また、見通しについて企画振興部長にお聞きします。
 さらに、明日の日本を支える観光ビジョンに対して、松本空港をどのように利活用される計画なのか、知事にお聞きします。
 さて、長野県にとっても、観光立県としての確立、また、訪日誘客支援のため、今後松本空港の果たすべき役割は非常に大きいものがあり、そのためには空港の機能強化も必須です。
 そこで、駐車場問題についてお聞きします。
 現在、空港の駐車場の収容台数は約300台で、混雑時には駐車場周辺道路やビル周辺などに約80台収容しています。つまり、合計で約380台のスペースしかありません。平成27年3月末から福岡便の複線化もあり、利用者の増加に伴い駐車場が満車になることが多くなりました。しかも、チャーター便の運航される日はほとんど満車になり、8月の大阪便運航期間、お盆、年末年始などは空港の駐車場だけでは対応できず、スカイパーク駐車場も開放したわけですが、年始にはその駐車場もいっぱいという盛況ぶりでした。
 そもそも、松本空港駐車場は無料というのが売りなわけですから、車で来たお客さんには全て対応できる状況をつくっておくことが必要ではないでしょうか。さらに、今後の国際化も踏まえると、第2駐車場の整備も必要となり、トータルで1,000台は必要との試算もあります。今後の駐車場対策についての考え方を企画振興部長にお聞きいたします。
 国際線ターミナルビルについてお聞きします。
 国際線の出入国管理には、防犯のため、防疫のため、経済保護のため、CIQと呼ばれる体制が必要なのは御存じのとおりです。また、国際線旅客ターミナルは、空港旅客の乗降、搭乗手続、手荷物の受託、出入国に必要な法令に基づく審査や検査手続等を行う場であり、これらの行為が確実かつ円滑に進められなければならないとされています。その体制を担保するためにも、専用のビルが必要なのは言うまでもありません。
 現在の松本空港においては、海外チャーター便に応じて国内線ターミナルを一時閉鎖し、そのターミナルを融通して使うことによってCIQ体制を維持しています。さらに、海外からのチャーター便の到着のたびにそのチェック体制に時間を要し、観光客の不満を聞くことになります。また、今後、国際線の申請に際しても、専用ターミナルの存在が必要であります。そこで、国際線専用ターミナルについての考え方を企画振興部長にお聞きいたします。
 進入方式についてお聞きします。
 進入方式には、滑走路へ着陸する際、視界が悪い状況でも着陸ができるILSなど、これまでも正確なコントロールを用いた方式がありましたが、さらに新方式、RNP-AR方式の運用が始まり、一部の空港で運用されています。この新方式の利点は、最終進入経路を曲線にできるという点です。設定された航路から0.3マイル、約500メートル以上離れるとコンピューターが警告するという高精度の航法により、空港へ近づく際、管制官による誘導を必要としません。また、最終進入経路も長い直線が必要なくなり、曲線を描いて滑走路へ進入することができます。従来の経路に比べて着陸時の飛行ルートが短くなり、時間の短縮と燃料の節約につながるわけです。また、正確に空港におりられることとなり、ILSの導入より費用も安く、決心高度もさらに低くなります。
 松本空港への導入には、FDAが機材調達をし、パイロットが訓練を受けた後の2年後には可能となります。先日、FDA本社にお伺いした折も、長野県側の協力を期待しておりました。そこで、県も積極的にFDAと準備を進める必要があると思われますが、いかがお考えか、企画振興部長にお聞きします。
 行政、産業界との連携についてお聞きします。
 北九州市の空港企画部を視察する機会があり、利活用状況についてお聞きしてまいりました。北九州空港では、北九州空港利用促進協議会が中心となり、企業サポーターズクラブを結成し、利用促進キャンペーンとして、北九州―名古屋小牧線の利用に際してキャッシュバック方式の出張応援助成をしていました。しかも、この対象企業は北九州にとどまらず、名古屋周辺企業も対象に入れるという、対象を広範囲に広げることにより、積極的な展開姿勢が見えました。
 例えば、北九州市には自動車関連産業が多いため、名古屋周辺の自動車企業に売り込むことによって関連企業の社員に北九州市に出張してもらおうと考えています。長野県としても産業界との連携をさらに深めていく方策としてこのような体制づくりが必要ではないかと思いますが、知事にお聞きします。
      

◎知事(阿部守一)

 

 松本空港の活性化に関連して、3問御質問をちょうだいいたしました。
 まず、国際チャーター便への私の思いについてという御質問でございます。
 県内唯一の空の玄関口であります信州まつもと空港、ここに国際定期便が就航してもらうということは、海外との交流拡大、あるいは世界水準の山岳高原観光地づくりを目指している本県として極めて重要であるというふうに考えております。
 そういう観点から、昨年6月に策定した「信州まつもと空港の発展・国際化に向けた取組方針」では、国際定期便2路線就航という極めて高めの目標を掲げさせていただいております。国際定期便就航に向けた第一歩は、御質問にありますように、国際チャーター便の就航数をふやし、これを定着していくということであります。県としては、平成28年度、平成29年度を集中具現化期間という形で位置づけておりまして、国際チャーター便の誘致に積極的に取り組んでいるところでございます。
 特に、重要なターゲットとなります東アジア地域、私も、御質問の中にもありましたように、この東アジアの要人の方とお話をする際には、ほぼ必ずと言っていいほどこの松本空港を話題にさせていただいておりますし、また、私自身も、航空会社あるいは旅行会社に対するトップセールスに努めてきたところでございます。
 特に、東アジア地域は人的なつながりを重んじる地域でもございますので、これまで本県が培ってきたさまざまな交流を基礎として多元的なチャネルで働きかけを行っていく必要もあるというふうに思っています。引き続きこの国際チャーター便の就航拡大に向けた取り組みを積極的に進めていきたいというふうに考えております。
 それから、信州まつもと空港の活用についてでございます。観光の観点での活用についてでございます。
 昨年3月、明日の日本を支える観光ビジョンが策定されたわけでありますが、本県でも、信州創生戦略の中で、平成31年の外国人延べ宿泊者数200万人という目標を掲げて取り組んでおります。官公庁の統計によりますと、平成25年の54万人から昨年は約110万人ということで、着実に増加をしてきておりますが、200万人に向けてはさらに努力をしていくということも重要だというふうに思っています。
 そうした中で、信州まつもと空港は、国内有数の観光地のアクセスの利便性の高い空港だというふうに考えておりますし、この松本空港に外国からインバウンド客をお迎えすることが長野県の外国人観光客をさらに増加させる上では極めて重要だというふうに考えております。
 平成27年度に県が実施した空港需要予測調査によりますと、中国、韓国、台湾からのインバウンド利用として年間約10万人の潜在的需要があるというふうにも言われております。こうしたことから、このインバウンド誘致のため、海外航空会社の支店へのエアポートセールス、あるいは海外での観光プロモーション等、さまざまな場面において信州まつもと空港を玄関口とした周遊ルート、あるいは旅行商品造成の提案をこれまでも行ってきておりますし、これから一層積極的に行っていきたいというふうに思っております。
 それから、産業界との連携についてでございます。
 信州まつもと空港を活性化していく上では、産業界の皆様方の御協力あるいは協働が必要不可欠だというふうに考えております。経済4団体の皆様方にも信州まつもと空港利用促進協議会の会員として、私どもと連携して空港の利活用に取り組んでいただいているところでございます。また、地元の松本商工会議所におきましては、信州まつもと空港特別委員会が設置されております。松本空港の活用に対して強い熱意を持って取り組んでいただいているところでございます。
 これから、福岡便の3便化であるとか、あるいは札幌便の夏季増便等を目指していく上では、これまでの利用促進の柱としてきた観光需要だけではなくて、ビジネスユースの利用拡大も欠かせないものというふうに考えております。そういう意味で、今後、空港のユーザーとしての企業の皆様方に積極的かつ継続的に御利用いただくということが大変重要だと考えておりまして、こうした仕組みについても、今後、産業界あるいはFDAの皆様方と一緒に検討を進めていきたいと考えております。
 以上でございます。
      

◎企画振興部長(小岩正貴)

 

 私には4点御質問をいただきました。
 まず、訪日誘客支援空港の認定への対応及び見通しについてでございます。
 この制度は、訪日外国人の受け入れ拡大のために海外のLCC等を積極的に誘致しようとする地方空港を国が認定し、支援するものでございます。これは、県が策定した取り組み方針の目指す方向に合致するものでございます。信州まつもと空港の国際化を加速化させるためにも、県といたしましてはぜひともこの認定を得たいと考えまして、国の募集に応じて本年4月18日に申請を行ったところでございます。
 去る6月6日に認定する空港を選定するための国の審査委員によるヒアリングがございまして、太田副知事、また松本商工会議所の井上会頭を筆頭に、松本空港の持つポテンシャルや県及び地元の取り組み方針を御説明したところでございます。現在、委員において審査が引き続き行われておりまして、7月上旬には結果が判明すると聞いているところでございます。
 次に、駐車場対策についてでございます。
 空港の利用者の利便性を高め空港の活性化を進める上では、この空港を基点とした2次交通の整備が大きな課題の一つと認識をしております。県では、今年度、地域における移動手段の確保・補完に関する検討会を設置し、県内の観光の足の確保のための具体策についてもこの検討会の中で検討を行っております。また、松本地域振興局におきましても、観光振興策調査を計画しているところでございます。
 こうした検討を進めていく中で、エアポートシャトルなど空港からの2次交通の充実と利用促進も図りながら、一方で議員御指摘の必要な駐車スペースの確保に向けたハード面の整備につきましてもあわせて検討を進めてまいりたいと考えております。
 続いて、国際線ターミナルビルについてでございます。
 現在、国際チャーター便の運航時には、その都度、国の関係機関の出張対応により、税関、出入国管理、検疫のCIQを実施していただいております。国際定期便就航の実現、定着に当たりましては、CIQ体制を常設するターミナルビルの設備といった空港施設の機能拡充が不可欠となってまいります。取り組み方針の策定以降、国際チャーター便の誘致に向けて積極的に取り組んできた結果、具体的な成果が少しずつ上がってきているものと認識をしております。引き続き国際チャーター便の就航数をふやすため、全力で誘致に取り組みますとともに、これと並行して必要な空港施設の機能確保についても対応してまいりたいと考えております。
 最後に、RNP-ARの導入についてでございます。
 RNP-ARはGPSを利用した新しい進入システムでございまして、地上のインフラ整備が不要という利点のほか、経路短縮、就航率の向上、安全性の向上などの導入効果が期待されているところでございます。
 導入に際しましては、国が航空機の管制業務を担当する立場において行うものでございますが、その前提といたしまして、就航する航空会社において、機材の改修、パイロットの訓練を行い、国の承認を得ることが必要でございます。これまでも、FDAとの情報交換を進めつつ、国に対しても導入を希望する旨の県の意向は説明をしてきたところでございます。県といたしましては、引き続きFDAと協力をいたしながら、国に対し早期導入に向けた働きかけを行ってまいりたいと考えております。
 以上でございます。
      

◆下沢順一郎

 

 最後に、本年秋に開店が予定されているイオンモール松本についてお聞きします。
 平成25年11月の私の質問に対して、知事は、県として地域にふさわしいまちづくりのあり方についてどういう支援が可能であるか、地域の皆様と一緒になって考えてまいりたいと回答されています。その後、28年11月7日にイオンモールが大規模小売店舗立地法に基づく届け出を県に提出しております。また、3月17日までには松本市など5者から総量抑制等交通対策、駐車場台数の確保などが出されております。県として今度どのように対処される方針か、知事にお聞きしまして、私の一切の質問を終わります。
      

◎知事(阿部守一)

 

 イオンモール松本に関連して、今後どう対処するかという御質問でございます。
 イオンモールにつきましては、平成25年に旧カタクラモール跡地への出店が公表されて以来、地域にふさわしいまちづくりのあり方を検討しようということで、県も地元の協議会に参加をいたして、継続して協議を行ってきているところでございます。昨年11月、大店立地法に基づく届け出書の提出以降の審査手続の中で、松本市、松本商工会議所など5名の皆様から、主に交通渋滞の緩和について御意見をちょうだいしているところでございます。
 こうした意見を設置者側にもお伝えしたところ、設置者からは、敷地を活用したバス停や右左折レーンの設置に加えまして、公共交通利用客への優遇措置等、来店する自動車の総量抑制に配慮した対応を行うなど、松本市が取り組む交通対策に積極的に協力する旨の回答があったところでございます。
 現在、提出された意見あるいは設置者側の回答などを踏まえて、庁内関係課で検討中、審査中でございます。今議会における御議論も踏まえつつ、期限であります7月7日までに県としての対応を決定していく考えでございます。
 今回は、中心市街地への出店であり、交通渋滞が最も懸念される点でございます。県としては、既に近隣の県道の拡幅工事でありますとか右折レーンの設置など、交通渋滞の緩和につながる道路整備も進めてきております。先ほど、百瀬議員の御質問に対して県警本部長からもお答えをいたしましたとおり、周辺信号機への車両感知器の増設あるいは信号機の改良等による渋滞対策も行っていく考えであります。こうした対策を講じた上で、なお予想される交通渋滞に対しては、モニタリング、あるいは中心市街地の交通対策に関する協議の継続等、関係者が一体となって取り組むよう要請をしてまいりたいと考えております。
 以上です。