平成29年6月定例県議会 発言内容(寺沢功希議員)


◆寺沢功希

   

 おはようございます。早速質問を始めさせていただきます。

 現在、廃棄物の最終処分を実施する民間事業者は、県内でも受け入れを中止した事業者があり、県内での安定した民間委託処分の継続が難しい状況となっています。県外事業者も、新規受け入れ可能な事業者は限られており、焼却灰等のリサイクル処理も限られた事業所で高額な処理費用となり、また、リサイクル処理できる焼却灰は、不燃物残渣の選別や塩分濃度の規制などの制約が伴います。
 例えば、安曇野市では、ごみ処理を構成6市町村による穂高広域施設組合が運営する共同処理で実施しており、自区内処理の原則から、独自に最終処分場の整備を計画しましたが、住民への合意を得ることは極めて困難であり、凍結状態となっております。そのため、焼却灰の処理は、以前は県内2社の民間事業者へ委託していましたが、1社が受け入れを終了したため、平成26年からは一部を県外事業者へ委託している状況であります。
 そこで、知事にお聞きします。
 一般廃棄物の最終処分は市町村の責務でありますが、市町村による新規処分場整備が困難な中で、県単位の広域で埼玉県や茨城県のような大規模な県営による最終処分場の整備を再検討していただけないでしょうか。
 また、県では、平成5年4月に財団法人長野県廃棄物処理事業団を設立し、広域的な廃棄物最終処分場施設の整備を計画しましたが、事業団の計画が頓挫し、平成20年3月に事業団を清算されました。その際、県は、公共関与による施設整備が必要になった際の予定地として阿智村に最終処分場用地を取得され、現在も管理していますが、焼却灰等の処理を県外事業者に委託処理しなければならない現状では、県内における最終処分容量が充足しているとは言えないのではないでしょうか。
 そこで、この阿智村の管理地の現状は今どのようになっておりますでしょうか。また、仮に県営による最終処分場の整備が難しい場合、この管理地を、例えば広域的な市町村により構成された組合または民間企業が最終処分場として整備を希望した場合、御検討いただける余地はありますでしょうか。
      

◎知事(阿部守一)

 

 廃棄物の問題について2点御質問いただきました。
 まず、一般廃棄物の処理に関連して、県営の最終処分場の整備の検討という御質問でございます。
 市町村が一般廃棄物の処分場の整備について重要な課題として認識し、また、市町村によっては対応を苦慮されているということも私どもは十分認識しております。しかしながら、御質問の中にもありましたように、現行の廃棄物処理法上では、一般廃棄物の処理責任は市町村でございます。その処理に必要な施設の整備も市町村の責務であるというふうにされております。全国的に見ても、産業廃棄物の最終処分場を整備したところに一般廃棄物を受け入れているという例は、御質問にもあったようにございますが、一般廃棄物のみを受け入れる最終処分場を県が整備したという例は承知をしておりません。市町村単独で新規処分場の整備が困難な場合には、一部事務組合あるいは広域連合が主体となって整備する事例もあるわけでありますので、まずは市町村の皆様が主体的に御検討いただくことが必要と考えております。
 県としては、市町村で取り組まれる最終処分場の整備に関する課題について、その解決策をともに考えるなど、整備が進むよう応援をしていきたいと考えております。
 次に、阿智村の最終処分場予定地の現状と、今後広域市町村等で活用する余地があるかという御質問でございます。
 阿智村の最終処分場予定地につきましては、事業用地が荒廃しないように、草刈り、支障木伐採等を行う嘱託員を配置し、また、地元対策委員会の方々に管理業務を委託するなど、地元の皆様との覚書に従って適正な維持管理を行ってきております。
 阿智村の最終処分場整備に係る県としての考え方につきましては、平成19年の6月にお示しをしておりますが、産業廃棄物の最終処分場の残余年数が逼迫し、公共関与による施設整備が必要となった際の予定地として管理をしていくという形になっております。産業廃棄物の最終処分場の残余年数は、平成27年度末に策定した長野県廃棄物処理計画によりますと、平成32年度で約10.4年というふうに見込まれておりまして、現時点では直ちに整備する状況にはございません。この予定地につきましては、当初、長野県廃棄物処理事業団が最終処分場の設置主体として基本協定を締結したものでございますが、その後、事業団の解散に伴いまして、地元との覚書によりまして県が事業団の地位を承継しております。したがいまして、協定上、県が最終処分場の設置主体となっておりまして、県以外の事業主体による整備は想定されていないところでございます。
 以上です。
      

◆寺沢功希

 

 答弁をいただきました。市町村に対してでき得る限り最大限の協力をしていっていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
 続いて、この春、中学校を卒業した生徒たちが、人生初めての試練とも言うべき高校入試を経験し、希望どおりの結果だった者、そうでなかった者、それぞれの思いを胸に新たな道を歩み始めて3カ月が過ぎ、多くの高校では、中間、期末、2回の定期テストが実施され、文化祭を開催する時期となっています。また、一方で、県教育委員会では、3月30日に学びの改革基本構想を策定し、幅広く県民の皆さんの御意見を聞きながら、今年度末には実施方針を決定する予定とされております。
 そこで、教育長にお聞きします。
 昨年度の県立高等学校における退学者の数、また、そのうち再募集において合格し、入学した生徒の数、近年の状況の推移はいかがでしょうか。
 平成29年度高校入試結果を振り返ると、旧第11通学区の後期選抜における不合格者は県下最多となる238人。しかも、前年を79人も上回る数値となっております。そのうち、成績上位校である松本4校の不合格者はいずれも2桁であり、その合計は実に216人でありました。この通学区の再募集の状況を見ると、県立高校が216人の受け皿とはなれず、ほとんどの生徒が私立高校に進学したと思われます。
 現在の入試制度では、希望校へ積極的にチャレンジしにくい環境であり、例えば、経済的事情で私立高校への進学が難しい生徒は、県立高校へ確実に合格するために自分のレベルよりワンランク下の学校を受検するという話も聞きます。選抜試験を行っている以上、高校に学力レベルによるランクがついているのが現実であり、成績上位校不合格者の受け皿となるべく県立高校で再募集が行われていないのが現状であります。志願者状況を考慮した上で、ある程度の成績層の高校に特別枠として事前に再募集枠を設けておく必要があるのではないかと思います。以前、委員会でもお聞きしましたが、基本構想が策定された今、再度御見解をお聞かせください。
 一方で、昨日今井敦議員も質問されましたが、改めて復習を兼ねて、ことし初めて長野県外の高校への進学者が400人を上回り423人となり、全中学卒業生に対する割合が2.04%となりました。このうち、98人は旧第7通学区の中学卒業生で、同区内の実に5.13%の卒業生が県外に進学している状況です。近隣県の県外高校進学率と比較しても、28年度の数値ではありますが、新潟県1.26%、富山県1.47%、石川県1.22%、山梨県1.78%と高い数値であり、最も高い群馬県は5.08%でありますが、旧第7通学区の割合のほうが高い状況であります。この県外高校が、県内の後期選抜不合格者の受け皿の一つにもなっているようであります。また、28年度には、松本市内の国立中学校から9.74%、松本市内の私立中学校から15.91%の生徒が県外高校に進学しております。
 この現状は、学びの改革基本構想の中では触れられておりませんが、これは大きな問題であり、危機的状況だと思います。この生徒の県外流出について、詳細な状況、また、要因はどこにあると分析されておりますでしょうか。また、私は、優秀な生徒が県外へ流出してしまうのは非常に残念であると考えますが、県教委としてはどうお考えでしょうか。仮に、流出を食いとめたいとお考えであれば、今後どのような取り組みをお考えかお聞かせください。
 介護現場における人材の確保が非常に難しい状況にあります。介護事業者も各高校を訪問し、早い段階での人材確保に力を入れているようでありますが、一方で、資格取得の面において課題もあるようであります。
 そこで、教育長にお聞きします。
 介護現場においては、専門知識を学び資格取得した者は当然即戦力となります。現在、県内で介護福祉科を設けている高校は私立2校のみであります。費用負担の面においても需要があると思いますが、県立高校への設置を検討していただけないでしょうか。
 また、普通科に通学中の生徒でも、土日に行われる研修などを受講することにより高校在学中に介護職員初任者研修の資格取得も可能であります。しかし、例えば、家庭の経済的事情により大学進学を諦めざるを得ない生徒にとっては、就職を見据え、普通自動車免許の取得も必要な中、この資格取得に係る費用は非常に負担となります。そこで、ある程度の基準を設けた上で、高校在学中の資格取得に係る費用について補助制度を設けていただけないでしょうか。
 また、支援制度という点では、現在、高等学校等就学支援金制度により、授業料に相当する額の就学支援金を国が支給しております。この制度の取得要件には、保護者の市町村民税所得割額の合算の上限が設定されております。しかし、児童手当制度により16歳未満の子供に対する年少扶養控除が廃止されているため、この所得割額に子供の数は余り考慮されません。市町村民税所得割額が30万4,200円未満の世帯に支給されますので、例えば、制度概要では、両親のうちどちらか一方が働き、高校生1人、中学生1人の子供がいるモデル世帯で年収約910万円未満が支給対象となりますが、高校生1人、高校生未満4人の計5人子供がいる年収1,000万円の世帯は支給対象外となってしまうのです。
 今議会の知事議案説明要旨の中でも、安心して出産、子育てができる環境づくりをオール信州で進めていく。みんなで支える子育て安心県の構築に向け、子育てに伴う経済的負担の軽減や子育てと仕事の両立支援などについて改めて検討を進めるとありました。多子世帯の状況が考慮されなかったり、子育てと仕事の両立ができ、収入がふえたことにより子育てに伴う経済的負担もふえてしまっては、この県の方針に反してしまうのではないでしょうか。現在の就学支援金制度において支給対象外となった世帯に対し、年少扶養家族の数により段階的に基準を設け、県独自に補完する制度の導入を検討いただけないでしょうか。
 以上、支援制度に関する2点について知事にお聞きします。
      

◎教育長(原山隆一)

 

 高校のあり方についてという御質問でございます。
 まず、県立高等学校における退学者数でありますが、昨年度の退学者数は現在調査中ですので、直近の平成27年度について申し上げますと、全日制、定時制の退学者は438人、うち再募集で入学した者の退学者数は33人という状況であります。
 これらの近年の状況の推移でございますが、退学者総数については、平成22年度が619名であり、5年間で181人減少したところでありますが、一方、再募集で入学した者の退学者数についてはほぼ横ばいという状況であります。
 次に、事前に再募集枠を設けることについてのお尋ねであります。
 議員御指摘のとおり、平成29年度の入学者選抜の後期選抜で、旧11通学区の不合格者数は県下最多の238名でありました。そして、県下11通学区の全日制13校のうち7校で91名を再募集した状況であります。後期選抜の不合格者の多くは、公立の再募集及び県内の私立高校へ進学したものというふうに考えております。
 一方、旧11通学区には私立高校が5校あり、平成29年度の選抜において私立の募集定員が1,205名ということで、公立高校受検者の4割が私立高校を受検している状況でもあります。
 特定の高校にあらかじめ再募集枠を設けたらどうかという御提案でございますけれども、そうしますと、その高校本来の募集枠を狭めることになりますので、第1希望の受検生を締め出すということにもなります。中学生の多様な進路希望の実現のため、さらには公平性の観点からも、そのような募集枠を特定の高校に設けるということは難しいのではないかなというふうに考えております。
 次に、県外進学者の詳細と要因、対策についてでありますが、28年度の県内中学校を卒業した者のうち県外高校への進学者については御質問の中にあったとおりであります。県外高校進学率は、これまで1.8%前後で推移してきましたけれども、初めて2%を超えたということであります。それから、県外進学者のほぼ全て、98%になりますが、長野県の公立高校を受検せずにそのまま県外の高校を第1志望として選んでいるという状況であります。
 県外高校は私立も公立もありますけれども、県外進学の主な理由は、約4割が部活動、そして約2割が大学進学ということであります。県外進学者全体の約3割が山梨県ということでありますが、山梨県への進学状況につきましては、昨日今井敦議員にお答えしたとおりであります。それ以外に、石川県、愛知県へは、総数は多くないけれども昨年度より9名増加しているということでありまして、石川県につきましては、新幹線が開通し近隣県と捉えられたというふうにも思っております。
 地域性でありますとか交通の利便性、多様な進路希望などの要因が考えられますけれども、長野県の子供たちが長野県の高校に魅力を感じて学んでもらえるように、学びの改革基本構想に基づきまして地域の皆様と高校の将来像を検討してまいりたいと思っております。
 また、特に、隣接県との相互の公立高校への進学のあり方については、本年6月に設置した入学者選抜制度等検討委員会の中で検討してまいりたいというふうに考えております。
 それから、県立高校への介護福祉科の設置についてでありますが、従前は県内の県立高校でも介護福祉士の受験資格が得られましたが、現在では県立高校では介護福祉士の受験資格は取得できない状況であります。それは、平成19年に社会福祉士及び介護福祉士法の改正がありまして、それに伴い、資格取得に要する専門教科の履修単位数が従前の34から53単位へ大幅に増加するとともに、専任教員の資格も、教科の免許に加えて、医師や看護師等の免許を有し、5年の勤務経験または実務研修というものが要件となっているということです。専門学科における専門教科の履修単位数は、通常は25単位以上、多くても35単位程度である。そこに、3年間で53単位の専門教科という履修は生徒への負担も大変大きく、また、専任教員の確保も難しいということで、介護福祉科を設置できる状況にはないということであります。
 しかも、現行制度では、介護福祉士の受験資格を得るには、一つの学校で全ての科目を履修しなければならないので、高校において一部の科目を履修しても、高校卒業後、また専門学校等の養成施設へ進学した場合は、改めてゼロから履修し直すという制度になっておりまして、これは不合理だということで、現在、県では、介護福祉士の受験資格を得るまでの学費の削減とか期間の短縮を狙いとしまして、地方分権改革に関する提案制度を活用し、高校卒業後に養成施設で不足科目を履修することによって通算して所定の単位数を満たせば受験資格を得られるように国に対して要請をしているところでございます。
 以上です。
      

◎知事(阿部守一)

 

 私にも御質問を頂戴しました。
 まず、高校在学中の介護職員初任者研修資格取得のための補助制度についてでございます。
 本県では、ことしから、介護事業者が職員の初任者研修の受講費用を負担する場合に、その費用の一部を助成する制度を新たに創設いたしました。介護職員の初任者研修は、土日を利用して受講いたしますと4カ月程度で修了可能なものが多くなっております。また、通信教育で受講することも可能になっております。介護職場に就職が決まった高校生もこの制度の対象になっておりますので、この制度を使って在学中に資格を取得することができるようになっていると考えております。この制度の利用をこれからしっかり呼びかけていきたいと考えております。
 それから、高等学校等就学支援金を補完する県独自制度の導入についてという御質問でございます。
 高等学校等就学支援金制度につきましては、所得制限の導入から3年を経過した状況であります。現在、国におきまして、制度改正の効果や影響等の検証、所得の把握方法を含めた課題や講ずべき措置の検討を行っている状況でありまして、私どもとしては、その動向をまずは注視していきたいと考えております。
 なお、全国知事会におきましては、低所得者に対する支援の充実を図る観点からの要望を国に対して行っております。本県としても、子供の貧困への対応が重要な課題となっている中、所得の低い世帯の方々に対する支援に重点を置いていくということが重要だと考えております。
 以上です。
      

◆寺沢功希

 

 支援制度について再度教育長にお聞きします。
 ちなみに、今年度、就学支援金支給対象外の県立高校に通う生徒数は何人で、仮に対象外生徒の就学支援金を県が負担するとすればどのくらいの金額になるのでしょうか。お聞きします。
      

◎教育長(原山隆一)

 

 就学支援金対象外の生徒数と県の負担についてというお尋ねでございますが、今年度の数字はまだ確定しておりませんので平成28年度の実績で見ますと、就学支援金対象外の生徒数、すなわち授業料を徴収している方ということになりますけれども、6,739名ということになります。これは、全生徒数の14.1%ということになりますが、仮に県負担額が幾らになるかということ、つまり、授業料の徴収額が幾らということになるわけですけれども、8億8,000万余ということになります。
 以上です。
      

◆寺沢功希

 

 8億を超える金額ということでありまして、それを全額負担するということはなかなか難しいところかもしれませんが、ぜひできる限り県のほうで負担をしていただければと思い、要望いたします。
 今回の改革では高校再編がクローズアップされがちですが、この学びの改革は、新たな社会を創造する力を育む学びを目指すものであり、授業改善、地域社会との連携、入学者選抜制度の改革など13項目から成る新たな教育の推進も改革の柱とされています。
 私は、もっと県民の皆さんにこちらのほうにも注目していただき、また、今まで以上に議論を深めるべきだと思いますし、石和議員の質問の中にもありましたが、この学びの改革が一体誰のための改革なのか、子供たちの思いを置き去りにすることなく、また、大人の、そして地域のエゴとなってしまうことのないよう、もう一度原点に戻り、実施方針決定に取り組んでいただきますことを教育長に強く要望いたしまして、私からの一切の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。