平成30年11月定例県議会 発言内容(花岡賢一議員)


◆花岡賢一

   

 誰もが活躍することができる県の組織の構築に向かう長野県にあって、皆様御承知のとおり、障害者雇用に関する一連の事実は、ある方面では活躍の場のあり方について再度考えさせられるものであったことは間違いなく、また、中央省庁からの方針、内容について、それを精査し、再発を防いでいかなければならない極めて重要な事例であったと考えます。

 阿部知事も今定例会の議案説明の中で触れておりましたが、今回の教訓を踏まえて、障害者雇用のあり方を抜本的に見直す姿勢を示していかなくてはなりません。
 また、行政とは、さまざまな時代の背景や価値観の変遷に対して求められるサービスを提供し、それを提供し続ける責務を負っていますが、障害者雇用のあり方が抜本的に見直されることを前提に、以下、総務部長にお伺いいたします。
 平成30年度の障害者雇用率、長野県分、長野県企業局合算分についての再点検調査を行ったところ、一部対象とならない職員の参入がありました。公開されている資料を見ると、「厚生労働省から、「新たに対象となる職員の範囲の考え方が示されたことに伴い」等の記述を見ることができます。この再点検調査については厚生労働省からの依頼があったものと認識しておりますが、その際に国からの何らかの新たな説明はあったのでしょうか。
 また、今回の件でさまざまな意見が県民ホットラインに寄せられておりますが、再発防止に関する質問に対して、信頼回復のために適正な事務処理の確保に努めていくとの回答がありましたが、問題の再発防止に向けてどのような取り組みを進めていくのか具体的にお示しください。
 民間事業主の模範となるべき県として、障害者雇用の定める率に向かうべく努力をしていかなければなりません。9月以降、庁内組織での検討を進めると同時に、障害のある方々を講師に迎えて意識改革に向けた職員研修を行っている中で、今年度2回目の選考募集を始めたことは評価されるべきだと考えます。
 しかし、2回目の障害者採用の募集の内容を確認すると、県職員の採用予定者は5名程度とされ、1回目の合格者4名と合わせても法定雇用率に対する障害者の雇用不足数15.5名に及びません。法定雇用率をいつまでにどのようにして達成を目指していくのか、その計画をお示しください。
 雇用率の達成だけにとらわれると、今回浮き彫りになった課題の細かい部分を見落としてしまうのですが、再点検を行うに当たり、障害者手帳の確認を行わなくてはなりませんでした。そもそも、障害者手帳などの取得についても個人の意思が尊重されることは当然であり、その所持を確認する際には、個人情報の取り扱いの観点から細心の注意が必要であります。再び今回のような事案が起こらないことが大前提でありますが、手帳の取得の確認を行わなくてはならない状況が発生した際に、今後どのような対策をとっていくのでしょうか。
 障害者雇用のあり方については、今定例会の冒頭で長野県のあり方や方針が示されたわけですが、これから実行されていく障害者の雇用拡大に向けて誰もが活躍することができる県組織づくりに向けた取り組みの方針を取りまとめるとの内容がありましたけれども、どのような方針になるのか。
 以上、お伺いいたします。
      

◎総務部長(関昇一郎)

 

 障害者雇用に関連して5点お尋ねをいただきました。
 1点目の再点検調査に当たっての国からの説明についてであります。
 8月31日付で国から依頼のありました再点検調査においては、新たに対象となる職員の範囲の考え方が示され、任期が1年以下の臨時、非常勤職員も算定の対象とするよう指導があったところであります。しかしながら、その詳細な定義が不明確であったことから、本県では、調査日時点で任用する全ての臨時、非常勤職員を対象として雇用率を算定しております。国に対しましては明確な基準を示すようあわせて要請をしたところであります。
 10月23日に国が決定いたした公務部門における障害者雇用に関する基本方針では、職員数の計上方法等に関して明確な判断基準を改めて示す手引を新たに策定することとしており、これにより今後明確な運用ができるものと考えております。
 2点目の障害者雇用の算定誤りの再発防止策についてであります。
 先般の再点検調査においては、国の通知やガイドラインに定める方法に従い全職員に呼びかけを行い、障害者手帳の確認を行ったほか、把握した情報の保存方法を見直すなど、調査手法を抜本的に見直したところであります。今後、チェックシートの作成や複数職員による確認の徹底など再発防止に向けて事務処理の適正化を進めてまいります。
 3点目の法定雇用率の達成時期とその方法についてであります。
 法令を遵守すべき立場にある本県としては、法定雇用率の達成は当然の責務と認識しております。障害者の採用は、その特性に応じて、より短時間で柔軟かつ多様な勤務形態にも対応できるよう、常勤職員だけでなく、非常勤職員の採用を推進していくことも必要であります。このため、非常勤職員の募集への障害者枠の導入や知的・精神障害者を対象としたチャレンジ雇用の拡大により、来年の法定雇用率の達成に向けて積極的な取り組みを進めてまいります。
 4点目の障害者手帳等を確認する際の個人情報の取り扱いについてであります。
 障害者手帳等に対する考え方は個人によりそれぞれ違いがある中で、職員へのプライバシーへの配慮は非常に重要であることは言うまでもないところであります。調査に当たっては、全職員への呼びかけと本人からの申告を前提に把握することとし、所属を通した申告に加えて、今後は直接人事課へ申告できる制度も導入してまいりたいと考えております。
 最後に、障害者の採用、活躍の場の拡大に向けた取り組み方針についてであります。
 障害者雇用の抜本的な見直しに向けては、より実効性のあるものとなるよう障害者団体の皆様から御意見をいただいてきたところであります。いただいた御意見の中には、障害特性に応じた採用枠の拡大、勤務時間の弾力的な設定や週20時間未満の超短時間勤務の導入、相談、サポート体制の充実といったものがあり、勤務条件の整備の重要性を改めて認識したところであります。取り組み方針には、こうした意見の反映はもちろん、全庁的な検討組織による障害者の従事業務の検討や職員の意識改革に向けた研修の実施などに加えて、単に法定雇用率の達成にとどまらず、子育て中の方や高齢者も含め、誰もが働きやすい職場づくりについても盛り込んでいく予定であります。
 以上です。
      

◆花岡賢一

 

 お答えいただく中で、やはり率の達成というものを目的とするだけでなく、それぞれの皆様の採用に当たっていろいろなニーズに対応できるような体制をつくっていっていただきたいと思うところでございます。
 障害者雇用の問題に関する国の検証委員会の報告においても、厚生労働省のガイドラインの取り扱いや通知の不明確さなどに関する課題が指摘されており、雇用率の問題が全国に波及した一因になったものと考えられます。
 一方、障害者の中には長時間の勤務に耐えられない方もおられる一方で、週20時間未満の勤務の方は現在の雇用率制度の対象とはならないといった課題もあり、県としてはこうした制度の見直しを国に求めていっていただくとともに、そうした方々の雇用もぜひ進めていただきたいと思います。
 いずれにしても、今回の問題を契機として、国、地方公共団体における障害者雇用のあり方が抜本的に見直され、障害者が主役の本来の障害者雇用制度が再構築されることを切に願います。
 平成33年、あえて平成と申し上げますが、4月を前に、障害者雇用率をさらに0.1%ずつ引き上げると言われている状況を考えると、向かうべき理想の県組織の構築が、長野県だけでなく、国全体で取り組んでいかなければならない課題と捉えることができますし、その課題に対して長野県はぜひ先頭を突っ走っていただきたく強い願いを申し上げて、質問を移ります。
 心のケアについて質問いたします。
 厚生労働省障害保健福祉部の患者調査の中の参考資料を見る中で、精神疾患を有する総患者数の推移では、平成11年が約204万人であるのに対して、精神疾患の判定が以前より明確になったこともありますが、平成26年には約392万人と精神疾患を有する患者が倍近くになっている現状があります。疾病別の内訳で見ると、神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害の患者数の増加が顕著であるようにとれます。厚生労働省が、四大疾病に精神疾患を加え、正式に五大疾病としたのが2013年であることを考えてみても、心のケアやメンタルヘルスについては社会全体で認識をしていくことと同時に、理解を進める重要性が現代人に問われているものと考えます。
 そのような中、県が平成28年度に実施した県民健康・栄養調査の結果によると、ストレスを感じている15歳以上の県民は、「非常に」と「多少」を含めたもので、男性で64.8%、女性では75.0%との結果があり、特に30代から50代の働き盛りの方の割合が高い傾向が見てとれます。 また、40歳代以上の男性は、ストレス解消のための対処法がある人の割合が男性平均より低い状況にあります。適度なストレスはやる気や作業効率を上げることもありますが、対処できないほどの強いストレスを長時間にわたり受け続けると、心身の健康を害するおそれが高まります。過度なストレスによって深刻な事態に追い込まれることのないよう、働き方改革が求められる中で、心の健康づくりやメンタルヘルス対策の充実は大変重要と考えます。
 そこで、県は県民の心の健康づくりを推進するため、地域や職場においてどのような取り組みを進めようとしているのでしょうか。健康福祉部長にお伺いいたします。
 また、厚生労働省の発表では、仕事が原因で精神疾患にかかり平成29年度に労災申請をしたのは1,732件で、昭和58年度の統計開始以降最多との結果があります。労災認定も506件で過去最多でありました。前年の平成28年度も過去最多であったことから最多を更新し続けている現状があり、自殺件数に至っては未遂も含めて98件にも上っているようですが、県内の労働者の心の病による労災の現状はどのようになっているのでしょうか。また、労働者の心のケアについて県はどのような対策を行っているのでしょうか。その際に、労働局及び関係団体との連携は図られているのでしょうか。産業労働部長にお伺いいたします。
 身体の健康状態をチェックする健康診断とメンタルヘルス対策を比較すると非常にわかりやすいと思うのですが、健康診断は従業員に定期的に健康診断を受ける義務があるのに対して、心の健康診断は従業員には受診する義務はありません。また、業務上のストレスに対する軽減措置は、労働者が高ストレス状態にあっても労働者みずからが面接を申し込まなくてはならないなどの課題があります。このように、身体の健康診断と心の健康診断では大きな違いがありますが、この違いが大きいのに反して、それを知る人が少ないことから、実施運営の担当者は、周りの理解不能により運用や調整がうまくいかないこともありますが、これからの運用に際しては問題点の改善も図り、進めていかなくてはならない課題であります。
 また、雇用する側としても、労働者個人が高ストレス状態になることを未然に防止するためにも重要な課題であると同時に、労働者の心身の健康を保持し、増進することは、企業全体の利益につながることと考えます。企業の中で健康経営という言葉が広がり始めたのが2009年ごろで、経済産業省が2015年に行った健康経営の啓発と中小企業の健康投資増進に向けた実態調査では、約6割の経営者が健康経営という言葉を知らない状況もあったようです。健康診断と同様に、労働安全衛生法では、心の健康診断とも言うべきストレスチェックを2015年に実施していますが、その内容は常時50人以上の労働者を使用する事業所には実施の義務があるというようですが、先ほどは長野県に対して対外的にどのような対策かお聞きいたしましたが、県職員に対してはどのようなストレスチェックを行っているのか、総務部長にお伺いいたします。
      

◎健康福祉部長(大月良則)

 

 心の健康づくりの推進についてのお尋ねでございます。
 心の健康には、身体状況、社会経済状況、家庭や職場の環境、対人関係などさまざまな要因が影響しております。日本の社会が、人と人とのきずなが薄れ、学校や働く場での競争が激化する中で、議員御指摘のように、ストレスが増加し、精神疾患を有する者が増加しております。心の健康を保つためには、適度な運動、バランスのとれた食事、心身の疲労回復のための休養の3要素に加え、ストレスと上手につき合う方法を身につけることが必要です。
 県では、第2期信州保健医療総合計画の「こころの健康」分野において、県民が過度なストレスを感じることなく、心豊かに生き生きと生活できるよう、地域、学校、職場における心の健康づくりに取り組むこととしています。
 まず、地域においては、保健福祉事務所等における精神保健福祉相談の実施に加え、家族や仲間の変化に気づき、その方の気持ちに寄り添って傾聴し、必要に応じて専門家につなぐゲートキーパーの養成を推進する等により、生きる支援に取り組んでまいります。
 第2に、学校においては、中学生にストレス対処法やSOSの出し方等を学んでもらう授業を今年度もモデル校で試行しました。大人になってからも役立つ心の健康を保つスキルを身につけられるよう、来年度以降、順次この取り組みを全県展開してまいります。
 第3に、職場においては、働き方改革が求められている現状を踏まえ、働く人の立場、視点に立って労使双方と連携しながら、一人一人の労働者に寄り添った相談の実施、企業等に対する職場環境改善の働きかけ等を行ってまいります。
 心の健康は、健康長寿を支える重要な要素であり、健康づくり県民運動、ACEプロジェクトや自殺予防対策とともに取り組みを進め、県民の皆様の心の健康づくりを推進してまいります。
 以上でございます。
      

◎産業政策監兼産業労働部長(内田雅啓)

 

 2点御質問いただきました。
 まず、労働者の心の病による労災の現状についてでございます。
 厚生労働省の平成29年度過労死等の労災補償状況によれば、仕事上の強いストレスにより鬱病などを発症したとして長野労働局が労災補償支給を決定した県内の件数は9件、うち4件が未遂を含め自殺によるものとなっております。
 次に、労働者の心のケア対策についてでございます。
 県では、県内4カ所に設置しております労政事務所におきまして、専任の労働相談員を配置し、労働者からの心のケアなどの労働問題に関する相談に対応してございまして、メンタル不調について専門的な相談を希望される場合には産業カウンセラーによる特別労働相談を受けることとしております。
 また、企業の人事労務担当者や労働者等を対象に、産業カウンセラーが講師を務めるメンタルヘルス対策講座「心の健康づくりフォーラム」を労働局の関係機関でございます長野産業保健総合支援センターとともに県内4カ所で開催してございます。人手不足を背景とする長時間労働やパワーハラスメントなど労働者のメンタル不調につながる労働環境が依然としてあることから、引き続き関係機関と緊密に連携しつつ、働き方改革、労働者の心のケア対策を推進してまいります。
 以上でございます。
      

◎総務部長(関昇一郎)

 

 県職員のストレスチェックの実施状況についてのお尋ねであります。
 知事部局では、民間事業者に委託をし、常勤職員及び任期が1年以上の行政事務嘱託員等を対象にストレスチェックを実施しております。今年度の対象者は5,872人で、そのうち回答者は5,692人、回答率は96.9%となっております。回答者のうち、厚生労働省が定める基準以上の高ストレス者に対しては、医師の面接指導の勧奨や希望者への保健師との面談を行っております。
 また、職場ごとの集団分析を行い、改善が必要な所属については改善案の検討、報告を求めております。今後とも、ストレスチェックの実施により、職員のメンタルヘルス不調の未然防止に努めるとともに職場環境の改善につなげてまいりたいと考えております。
 以上であります。
      

◆花岡賢一

 

 お答えいただきましたけれども、ストレスチェックは、その制度が導入されてまだ2年という状況ですので、これから改善も含めて取り組みが行われていくことだと思います。
 今回取り上げました質問は、一見関連がないようにとられてしまうかもしれませんが、今週3日からは障害者週間でありますし、4日からは人権週間であります。障害を持つ方もそうでない方も、その家族の皆様に対するレスパイトケアについても、全ての人が活躍する社会の構築と活躍のみにこだわらず、社会全体が包み込むような長野県となることを願い、質問を終わります。