平成30年11月定例県議会 発言内容(石和大議員)
◆石和大
人口減少社会では、公共サービスにおいても、これまでの制度のままでは適用できないようなことが少なからず起こってきます。蛇口を開けばどこでも衛生的な飲料水が出てくる日本が誇る上水道という一番基本的なインフラも、現代社会ではそれに付随している生活排水についても、将来に向けて持続可能な形を見据えなければなりません。
そこで、まず、山国信州ならではの上下水道施設の維持管理についてお尋ねをいたします。
農業集落排水施設は、農村地域において農業用用配水の水質保全や農村生活環境の改善等を図るため整備が進められてきました。本県では、冬季長野オリンピックの時期をピークに整備が進み、農業集落排水施設数は全国2位となっています。中山間地域を抱える長野県にとって、生活排水の整備のスピードや財政的な有利さを考えたときに、この事業によって整備することは時宜にかなっており、県民の皆さんの生活排水処理の向上に大きく寄与してきたと考えます。
一方、施設の整備から時間が経過し、施設の老朽化や人口の減少など農業集落排水事業を取り巻く環境は厳しくなっております。県内中山間地域に多く建設され、更新時期を迎えている農業集落排水施設の現状や対策及び県の市町村への支援の状況について環境部長に伺います。
また、農業集落排水については、施設、特に建屋については景観や地域性を考えたデザインになっていて、中には地域の公民館にでも使えそうな立派な建物があります。今後、例えば、私の地元、東御市のように、農業集落排水を公共下水につなぎ込むといった場合の施設の後利用について、県の考え方を環境部長にお聞きをいたします。
中山間地域の中でも、特に小さな集落になってくると、農業集落排水施設やコミュニティープラントのような集合処理による生活排水事業の維持管理が困難になるのではないかと懸念しています。今後、そのような地域がふえていった場合の処理区域の対応はどう考えているのか。そして、今後人口減少による使用料収入の減少が進むと、一般会計からの繰り入れに頼らざるを得ない状況に陥るなど、生活排水事業の運営は厳しくなることが予想されます。住民の公衆衛生向上と公共用水域の水質保全のためには、今後も農業集落排水施設も含めた生活排水処理施設を維持管理していくことが肝要であります。人口減少などの影響を受けつつも、今後も生活排水処理施設全般を持続的に運営していくための方針について環境部長に伺います。
また、排水だけではなく、水道についても課題はあります。水道事業の維持管理については市町村単位によるところが多いわけですが、小規模な町村については、管路や水路といった施設についてもそうですが、収納等事務の執行についても人手不足などの要因により大変さを抱えて負担感が増してきていることが懸念されます。水道事業の維持管理等について、企業局が天竜村で行った事務の一部代替執行のように県としての小規模町村の今後の水道事業を支えていく仕組みが必要と考えますが、いかがでしょうか。環境部長に伺います。
4点御質問をいただきました。順次お答えいたします。
初めに、農業集落排水施設の現状等についてでございます。
農業集落排水施設につきましては、昨年度末時点における施設数は269カ所で、このうち供用開始から20年が経過し更新時期を迎えている施設が約100カ所ございます。この更新時期を迎えている施設の対策でございますが、まず、市町村において公共下水道等への統合が可能かどうか、接続費用や維持管理に係るコスト比較を行い、その結果、統合が有利となる施設につきましては、国土交通省の助成を受けて整備を進めているところでございます。
一方、統合が不利となる施設につきましては、施設の機能診断に基づき、必要最小限の費用に抑制した保全計画を策定した上で、農林水産省の補助を受けながら処理水槽のコンクリートの補強やポンプ等の機械の更新といった機能強化対策を進めております。県といたしましては、市町村に技術的な助言を行うとともに、国に対して要望を行い、必要な予算確保に努めているところでございまして、市町村が計画的に整備を進められるよう引き続き支援してまいります。
続きまして、農業集落排水施設の後利用についてでございます。
農業集落排水施設を公共下水道等へ統合した後の建屋や処理水槽の利用につきましては、補助金で整備した場合には一定の制限が課されることもありますが、防災備蓄倉庫や文化財収容庫などに活用されている事例がございます。県といたしましては、市町村のニーズを踏まえ、施設の有効利用が図られるよう必要な助言をしてまいりたいと考えております。
続きまして、生活排水処理施設の運営方針についてでございます。
本県では、生活排水事業に係る県構想を平成27年度に策定し、市町村ごとに下水道、農業集落排水施設、浄化槽の区域を設定したエリアマップや経営プラン等を定めております。この中で、集合処理が困難となる地域では、施設の大規模更新の時期にあわせて浄化槽整備区域への転換を検討することや、人口減少により使用料収入が減少する場合には施設の統廃合により管理運営費を削減することなどの方針を示しているところでございます。
また、国からも、より一層効率的な運営を図るため、広域化、共同化に関する計画の策定を求められておりまして、県と市町村で県構想の見直しに着手しているところでございます。構想の見直しに当たりましては、処理区域の変更や処理施設の統廃合のほか、複数市町村によります維持管理業務の共同化といったソフト面の連携なども検討する必要があると考えておりまして、今後も市町村と連携し、地域の特性に応じて多面的な対策を検討してまいりたいと思います。
次に、小規模町村の水道事業についてでございます。
御指摘のとおり、小規模な町村におきましては、職員数が少なく、技術者も不足しており、水道事業の経営に関するノウハウの継承ができないなど大きな課題を抱えていると認識しております。水道事業を将来にわたって維持していくため、平成29年3月に策定いたしました長野県水道ビジョンに基づき県内10地域に設置した広域連携に関する検討の場においても同様の課題を市町村と共有しており、水質試験や施設の維持管理の共同化なども含めさまざまな方策の検討を進めているところでございます。今後も市町村の要望等を丁寧にお聞きし、関係部局、現地機関等と連携をいたしまして地域の実情に応じた支援策を検討してまいります。
以上でございます。
続いて、県営水道施設の老朽化対策及び自然災害への対応についてお尋ねいたします。
去る11月13日に、長野市若槻団地で、水道管の破裂による事故のため、断水や赤水、濁り水等が発生し、約4,800世帯の住民の生活に影響が出たことは記憶に新しいところです。新聞報道によりますと、この地域を給水区域とする長野市上下水道局の話では、原因は特定できないが、この水道管は1965年に埋設され、耐用年数の40年を超えていたことから、老朽化の可能性が高いとのことです。県企業局では、長野市南部、千曲市、坂城町及び上田市の千曲川沿岸の3市1町の住民18万8,000人に水道水を供給しているわけですが、上田市から長野市に至るまで千曲川に沿って埋設されている送水管を初めとする水道施設の老朽化対策についてどのように対応しているのか、公営企業管理者に伺います。
次に、企業局の県営水道の自然災害への取り組みについて伺います。
平成28年4月発生の熊本地震、ことしの台風7号と梅雨前線の影響による西日本を中心に発生した平成30年7月豪雨、そして9月に発生した北海道胆振東部地震など、全国各地において大規模な自然災害が相次いで発生しました。このため、被災地域では、水道管を初めとする水道施設が被害を受けたことから、断水や濁り水などが生じ、かつ、復旧までに時間を要したため、住民生活に大きな影響が出たことは周知のとおりです。長野県も、糸魚川―静岡構造線断層帯を初めとする多くの断層帯が存在し、大規模地震がいつ起きてもおかしくない状況であると考えます。
そこで、企業局では地震などの自然災害に備えた対策についてどのように取り組んでいるのか、公営企業管理者に伺います。
続いて、企業局の電気事業についてお尋ねします。
企業局の電気事業につきましては、地方公営企業を取り巻く環境の変化を踏まえ、平成15年に企業局事業の民営化計画が策定されるなど、一時は民間への譲渡が検討されてきたところですが、平成23年3月の東日本大震災と福島第1原発事故を契機にエネルギーを取り巻く情勢が一変したことから、平成24年11月議会での議論を経て事業の継続が決定されました。ここからの電気事業は、固定価格買い取り制度、いわゆるFITにより投資が促され、経営戦略も成り立っていることが大きいわけですが、制度の活用には2020年までに認可を受けることが必要となっています。そして、企業局では、平成28年に長期的な経営の基本計画となる長野県公営企業経営戦略を策定し、平成29年4月には17年ぶりの新規発電所となる高遠発電所と奥裾花第2発電所を竣工させました。
また、損益では、平成25年から29年まで5期連続で過去最高益を更新し続けるとともに、地域貢献として、一般会計にこれまで約12億円に上る繰り出しや企業局職員の技術力を生かした水力発電所建設に係る技術支援を行っていると承知しております。当時、文教企業委員として議論に参加し、電気事業の継続を強く訴えてきた私としては、このような電気事業の現在の状況を見るにつけ、当時の判断は適切であったと心から思う次第であります。
さて、今定例会で、企業局からは、県営の発電所にさらに小水力の発電装置を整備するという補正予算案が提出されています。これまで使われていなかったエネルギーに着目して再生可能エネルギーの供給を拡大するという取り組みは、これはこれで企業局職員の技術力を生かした大変意義のある取り組みだと考えます。
この件も含めて、企業局では、現行の固定価格買い取り制度を有効に活用して今後とも安定した経営を継続していくとともに、地域との共存共栄を果たしていくためにどのように電気事業を展開されていくお考えか。公営企業管理者に伺います。
御質問に順次お答えしてまいります。県営水道施設の老朽化対策及び自然災害への対応についてでございます。
まず、水道施設の老朽化対策についてでございますが、企業局における水道施設の老朽化対策につきましては、2016年から2025年度までを計画期間とする経営戦略におきまして、アセットマネジメントの手法を取り入れ、国や他の事業体の基準も参考に、法定耐用年数の1.5倍での更新を基本とする独自の更新基準を設定いたしまして計画的に更新を進めてまいりました。その結果、現在、耐用年数の1.5倍以内で更新を終えることができてございますので、それを超えた老朽化資産はございませんが、今後ともこの基準に基づき老朽化資産を極力生じさせないよう取り組んでまいります。
この中で、とりわけ最重要管路の一つでございます上田市の諏訪形浄水場から千曲市鋳物師屋に至る送水管路につきましては、延長も長く、幹線道路下の埋設であることから、生活や交通への影響を最小限にとどめるため、本計画期間中に管路や地盤の基礎調査を行うとともに、関係機関と協議、調整の上、工事に着手できるように進めてまいります。
次に、自然災害への対応についてでございますが、自然災害の対応につきましては、ハードとソフトの両面から対策を進めてございます。具体的には、ハード面の対策といたしまして、まず、浄水場や容量が1,000立方メートル以上の配水池、あるいは導送水管や口径200ミリ以上の配水管に加えまして、病院や災害時に避難所となる学校等地元市町と協議の上定めた重要給水施設に至る管路と耐震化を優先する施設を定めまして、これら施設、管路の耐震化を現行戦略の計画期間中に100%とするよう取り組んでまいります。
さらに、現在、災害時に避難所となる施設に設置を進めている応急給水施設「安心の蛇口」につきましては、平成28年4月の熊本地震を受け、計画期間中に整備予定箇所を20基とすることとし、今年度までに7基を整備する予定でございます。
次に、ソフト対策といたしましては、平成29年度に関係する市町村と災害時連携協定を締結し、その中で、災害発生時における役割分担や情報共有の手法などについて明確化するとともに、これら市町村と合同防災訓練を実施して被災情報の収集や応急給水応援体制の確認を行っております。今般の地震や豪雨などの自然災害の報に接し、水道が住民生活や社会経済活動に不可欠なライフラインであることを改めて認識したところでございまして、今後も安定した給水が継続できるよう、水道施設、管路の適切な維持管理に努めてまいりたいと思っております。
次に、電気事業の今後の展開についてでございますが、企業局では、再生可能エネルギーの供給拡大と経営の安定及び地域への貢献、地域との共存・共栄を両立させて電気事業を発展させていくためには、現行の固定価格買い取り制度の期間内に、新規発電所の建設や既存発電所の大規模改修を可能な限り進めていくとともに、それにより培った技術系職員のノウハウを地域へ還元していくことが重要であると考えております。
そのため、現在着手してございます辰野町、箕輪町、松川町の3カ所の新規発電所では、末永く地域に愛される発電所となるように地元小学生等から発電所の名称を公募するとともに、観光資源としても活用できるよう景観に配慮した外観とする計画としてございます。
既存の発電所の大規模改修といたしましては、現在、西天竜発電所の建てかえ工事を行うとともに、春近発電所については、PFI方式によらず、企業局が直営で行うことを決定し、10月に環境影響評価に係る調査委託契約を締結したところでございます。
さらに、その上流に位置する美和発電所につきましても、同時期に建てかえることで水運用の最適化による発電量の増加を見込めるため、現在発注の仕様を検討してございます。
これに加え、最近の取り組みとして、本年8月に新規電源開発地点発掘プロジェクトを発足させ、その中で、今定例会に補正予算案を提出した小渋第2発電所構内を含む4地点を早期調査着手地点として選定し、現行の固定価格買い取り制度の認定を目指して取り組みを加速することとしてございます。
また、これらの取り組みを通じて、企業局が蓄積するノウハウを地域へ還元すべく、環境部が主体となって市町村や土地改良区等の小規模発電の事業化を支援する小水力発電キャラバン隊の取り組みに今後とも企業局としても積極的に参加してまいりたいと考えてございます。
以上でございます。
現代社会のキーワードの一つであるSDGs、国連による持続可能な開発目標は、一人も取り残さないという目標だというふうに示されていますが、日本は今までも一人も取り残さない社会を目指してきました。地球上には、一人も取り残さないということをまずなし遂げたいと考える国も少なくないでしょう。日本は、水の恵みを中心にした自然環境と勤勉性などにより今日の社会システムを構築しました。特に、昭和、戦後の高度経済成長期の人口ボーナスをバックボーンにしたインフラ整備は、時間的に日本を狭くしたほどです。しかし、今回質問した項目のように、当たり前の水道や生活排水といったインフラも急速に更新時期が到来しているという感があります。人口減少社会では、意識して持続可能な形をみんなで構築することが必要だと思います。
長野県が目指す学びと自治の力で切り開く新時代は、歴史に学び、現状を見詰め、先を見通す目をみんなで磨き、力を出し合うことだと考えます。長野県は、過疎化の進行もあり、小規模な市町村が少なくありません。持続可能な社会を目指すのに困難な課題が待ち受けていることは容易に予想されます。
まず、県はそんな基礎自治体の課題を把握し、適切なサポートをすることが大切な使命になると思います。誰一人取り残さない長野県の構築に向けてしっかりと力を出し合うことに期待をし、そんなところに力をしっかりと出していきたいということを決意し、質問を終わります。