平成30年11月定例県議会 発言内容(山岸喜昭議員)
◆山岸喜昭
順次質問に入ります。防災・減災対策についてであります。
ことしも残すところわずかになりましたが、振り返ると、2018年に入って、今までにない大規模な自然災害が日本列島を襲ってきた年でありました。夏は記録的な豪雨、次々に列島を駆け抜ける強烈な台風、そして強い揺れ等次々と襲われて、多くの犠牲者と甚大な傷跡を残していきました。
また、全国各地で連日の猛暑に悩まされもし、相次ぐ自然現象とそれに伴う甚大な被害に社会は大きな衝撃を受けました。日本こそ脆弱な国であることを改めて思い知らされ、防災の大切さを身にしみて感じる夏でありました。何十年に一度クラスの自然災害が1年のうちに何度も起こる。果たしてこれは偶然なのでしょうか。素人目にも世界が完全な異常気象サイクルに入ったように見えます。なぜここまでして災害が起こるのか。地球温暖化によって気象は今後も悪化し、台風の巨大化、頻発化、そして地殻活動の活発化によって火山噴火や大規模地震の発生も懸念されています。治山治水は国家のかなめであり、安全確保を第一に国土強靱化を見直す時期に来ていると思われます。不完全でもよいから1割でも2割でも減災しようという現実的な判断と、いつ、どこで起きるかわからない自然災害に対応できるよう防災体制確立の重要性を改めて感じているところであります。災害の甚大さや発生頻度を勘案し、脆弱なインフラを洗い出す意義は大きいと思います。災害の予想される緊急性の高い事業を優先し、計画的な整備を行うため予算にもめり張りをつけるべきではないかと思われます。
県内において土砂崩れを起こしかねない危険地点はどのくらい把握されているのか。住民自身が災害の危険度を把握しておくことや、常日ごろ、被害予想を示すハザードマップや地元の避難場所については確認、周知も必要と考えるが、いかがか。建設部長にお聞きします。
一方、避難勧告などの連絡を受けても避難しない住民が少なくないことから、各自治体においては災害発生時の情報提供の体制を確認し、防災教育や避難訓練を充実させる必要があると思うが、いかがか。危機管理部長にお聞きします。
国内で多発する災害の経験や教訓に学び、今後予想される大規模地震や噴火災害、大雪、豪雨などの気象変動に備えて、地域防災計画の見直しや、防災・減災対策について国、県、市町村で連携して取り組んでいかなければなりません。県土の強靱化を進め、県民の安心、安全な暮らしを守る取り組みを重視されたいが、いかがか。知事にお伺いいたします。
県内の土砂災害のおそれがある箇所の把握についてのお尋ねでございます。
県では、平成13年度から、土砂災害防止法に基づき、土砂災害のおそれがある区域を明らかにする砂防基礎調査に取り組んでおります。特に、平成26年8月に広島市で大きな被害を生じた土砂災害を踏まえ、補正予算を活用するなどして前倒しした対応を図ってきたところです。その結果、現時点で、県内の土砂災害のおそれがある土砂災害警戒区域として2万6,950カ所を把握しております。県では、引き続き地形改変等のあった箇所を中心に継続して調査を進め、危険箇所の把握に努めてまいります。
次に、ハザードマップ等の周知についてのお尋ねでございます。
危険箇所や避難場所等を示したハザードマップは、現在、県下全市町村において作成、公表され、住民に配付されております。しかしながら、県では、ことしの西日本豪雨災害を踏まえ、ハザードマップの住民への周知徹底を図るため、市町村に対し10月に説明会を開催し、再度の住民周知の取り組みを依頼したところです。この中で、例えば、村が住民に配付しているカレンダーにハザードマップを掲載し、効果的に周知を図っている例などを紹介したところであり、各市町村が認知度アップに向けて創意工夫を持って取り組んでいただくようお願いしているところです。
また、近年の災害の激甚化を踏まえ、現在県では、さらに大きな洪水に対する浸水想定区域図を作成しているところであり、土砂災害危険区域の最新情報とともに速やかに市町村に提供することで新たなハザードマップ作成もスピード感を持って支援してまいります。
以上でございます。
災害時の情報提供や防災教育、避難訓練の充実についての御質問をいただきました。
本年の7月豪雨災害では、市町村から避難勧告などが発令されても、その重要性や意味が十分には理解されず、避難行動につながらなかったと指摘されております。そのため、現在、国の中央防災会議では、住民が身に危険が迫るという切迫度を理解し、避難行動を促すための情報提供の仕組みについて検討が行われたところでございます。
本県といたしましても、独自の取り組みとして市町村実態調査を実施しているほか、市町村と連携し、住民の皆様への聞き取り調査を行うこととしております。
また、住民の皆様がみずからの命はみずから守るという意識を持ち、みずからの判断で避難行動をとるためには、防災教育や避難訓練などの取り組みがやはり不可欠となっております。今後は、避難行動を促す情報をわかりやすく提供するほか、出前講座の実施や地域の皆様にみずから防災マップをつくっていただく取り組みなど、市町村や関係部局と連携し、さまざまな手法を用いた防災教育や災害から見えてきた課題や地域の特性を取り込んだ実践的な避難訓練を行うよう努めてまいりたいと考えております。
以上でございます。
大規模災害に備えた一体的な防災・減災対策の必要性について御質問いただきました。
県民の皆様の生命、財産を災害から守るということは県としての大きな役割だというふうに考えております。そのため、しあわせ信州創造プラン2.0におきましても、いのちを守り育む県づくりということを重点政策に掲げて、地域防災力の向上や災害に強いインフラ整備など、ソフト、ハード両面から災害による被害を最小限に抑えるための取り組みを推進することとしております。こうした取り組みを着実に推進していきたいというふうに考えておりますが、他方で、防災対策のあり方等については常に見直しを行っていくことも必要というふうに考えております。
例えば、ことし7月の西日本豪雨災害や9月の北海道胆振東部地震を教訓にして、本県においてもこうした災害を自分事として捉えて対応していこうということで、今、各部で具体的な検討を行っております。災害時の情報発信のあり方や停電対策、災害弱者対策、こうした点について、今回の災害を受けて全庁的な視野から改善策の検討を行っているところでございます。
今後とも、いつ起きるかわからない大規模災害に備えまして、県土の強靱化に向けたハード面での取り組み、そして国や市町村、関係機関としっかりと連携をしてのソフト面での取り組み、こうした両面から一体的な防災・減災対策を進めていきたいと考えております。
以上です。
続きまして、「高校改革~夢に挑戦する学び~」における高校の将来像を考える地域の協議会の設置についてお聞きします。
本年9月に策定された「高校改革~夢に挑戦する学び~実施方針」では、来年9月までに、旧12通学区ごとに高校の将来像を考える地域の協議会を地域の協力のもと順次設置するとしていますが、設置タイムリミットまで10カ月足らずとなった現在、旧8通学区以外には設置に向けた動きが表面化していません。地元小諸では2校ありますが、行政、地域、同窓会、学校などで前向きな話し合いが持たれているところであります。実施方針に、「県教委は広域連合長たる市町村長に協議会の設置を要請する」とあるとおり、当然のことながら、県教委としては、設置に向け、広域連合長や当該市町村との協議等を進めていることと思いますが、設置に向けた現在の進捗状況についてお伺いいたします。
また、同じく実施方針の中には、再編・整備計画について、県教委は、協議会の意見・提案を踏まえて、総合教育会議での議論を経て、全県的視野に立って21年の3月に再編・整備計画を確定する。なお、他の計画に影響なく実施できるものについては、20年3月に再編・整備計画を策定するとあります。万が一、協議会の設置がおくれ十分な議論がされない場合、あるいは協議会が設置されないような事態が生じた場合には県教委としてはどのようにするのか、教育長にお伺いします。
高校改革について地域の協議会についてのお尋ねでございます。
地域の協議会の進捗状況についてでございますが、旧第8通学区では上伊那地域の高校の将来像を考える協議会が本年6月に設置され、同窓会や各方面から幅広く意見聴取を行うとともに、地元にない新たな形の高校を視察しながら地域の高校の将来像について建設的で活発な議論が行われているところであります。県教育委員会としては、他の地区においても高校の将来像を考える地域の協議会の設置を進めるため、関係する市町村長や教育長等に要請を行ってきているところであります。
現在、全ての地区において協議会の趣旨を御理解いただき、設置に向けた協議や調整が行われておりまして、設置要綱の作成や委員の選考を進めている地区も多いところでございます。このような状況から、旧第8通学区以外でも今年度内に順次設立が始まるものと考えているところでございます。
地域の協議会の設置に係る懸念についてでございます。県立高校の再編・整備は県教育委員会の責任において決定し、実施していくべきものであることは当然でありますが、その責任を果たす上でも、地域の声を丁寧に聞きながら進めていくことが重要であるというふうに考えておりまして、協議会において高校の学びのあり方や高校配置について議論していただきたいと考えているところであります。
この趣旨を踏まえ、各地域で協議会が可能な限り早期に立ち上がり、地域の将来を担う若者をどう育てていくかについて議論を尽くしていただけるものと考えており、また、そうなるように県教育委員会としても来年9月末までに全ての地区で設置されるようしっかり取り組んでまいりたいというふうに考えております。
ぜひ設置に向けて御尽力を願いたいと思います。
続きまして、スポーツ振興についてお伺いいたします。
現在、県におきましては、第82回国民体育大会及び第27回全国障害者スポーツ大会の開催を契機に、大会終了後も見据えながら、より多くの県民がそれぞれの関心や適正に応じて、する、見る、支えるなどさまざまな形でスポーツに参加できる文化を創造することを目指し、スポーツの振興に取り組んでおります。
国体の本大会及び冬季大会並びに全国障害者スポーツ大会の三つの大会を成功させるためには、大会運営に向けた準備や競技会場の選定、整備のほか、全国レベルでの競える選手、指導者の育成など、長期間にわたり計画的に取り組んでいくことが必要であります。大会では、ぜひ天皇杯及び皇后杯の1位獲得を目指してもらいたいと大いに期待をするところであります。
そこで、これまでの取り組み状況や今後の予定についてお伺いいたします。
昨年12月、全ての市町村長、関係競技団体、各界各層の関係団体など約300名で構成する長野県準備委員会が設立され、オール信州による準備体制が整備されましたが、27年の大会開催に向けて現在の準備状況はいかがか。また、各競技の会場地となる市町村では、今後競技場の整備が進むと思われますが、市町村が行う施設整備について県はどのような方針で取り組まれるのか。近年、本県は国体の本大会での全国的順位の低迷が続いている状況にありますが、本年6月、知事を本部長とする長野県競技力向上対策本部が設置され、大会本番で1位を目指す推進体制が整ったと思いますが、今後の対策本部を中心とした競技力の向上に向けた取り組みはいかがか。開催を見据えては、9年後に主力となるジュニア層の選手の発掘、育成が重要となります。
長野県では、平成21年から、子供たちに国際舞台で活躍できる競技者となる夢とチャンスを与えることを目的とした発掘・育成事業、SWANプロジェクトに取り組み、本年で10年目を迎えておりますが、これまでの成果はいかがでしょうか。このSWANプロジェクトは、冬季競技のジュニア選手の発掘・育成事業であります。夏季競技のジュニア選手の発掘や育成も重要と捉えますが、今後はどのように取り組まれていくのか。地元、小諸市、東御市では、ラグビーワールドカップや東京オリ・パラなどの事前合宿を契機に、特色を生かしての高地トレーニング構想を推進する中、トップアスリートの誘致を図り、スポーツツーリズムに取り組み、高地トレーニングで小諸から表彰台へをキャッチフレーズに、競技選手の育成、トレーニングの場としてオリンピックムーブメントを発信しているところであります。
こうした中、東京オリンピックでの活躍を目指し始めたオリンピアン育成支援事業が昨年度をもって事業終了となりましたが、世界を目指すことは国体の強化にもつながるものであり、私はこの事業をぜひ復活、続けるべきと思うが、いかがか。教育長にお聞きします。
スポーツ振興についてのお尋ねでございます。
まず、2027年の国体、全国障害者スポーツ大会の準備状況でございますけれども、昨年12月に準備委員会を設立後、準備委員会の中に専門委員会を設置いたしまして、総合開閉会式会場、競技会場地市町村の選定に向けまして専門委員会委員による意見交換や市町村、競技団体とのヒアリング、現地調査を行いながら選定作業を進めてきたところでございます。
先月9日に開催した両大会の準備委員会の第2回常任委員会におきまして、総合開閉会式会場を松本平広域公園の陸上競技場と決定し、国体の競技会場地市町村の第一次選定分として、14競技の会場地を11の市町に内定したことによりまして、大会開催に向けて本格的なスタートを切ったところでございます。今後は、2020年度末までの全正式競技の会場地選定を目指しまして引き続き調整を進めるとともに、名称、愛称、広報、マスコット、県民運動などを検討する専門委員会を新たに立ち上げまして、両大会に向けた準備を加速してまいりたいというふうに考えております。
次に、競技場の整備に係る方針についてでございます。
国体の競技場の整備につきましては、日本スポーツ協会において、既存施設の活用に努め、大会後の地域スポーツ推進への有効的な活用を考慮するということが定められておりますし、また、両大会の準備委員会におきましても、国体の競技施設基準を満たし、ユニバーサルデザインにも配慮された既存施設を活用することというふうにされているところでございます。
このような方針を踏まえまして、会場地が内定した市町村とヒアリングを行いながら、今後準備委員会において競技施設の概要や主な整備内容などを整理した競技施設整備基本計画を策定することとしているところでございます。本計画に基づきまして、市町村が着実に整備を進められるよう県としてもしっかり取り組んでまいりたいというふうに考えております。
続きまして、競技力向上に向けた取り組みについてでございます。
本年6月に設置した長野県競技力向上対策本部は、知事を本部長に、競技団体を初め、医科学分野の専門家や大学プロスポーツチームなど県内の競技スポーツ関係者で構成するオール信州の組織であります。対策本部では、現在、9年後の国体と、国体終了後も見据えた中長期的な取り組みの指針となります競技力向上基本計画の策定を進めているところでございます。この計画では、大会及び大会までの段階的な目標や大会後における目標も定めるとともに、競技力向上のために必要な組織強化、指導者養成、選手育成及び環境整備の四つの視点ごとに対策本部が行う具体的な取り組みを示していく予定としております。大会本番まであと9年という限られた期間でありますが、本県の競技力の底力を県内外に示せるよう、対策本部を中心に県内スポーツ関係者の力と英知を結集して全力で取り組んでまいりたいというふうに考えております。
SWANプロジェクトの成果についてのお尋ねでございますが、このプロジェクトは、冬季オリンピックでのメダリストを夢見る小中学生を主な対象に世界への挑戦に必要なフィジカルトレーニングなどを提供する事業でございまして、これまで、71名が終了し、現在は、10期生12名を含めた66名を育成しているところであります。これまでに、全国中学校体育大会など小中学校の各学年で県を代表する選手として活躍しているほか、修了生を含めた12名は、各種目での全日本ジュニアクラスの指定選手となってワールドカップや世界ジュニア選手権などへ出場を果たしております。10年目の節目を迎えた本年度は、新たに夏の間に北海道でスピードスケートの氷上合宿を行うなど、事業の充実を図ったところでありますが、今後も引き続き一人一人の成長段階に応じたより高いレベルのプログラムの提供に努めてまいりたいというふうに考えております。
次に、夏季競技に係るジュニア選手の発掘、育成についてであります。
競技力向上対策本部では、本年度から、9年後の国体を見据えまして、夏季競技についても子供の成長段階に応じたジュニア選手の発掘・育成事業を開始したところであります。具体的には、小学校の低学年に向けては、運動遊びやスポーツの楽しさを経験できる体験教室を県内4会場で順次開催いたしました。9年後の国体で主力として活躍が期待される小学校の高学年には、キラキラっ子育成プロジェクトと名づけた発掘・育成事業を行いまして、約750人の応募者の中から1期生として選考された44名に対しまして最先端のスポーツ医科学の知見も取り入れた育成プログラムを提供中であります。
また、みずからの可能性に挑戦する中学生や高校生に向けては、その年代から始めても技術向上が期待できる種目や競技人口の少ない種目など個々の適性を見きわめることのできる体験の場も提供するところであります。今後は、これらの事業に協力いただいております専門家の意見も踏まえ、改善を加えながら9年後の国体に向けたジュニア選手の発掘、育成に取り組んでまいりたいというふうに考えております。
最後に、オリンピアン育成事業の継続についてであります。
平成26年度から取り組んできたオリンピアン育成事業は、2020年に東京でオリンピックが開催されることに着目し、少しでも多くの本県出身選手が出場できるようJOCのオリンピック強化選手の指定が本格化する直前の平成29年度までの4年間、県独自で強化支援を行ってきたところであります。この間、夏季競技の25名の選手を指定し、支援してまいりましたけれども、大変厳しい競争の中で、一部にはナショナルチームのメンバーに選出され、世界大会に出場する選手も出現しております。今後、日本代表として東京オリンピックへの出場を大いに期待しているところであります。オリンピックを初め、国際大会での本県選手の活躍は、県民を元気にし、子供たちに夢や希望を与えるとともにスポーツへの関心や参加意欲の高揚にもつながるものであります。今後、9年後の国体に向けた選手強化に取り組む中で、世界の舞台に挑戦できるトップ選手の育成も図ってまいりたいというふうに考えております。
以上であります。
ことしも大リーグ、マラソン、体操、ゴルフ、水泳、テニスなど多くの日本人の世界での活躍が目立ちます。オリンピックやワールドカップ、世界大会など、合宿誘致で「長野県からセンターポールに日の丸を」を目標とすることによって、人口減少に歯どめをかけるとともに、多くの外国人や多くの交流人口の増加につながることになり、スポーツ離れや若者に夢を与える。これからのスポーツ振興に大いに期待しまして、質問を終わります。