平成30年11月定例県議会 発言内容(依田明善議員)


◆依田明善

 

 おはようございます。爽やかにまいりたいと思います。本日は、人手不足と就労支援について御質問させていただきます。

 御存じのように、この問題は外国人労働者の問題とリンクしながら連日伝えられておるところであります。そんな中、果たしてどの分野が一番不足しているのか。不足している割に賃金が思ったほど上がらないのはなぜなのか。そして、外国人労働者に頼らざるを得ない事情はあるにせよ、仕事を持たない、あるいは持てないでいる推定220万人以上の日本人を強力に支援することは国の存続にとって極めて大切なことではないのか。その点にも触れながら御質問させていただきたいと思います。
 まず初めに、人材不足による倒産についてお伺いいたします。
 現在、中小企業の約7割が人材不足に対して深刻な悩みを抱えております。また、全国的に見て、2018年度上半期の人手不足による倒産は、前年の同時期と比べて実に4割も増加しているようであります。
 業種別に見ますと、建設業、サービス業、製造業などが上位を占めるようでありますが、長野県における人手不足による倒産件数、負債総額、業種別の件数はどうなのか、産業労働部長にお尋ねをいたします。
 また、人手不足を解消するため、県では長野県就業促進・働き方改革戦略会議を設置しましたが、その成果と課題についてあわせてお尋ねをいたします。
 次に、どの分野が一番不足しているのかという点についてお尋ねをいたします。
 ことし1月における有効求人倍率は1.68倍ですので、確かに人手不足ではあります。農業においても、日本人アルバイトは極めて確保しづらいのが現状です。また、製造業や小売業、サービス業等においては、正社員の1.14倍に対してパートタイムは2.0倍ということです。要するに、雇用者側から見て、雇用も解雇もしやすい低賃金労働者が一番不足しているということであります。
 また、正社員につきましては、一般社員というよりも、幹部になり得るような優秀な人材が不足していると、そんな裏事情もあるようであります。
 また、介護職については、有効求人倍率が3.5倍前後と高水準ですが、都内に至っては7倍という異常な状況となっております。
 いずれにしても、業種によって、あるいは雇用形態によって人手不足や離職率の状況はかなり違うようですが、県内におけるその実態及び行政の対策と成果はどうなのか、産業労働部長にお伺いいたします。
 次に、人手不足なのになぜ賃金が上がらないのかという問題であります。
 経済の常識から言えば、人手不足は賃金の上昇をもたらすはずであります。しかし、実際は正社員であっても給料が上がらないと嘆く皆さんが多いことも事実であります。ただし、雇用する側とすれば、不景気になったときのことを考えるとなかなか大盤振る舞いはできないし、内部留保がふえれば安心だというのが本音だと思います。ただし、この行動は、経済用語にもあります合成の誤謬という言葉でもわかるように、ミクロ経済から見れば節約と貯蓄に励む堅実経営は正しい選択ですが、マクロ経済から見れば消費低迷や経済の失速につながりますので間違った選択ということになるわけであります。
 また、賃金の低さでは、介護職が特に問題になっております。それぞれの業界が63ある中において最下位でありますが、40代のベテラン介護職でも平均年収が395万円程度ということです。公的に決められた給与体系とはいえ、嫌なら外国人を雇うから結構ですという安易なスタンスではなく、根本的に賃金や職場環境を改善していく必要があると思います。
 また、団塊の世代が大量に退職する中において、嘱託のような形で組織内に残る人々が多くなりました。これらは、非正規雇用が一気にふえた原因とも言われております。
 識者の中には、給料の安い高齢者が大量にふえたために、その賃金体系が若者にも悪影響を与えていると訴える方もおり、確かにそういう側面もあるとは思います。ただし、働く高齢者は若者の競争相手でもあるので、その皆さんが仕事をやめさえすれば若者の出番もふえ、賃金もきっと上がるだろうなどといった後ろ向きな発言には賛同できません。90歳になっても100歳になっても生活費はかかるわけですから、働く気力や体力がある限りはお金を稼ぐという意識は重要だと思います。人手不足というのであればなおさらではないでしょうか。
 いずれにいたしましても、人手不足であるにもかかわらず消費喚起を促すほど賃金が上がらないというこの奇妙な現象について産業労働部長はどのような御見解をお持ちなのか。そして、この問題を解決するために県としてどのような対策をされておられるのか。成果や課題も含めてお答えをいただきたいと思います。
 次に、生産年齢と65歳以上の就労者についてお尋ねいたします。
 一般的に、生産年齢人口というのは、15歳から65歳未満までと言われております。総務省による住民基本台帳によりますと、ことし1月1日の時点において生産年齢人口は7,484万人とのことでした。人口1億2,520万人の中でついに6割を切ったというニュースは記憶に新しいわけでありますが、そこで注目を浴びているのが65歳以上の皆さんであります。幸い、人生100年時代と言われている昨今、65歳を過ぎてもますます意気軒高で働いている方は決して珍しくありません。本日の議場を拝見しても、そのことを見事に証明しているわけであります。
 では、その後に続く世代はどうでしょうか。幸い、生まれたときから物や食料に恵まれ、便利で自由で平和な環境の中で我々はすくすくと育ちました。しかしながら、車社会の中でろくに歩く必要もなく、多くの人々は運動不足が常態化しております。あるいは、不寛容の時代と言われる中で、職場のパワハラもふえたり、一方、些細なことで心が折れたりキレたりする方もふえているようであります。
 自殺についても、確かに全体的にはここ8年間減少を続けております。しかしながら、中学生の自殺だけは昨年346人に上り、前の年よりも38人も増加をしてしまいました。平成最多という悲しい記録であります。
 経済の根幹をなす生産年齢人口が激減する中において、心身ともに健康的な労働者も実は減少しているのではないかという危惧は誰もが抱くところだと思います。そういった状況の中においては、未来志向の力強い長期計画や長期戦略は描きづらくなってしまいます。この心身ともに健康的な労働力を今後いかに確保していかれるのか、産業労働部長の御見解をお伺いいたします。
 最後に、ニート対策についてお伺いいたします。
 御存じのように、ニートというのは、仕事にもつかず、学業も職業訓練も行わず、家事等も行わない人々の中において、15歳から39歳までの未婚の若者のことを指します。以前は34歳まででしたが、超高齢化社会を迎える中、定義の変更が行われたようであります。
 また、ニートの数については、2017年において実に71万人。そのきっかけのトップは病気とけがですが、療養している間に不安感に襲われ、自信を喪失し、職場に復帰できなくなるパターンが多いようです。また、最近の傾向として、パワハラやセクハラなどがきっかけで会社をやめ、そのままニートになってしまう方々も増加しております。
 ニートと呼ばれる方々の中には、不登校経験者やいじめを受けた過去を持つ方も多く、良好な人間関係を築けない、社会常識も欠如している、あるいは基礎的学力に不安があるといったことで自信を喪失しており、それゆえに就職をためらっている方も多いようです。こういった就労が困難な方々に対しどのような支援を行っているのか、現状や課題について産業労働部長にお伺いをいたします。
 また、ニートの中には、働くことに価値や喜びを見出せない、組織に束縛されたくない、人から指図されたくない、だから働かないといった若者もふえているようであります。時代背景もあり、本人ばかりを責めても解決できませんが、こういう人々の末路は、本人のみならず、県民、国民にとっても不幸を招くのではと思います。勤勉で元気な若者は企業でも引っ張りだこのようですが、そういった信州の若者をいかに育成し、輩出していくのか。最後に知事の御所見をお伺いいたします。
      

◎産業政策監兼産業労働部長(内田雅啓)

 

 人手不足と就労支援について御質問をいただきました。順次お答えをいたします。
 まず、人手不足による倒産状況についてでございます。
 民間調査会社の調査によりますと、今年度の上半期の県内の倒産件数は42件となっております。このうち、従業員の離職などを要因とした人手不足関連倒産は2件で、昨年同期と同数となっております。
 負債総額については、2件の合計で3億8,300万円となっておりまして、昨年度同期と比較いたしますと1億6,300万円の増加となってございます。業種については、製造業、サービス業がそれぞれ1件でございます。
 次に、就業促進・働き方改革戦略会議の成果等でございます。
 県内産業における人手不足などが喫緊の課題となっていることから、就業促進及び働き方改革を進めるため、4月に産学官労が連携をして長野県就業促進・働き方改革戦略会議を立ち上げ、全体会議のほか、地域会議と産業分野別会議を設置し、議論をしてまいりました。
 会議では、若者の県内の就業促進が最重要であり取り組みを強化すべきといった意見や、女性、高齢者、障害者は就業の余地が大きく一層の就業支援が必要という意見ですとか、企業間、季節間の人材交流を推進する必要があるなどの意見が出されております。
 これらの御意見をもとに、短期間での効果が期待できる取り組みとして、大学生等と企業のインターンシップマッチングフェアの県内外での開催や、企業間の人材交流を支援する体制の構築などを検討しているところでございます。
 また、戦略会議の議論を踏まえ、年度内には当面の取り組み方針を策定いたしまして、構成団体等と役割分担をしながら速やかに実施してまいります。
 なお、人口減少社会の人手不足の解消は中長期的に継続して取り組む必要があることから、将来を見据えたキャリア教育の推進や魅力的なまちづくりなどについても取り組んでまいることとしております。
 次に、業種や雇用形態による人手不足、離職率の状況でございます。
 長野労働局によりますと、県内の10月の業種別有効求人倍率は、警備関係の職業が10.11倍、建築・土木技術者が8.80倍、建設・採掘作業が5.25倍、介護、調理、接客等のサービスの職業が3.57倍などとなっておりまして、これらの分野の人手不足感が強まってございます。
 それから、雇用形態別では、パートタイム労働者が1.75倍、一般労働者が1.82倍となっております。
 また、厚生労働省の平成29年雇用動向調査によりますと、県内の離職率は14.9%となってございまして、業種別では、高いほうから、宿泊業、飲食サービス業の44.9%、生活関連サービス業、娯楽業の37.9%、不動産業、物品賃貸業の31.5%の順となってございます。
 雇用形態別は全国の数値しかございませんが、パートタイム労働者で25.5%、一般労働者で11.6%となってございまして、パートタイム労働者の離職率がやはり高くなっております。
 独立行政法人労働政策研究・研修機構が行った若者の離職理由に関する調査では、仕事上のストレス、長時間労働などが理由の上位となってございまして、働き方改革により職場環境を改善することが、人手不足対策だけでなく離職防止の観点からも有効だと考えられまして、県では、関係団体と連携をして、長時間労働の是正、職場環境の向上に取り組んできたところでございます。
 このほか、介護分野では、人材の確保定着を目的に県が実施した信州介護人材誘致・定着事業で平成29年度は目標の8割に当たる80人の直接雇用を達成するなど一定の成果があらわれております。
 また、観光分野では、慢性的な人手不足に対処するため、今年度から観光機構にインターンシップ推進員を配置してきめ細やかなマッチングを行うとともに、そこで見えてきた課題をもとに個々の事業者の働き方改革を推進していくこととしております。
 今後も引き続き就業促進・働き方改革戦略会議等におきまして関係団体等から御意見をお聞きし、各業種の状況に応じた人材確保や離職防止に関する有効な対策を講じてまいります。
 次に、人手不足でも賃金が上がらないことに対する見解等でございます。
 平成30年に県が実施いたしました春季賃上げ要求・妥結状況調査結果では、平均妥結額は前年同期と比べ508円増加し、4,508円、夏季一時金要求・妥結状況調査結果では、平均妥結額は前年同期から2万9,226円増加し、49万8,868円と非常に高い水準となりました。
 しかしながら、景気の回復基調により企業収益は増加しているものの、内部留保や設備投資が優先され、労働分配率の低迷している状況がうかがわれております。
 このため、政府は経済界へ賃上げの要請を実施してきており、経団連も会員企業に賃上げを求めるなど、政財界を挙げて取り組まれておりますが、個人消費を強く押し上げるには至っていないと認識をしてございます。
 人材確保定着のためにも、賃金など処遇の充実は重要であると考えておりまして、県といたしましても、企業経営や企業の人材確保に対する支援、地域別最低賃金改定額の周知など、賃上げにつながる取り組みについて引き続き経済団体や労働団体の皆様と連携をしながら進めてまいります。
 次に、生産年齢人口の減少と労働力の確保ですが、県内の生産年齢人口は、2015年には120万人でありましたが、2060年には84万人にまで減少すると見込まれており、持続的に労働力を確保するためには労働者の健康維持は重要な要素の一つと考えてございます。
 労働者が健康を維持するためには、まず社会に出る前の教育段階で健全な心身を育み、みずからの力で生き方を選択できる能力を身につけるキャリア教育の取り組みが重要でございます。また、就職後は、適正な労働時間や休暇取得のしやすさなどの労働環境が健康に大きく影響しているということから、長時間労働の是正やワーク・ライフ・バランスを保つことなどが労働者の心身の健康を維持する上で大切な要素だと考えております。
 このため、学校のみならず、家庭や地域、産業界などと一体となってキャリア教育を推進するとともに、仕事と家庭の両立ができる働き方を目指す職場いきいきアドバンスカンパニー認証制度等に取り組んでおりまして、今後とも関係機関と連携して働き方改革を推進してまいります。
 最後に、ニートなど就労が困難な方々への支援についてでございます。
 平成27年の国勢調査によれば、県内における15歳から34歳の非労働力人口のうち家事も通学もしていないいわゆるニートと呼ばれる方は、同年代人口の約1.7%に当たる6,374人おられます。県内では、ニートやひきこもり、不登校、発達障害などの困難を抱える若者の自信回復や社会的自立を目指して、教育、医療、保健、福祉、労働などの関係団体が連携する子ども・若者サポートネットを県内4ブロックに設置をして支援を行っているところでございます。
 こういった取り組みにより自信を回復し、就労を希望する、就職したいという若者に対しては、労働局が設置する地域若者サポートステーションですとか県のジョブカフェ信州が就労支援を行っているところでございます。地域若者サポートステーションにおきましては、就職に向けた支援計画を作成し、コミュニケーション訓練や職場見学、職場体験プログラムの実施など本人の状況に応じて支援をしているところでございます。また、ジョブカフェ信州では、職業の選択、職業生活設計や職業能力の向上に関する相談、就業支援セミナー等の支援を行っておりまして、平成29年度におきましては、利用者のうち約900人が就職に至っております。
 なお、支援を望まない若者への対応がやはり課題であるというふうに認識をしておりまして、関係機関の連携によりその実態把握に努め、若者の社会的自立や就労支援をしてまいる所存でございます。
 以上でございます。
      

◎知事(阿部守一)

 

 人手不足と就労支援についてという一連の御質問の中で、私には勤勉で元気な若者の育成、輩出についての所見という御質問をいただきました。
 県政の中におきまして、今、この就業促進、働き方改革は最も重要な課題だというふうに思っております。これは、一人一人の若者を含む県民の皆様方がやりがいを持って暮らしていける社会をつくる上でも、そして、長野県の産業が持続可能に発展をしていく上でも極めて重要な課題だというふうに思っております。
 そういう中で、若い人たちが職業に対してしっかりモチベーションを持って、意欲を持って働いていただくような環境をつくっていくということは大変重要だというふうに思っております。これは、多くの若者たちがまず将来に向けて自分が働くことをイメージして、そして希望を持てるようにしていくということがまず大事だと思っています。
 今、学校現場におきましても、職場体験、就業体験活動といったキャリア教育に力を入れて取り組みを始めています。こうしたことを通じて、自分が生き生きと働くイメージを多くの子供たちがしっかり身につけてもらうということがまずは大変重要なことだというふうに思っております。
 また、さまざまな困難、課題を抱えている子供たちもふえています。そうした子供たちに、働くことによってすぐ夢を見てくれということは非常に難しい部分もございます。
 今、学校だけではなく、福祉あるいは就労などさまざまな関係機関をつないで子供や家庭を支援するネットワークをつくっていこうということで検討を行っております。これまでも、県として、困難を有する若者の自立の支援を行っている民間団体に対する支援であったり、あるいは生活就労支援センター「まいさぽ」における就労相談に応じるなど、自立支援に向けた取り組みを行っておりますけれども、これまで以上に関係機関の連携をしっかりとることによって、なかなか一歩を踏み出せない、そういう若者が少しでも就労に近づけるようにしっかり応援をしていきたいというふうに思っています。
 また、今我々は経済界の皆さんと一緒に働き方改革に取り組んでおりますけれども、さまざまな困難を抱えている方々にとって、通常の勤務形態はなかなか働きづらいという場合もございます。そういう意味では、これは、単に残業を減らす、勤務時間を減らすというような形の働き方改革だけではなくて、多様な働き方を世の中に浸透させていく、そうしたことを通じて一人でも多くの若者が希望を持って、そして自分の能力を最大限発揮することができるような環境をつくっていきたいというふうに思っております。
 こうしたことを進める上では県行政だけではできない部分がたくさんございます。教育関係者、あるいは経済界、産業界の皆様方、さらにはこうした幅広い若者を支援しているNPOの皆様とも力を合わせて取り組んでいきたいというふうに考えております。
 以上でございます。
      

◆依田明善

 

 それぞれに御答弁をいただきました。
 部長や知事がおっしゃられるとおり、健康増進、労働教育、就労支援、職場環境の整備、そして賃金アップ、この五つの点が充実すれば労働者の意識も大きく変わると思います。この問題は、県民一人一人に関係することですので、お互いに力を合わせて解決していければと思います。
 今から30年ほど前、「24時間戦えますか」という企業戦士をたたえたコマーシャルがはやりました。実際にはむちゃな話ですが、当時は高給取りの人々が多く、働く分だけ収入がふえたという達成感を実感できた時代でしたので、仕事に対するモチベーションが高かったことは事実だと思います。
 ところが、今や、ニート70万人、ひきこもり70万人、それ以外の無業者が80万人、推定合計で約220万人とも言われております。その中において、せめてその5割の日本人が農林漁業や建設業を初めさまざまな職場で元気に働けるようになれば人手不足はかなり解消するはずだと思います。
 日本において、自国の労働者はまさに国力そのものだと思います。もっと真剣に寄り添い、無業者を一人でもなくしていく、ぜひともそのような流れが今後加速し、生産性も向上させ、再び日本経済がよみがえることを心より願いまして、一切の質問といたします。
 ありがとうございました。