平成30年2月定例県議会 発言内容(花岡賢一議員)
◆花岡賢一
3年前の11月定例会で民泊についての問題提起をしましたが、変化を重ねる社会情勢に法律が追いついていないことは多々あるとして、いつの時代も行政は常に変化に対応を求められることは当然の責務であります。
いよいよ6月に民泊新法の施行となる今、本定例会において長野県住宅宿泊事業の適正な実施に関する条例案が示されております。爆発的に増加を重ねる外国人観光客に対応するべく、一般住宅やマンション、そうしたものを開放し、宿泊施設として展開していくその施策が経済的に大きな歯車となり得るのか、また犯罪の温床と成り下がってしまうのか、今このとき、行政としてのあり方が問われています。
これだけ爆発的に展開する背景には、インターネット環境の整備と端末操作の手軽さが挙げられますが、手軽さゆえに実態の把握が困難なケースが多い理由に、仲介サイトがネット上で展開されていることがあります。条例案の提出に際して実態調査を重ねてきた過程において、ネットアクセス以外での民泊の展開があったのかお伺いいたします。
また、昨日、山口議員が民泊施設での殺人事件について触れられていましたが、借り手側の問題点が注目されておりますが、貸す側、いわゆるホスト側においても、その手軽さゆえの広がりの速さを見せております。
今回の条例案にも、ホスト側の対策として数多くの施策が盛り込まれていますが、届け出書類の提出を住宅宿泊事業者の責務としていますが、それは長野県独自の内容として見ることができます。そこで、多くのネットユーザーが利用する際の判断基準の一つとして、口コミ、いわゆるレビューのようなものは、届け出書類の受理の際に判断の基準となり得るのでしょうか。また、信用度を担保するための考えはあるのでしょうか。
条例の骨子案の中には、優良事業者認定制度の創設という文言が記載されておりましたが、今回提出された条例案には盛り込まれていません。一見削除されてしまったかのように見えますが、その経過をお伺いいたします。
また、条例案には、周辺地域に説明し、その概要を記載した書面を提出するとあります。表現が抽象的であるようにとれますが、実施する詳細な規定はあるのでしょうか。
また、今月下旬に開くとされる長野県住宅宿泊事業評価委員会の委員の構成についての考えをあわせお伺いいたします。
マンション民泊についてお伺いいたします。
マンションの管理組合が、その利用規約で民泊利用の規制を設けているケースがあります。一般社団法人マンション管理業協会では、8割が導入し、民泊を禁止していくという報道がありましたが、県内の動向をどのように捉えているのでしょうか。
市町村との連携について、実態に合った対応という答えがありましたが、本格実施されていない中での実態はどのようなものであるのでしょうか。その実態は、宿泊施設が少ないといった状況を指すものでは決してなく、むしろ市町村で人員を割くことが不可能な自治体もあることと考えますが、どのように連携を図っていくのでしょうか。
仲介サイト、Airbnbでは、全世界で200人以上の人がインターネットの監視を行っているとされておりますが、県としてネット上の対策はどのように進めていかれるのでしょうか。
以上、健康福祉部長にお伺いいたします。
最後に、今回の条例案で示された内容である程度の安全面への対策は講じられているものと考えますが、民泊新法では、物件所有者は住宅宿泊事業者として都道府県知事に届け出を、物件管理者は住宅宿泊管理業者に管理を委託する場合には国土交通大臣に登録を、仲介サイトなどのプラットフォームについては住宅宿泊仲介業者として観光庁長官に登録を行うこととして、三つの役割分担により匿名性をより薄くさせる内容でありますが、申請せずに行っている違法民泊展開者への対応はどのようにしていくのでしょうか。
また、3年後に予定される法律の見直しに対してはどのように対応されるのか、知事にお伺いいたします。
住宅宿泊事業についての御質問に順次お答えをさせていただきます。
まず初めに、民泊における仲介サイトを通じない予約の可能性についてのお尋ねがございました。
現状では、より多くの宿泊希望者に物件の存在を知ってもらい、宿泊につなげるために、大多数が仲介サイトを利用しているのではないかと考えております。仲介サイトの利用以外の予約方法としては、過去に利用した宿泊客が再度利用する場合に電話で直接予約する場合などが考えられると考えております。
次に、事業実施方針の位置づけと事業者の信用度の担保についてお尋ねがありました。
今回の条例案では、第3条において、住宅宿泊事業を行おうとする者は、住宅宿泊管理業務の具体的な実施方法や施設の衛生管理、鍵の受け渡し方法等について、その実施方針を定め、届け出の際に添付することを規定しております。
お話にあったいわゆるレビューについては、客観性の確保の観点から、届け出の受理に際し考慮することは難しいと考えております。
なお、条例の骨子案の中で位置づけていた優良事業者認定制度については、住宅宿泊事業を周辺地域に配慮したより適正なものとするための施策としては、認定制度に限らずさまざまな取り組みが考えられるため、条例においてはより包括的な記載としたところでございます。条例を踏まえ、住宅宿泊事業者における優良な管理を裏づけ、一定の基準を満たしている場合は、認定、公表する制度を構築することにより、事業者の信用度を担保する仕組みについても検討してまいります。
周辺地域への説明に関する条例上の記載についてお尋ねがありました。
本条例案においては、事業の届け出を行おうとする事業者は、事業を営もうとする住宅の周辺地域の住民に対し、事業を営む旨を事前に説明しなければならないと規定をしております。具体的な説明範囲や対象者等については、現在作成を進めております条例の施行規則等に規定する予定であります。
次に、評価委員会の人員構成の考え方についてであります。
長野県住宅宿泊事業評価委員会については、5名の有識者から構成し、その内訳は、法律分野2名、学識経験者としてまちづくり、環境工学、公衆衛生の分野からそれぞれ1名の方に委員就任をお願いする予定であります。住宅宿泊事業の制限の合理性などを判断するに当たり、それぞれの専門分野から有益な御意見をいただけるものと考えております。
マンションにおける民泊禁止の動向については、2月28日付の記事において、マンション管理業協会の会員企業が業務を受託しているマンション管理組合のうち、8割を超える組合が民泊を禁止する方針であるとの調査結果が出ていることは承知しているところです。大都市圏と比較してマンションの数が少ないと思われる本県においても、騒音の発生やごみ出しの問題など、生活環境の悪化への懸念から、同様の傾向があるものと推測しております。
監視指導体制に関するお尋ねがございました。
先日、荒井議員に対してお答えした、緊急時においても対応が可能な体制整備を検討する上で考慮する実態とは、住宅宿泊事業が開始された後に発生する課題の数や課題の内容などの状況を言うものであり、実施後の状況に合わせて対応体制をさらに検討するという趣旨でございます。
また、住宅宿泊事業において、施設の衛生上の措置や宿泊者の安全確保、苦情への対応等に関して監督権を有しているのは県であり、事業が適正に運営されるよう事業者に対し指導を行ってまいります。その際、苦情の内容には、騒音やごみ処理など市町村が執行する事務に深く関係するものがあると考えられるため、市町村に対し住民から情報が寄せられた場合は、県に報告するとともに、必要に応じて現地確認に同行いただくなど、市町村の協力も得ながら対応してまいります。
最後に、民泊に関するインターネット上の監視については、県としては、これまでインターネット上に展開されるサイトを保健福祉事務所の職員が検索し、約400件の事業実施箇所を推定した上で現地確認を行い、事業者に対する必要な指導を行ってきたところです。
住宅宿泊事業の開始後に無届けで民泊サービスを行う者があることも想定されるため、このインターネット上の民泊に関する情報の検索については、今後も本庁の職員を中心に継続していく予定としております。
以上であります。
違法民泊への対応、そして3年後に予定されております法律の見直しへの対応という御質問でございます。
この住宅宿泊事業法は、民泊サービスの適正化に留意して新しい枠組みをつくるということを目的に制定されたわけであります。したがいまして、今、各種のルールがないわけでありますけれども、まずはこの新しい法令の仕組みの周知徹底を図ることによって、このルールにのっとった運用をしてもらうということが重要だというふうに思っております。
その一方で、この法施行後、いわゆる違法な民泊営業があったり、あるいは今回私どもが条例で定める期間の制限を超えるような事業者が出たような場合については、これは、県の役割として、法令に基づいて適正な指導を行っていかなければいけないというふうに思っております。特に悪質な場合には、警察に対する告発も含めて厳正に対応していきたいと考えております。
また、住宅宿泊事業法附則におきまして、施行から3年経過段階で必要に応じて見直すという旨を規定をしていただいているところであります。この住宅宿泊事業法制定に当たりましてもさまざまな議論があったわけでありまして、私ども長野県としても、県民の皆様方の暮らしへの影響であったり、あるいは観光の振興や地域の活性化にどのように貢献してもらう制度になっているのかといったようなことも含めて、十分実施状況を把握しなければいけないというふうに思います。その上で、必要な検証を行い、県として、必要があれば国に対して問題提起をする等必要な対応を行っていきたいと考えております。
以上です。
ネット上の監視についてでございますけれども、400件を監視してきた、それを継続すると。これは、継続するのではなくて、むしろ監視を強化していかなければいけないことだと思いますので、その辺もお取り組みを考えていただきたいなというふうに思うところでございます。
私が以前民泊の問題を取り上げたときには、今回望月議員も取り上げられておりましたけれども、テロリストのアジトとなり得ないかを心配しての提案でした。犯罪の温床とならぬように格段の取り組みと、その柔軟性に期待すると同時に、創業から10年たったAirbnbは主にバックパッカー層が対象、いわゆる安さ重視のローエンドからハイエンドへの展開も図っていくようであります。高級層、ラグジュアリー層へのアプローチに関しては、必ず経済に対する起爆剤となり得ますし、外国人観光客の量と同時に質も考慮すれば、高級民泊といった新しい概念も生まれてきます。多くの期待を込めて質問を移ります。
信州型ユニバーサルデザイン構築事業についてお伺いいたします。
現在、長野県で展開されている施策には、多くの「信州型」が見てとれます。この「信州型」と冠をつける施策の狙いは、モデルケースとして信州発の考え方と信州らしさであると捉えておりますが、なぜユニバーサルデザインに「信州型」をつけたのでしょうか。その意図として、ユニバーサルデザインを信州から発信する施策であるのでしょうか。また、施策として組み立てた経緯についてもお伺いいたします。
ユニバーサルデザインの原点に立ち返り、誰にでも使いやすい構造と照らし合わせると、誰にでも理解しやすい教育ととることができますが、全ての子供にわかりやすいように工夫されたユニバーサルデザイン教育という概念は確かに存在しています。参考にされたものがあればお示しください。
施策の中に、「県下各校で大事にしている学習環境、学習規律、単元や題材のまとまり、学習活動、子供とのかかわり等の観点から具体化し、「信州型ユニバーサルデザイン」としてまとめる。」とありますが、これだけ個の時代と言われている中、なぜ単一的にまとめるのでしょうか。
以上、教育長にお伺いさせていただきます。
今回のしあわせ信州創造プラン2.0案で、子供から大人まで全ての県民が主体的に学び、個々の持つ能力を社会の中で発揮している学びの県を目指し、政策を推進していくとの考えには非常に賛同するものではありますが、阿部知事自身が信州教育は財産であるとおっしゃるとおり、長野県が培ってきた教育、すなわち長野県教育委員会が取り組まれてきたことは財産であります。総合計画でうたう学びの一番の肝たる教育が物すごく前のめりであるように感じます。むしろ財産としてであるのならば、どっしりと構えることが重要であると私は考えます。
インクルーシブ教育が提唱される中で、信州型ユニバーサルデザインとしてまとめる単一的に行う内容ととれることに対して、知事の御所見をお伺いさせていただきます。
ここまでごねを申し上げてまいりましたが、この問題の最後に、長年教職に携わり、県教育行政の第一線におられた菅沼教育次長に、後輩教員に対してアドバイスをいただきたくお願いいたします。
信州型ユニバーサルデザイン構築事業についてのお尋ねでございます。
スチューデントファーストの立場に立って、子供たちに対して全ての学校の全ての授業で質の高い授業を実現するためには、授業づくりに係るすぐれた取り組みを横展開していくことが不可欠だというふうに思っています。
これからの学びにおいては、とりわけ次の2点を重視したすぐれた取り組みが求められると思っております。
一つは、教師主導の知識伝達型の学びから、思考力、表現力、判断力を育む探究的な学びへという学びの質の転換であります。もう一つは、発達障害の子供たちが増加しているわけですけれども、そうしたさまざまな発達特性を持つ子供たちがともに学ぶ中で質の高い授業を実現するという特別支援教育の視点であります。これらの点について、現場の知恵を結集した授業づくりに係るすぐれた取り組みを共有し、実践を徹底し、そして共通基盤化することによって新しい時代の質の高い学びを全ての子供たちに保障しようというのがこの取り組みの狙いでございます。
信州型の意味ですとか、経緯で参考したものというお尋ねでございます。
今申し上げましたとおり、ユニバーサルデザインという言葉に込めた意味は、スチューデントファーストの立場に立って、全ての子供たちにとって質の高い授業をつくり上げていこうということであります。そして、信州型と名づけた理由は、信州の教育現場の知恵を結集する、総動員するという思いを込めたものです。信州から発信するというよりは、信州の全ての子供たちのためにということであります。
経緯といたしましては、今年度、学校訪問で現場の学校長の皆さんと懇談を重ねる中で、ひとしく問題意識を共有したものであります。参考にしたという意味でありますけれども、参考といいますか、この特別支援教育の視点が不可欠であるという意味からも、ユニバーサルデザインとしたところであります。
個の時代にあって、なぜ単一的かという話であります。
授業をユニバーサルデザイン化することの狙いは、全ての子供たちがわかる、できる授業づくりの共通基盤をつくることです。子供たちにとっての学びにくさ、わかりにくさについて、どの教科にも共通した学び方や学習過程をそろえることで解決できることもあります。
例えば、子供たちが見通しを持って取り組める授業にするために、1時間の授業の流れや時間配分をあらかじめ提示しておく。授業に集中して取り組めるように黒板の周囲の掲示物を整理し、色遣いを工夫するなどということを共通基盤化するだけでも、子供たちの学びやすさは格段に向上いたします。
信州型ユニバーサルデザインは、コンピューターに例えて言えば、いわばOSです。共通のOSであることによって、子供たちは安心して学び、また学校を異動する教員にとってもちゅうちょなく授業づくりに入っていくことができます。しかし、一方で、OSがどんなにすぐれていてもOS以上ではありません。信州型ユニバーサルデザインという共通基盤の上に立って、学校独自、教員独自の創意工夫による授業づくりを行うことによって、さらに質の高い授業が実現できるというふうに考えております。
以上であります。
信州型ユニバーサルデザインについてどう考えるかという御質問でございます。
今、教育長が答弁申し上げたように、これからの学校教育は、これまでと同様に取り組むべきことと、それから大きく変えていかなければいけない点と両面あるというふうに思っております。そういう中で、この学びの質の転換、そして特別支援教育の視点を入れていくということは大変重要なことだというふうに思っております。
私も、以前、発達支援が必要な子供たちに対する教授法を研究している先生方のグループの取り組みを拝見させていただいたことがありますが、例えば、1回の指示で複数のことを求めないといったような単純なことでありますが、確かに私も、そういう授業を聞いていると、これは子供たちのみならず我々大人が人に対してものを頼むときもそういう観点が重要だなというふうに思いました。これは、特別支援、発達障害の子供たちだけではなくて、普通の子供たちも、あるいは我々大人にとっても実は重要ではないかというふうにその際感じたところであります。
教育委員会が今回取り組もうとしているのは、現場の知恵を集めて、常にバージョンアップしていくという観点で取り組んでいこうということでありますので、私は決してトップダウンで画一的なものをつくっていくというようなものではないというふうに認識をしております。教育委員会においては、現場の多様な知恵は尊重してもらいながら、しかし、全体で共通した視点で改善、改革をしていくところはしっかりと改革をしていってもらいたいというふうに思います。引き続き、教育委員会とはしっかり連携をして学びの県づくりに取り組んでまいりたいと思っております。
以上です。
後輩教員へのアドバイスをという御質問をいただきました。
現在、予測困難な未来に向かって、教育も大きな改革期を迎えています。私が直接かかわってきた高校教育につきましても、新たな学びの推進と県立高校の再編整備計画を一体的に取り組む高校改革を進めているところですが、いよいよ正念場を迎えてきたなという感じを持っています。特に、新たな学びの推進という部分では、県下各地でいろいろな動きが見え始めまして、これからの数年間の頑張り次第で、長野県教育が全国の中でも輝きを示すことができるのではないかという手応えを感じているところです。
しかし、最後の成否を決めるのは学校現場の教員の皆さんです。進行中の改革は、教員の誰もが経験したことのないものでありまして、正解のない、見えない改革であるわけですから、教員の皆さんには、失敗を恐れず、もっと個性を出してチャレンジしていただきたいですし、チャレンジする文化をつくっていただきたいというふうに思っております。
この改革は、高校の再編統合という、ある面痛みも伴う。そのこともやり遂げなければ成功はありません。未来を担う子供たちにどのような学びの場を用意してあげることができるのか、これから地域ごとでの議論が活発化してくるかと思います。議員の皆様方からも、未来志向でさまざまな御意見や御支援をいただければありがたいと思っております。
以上でございます。お世話になりました。
御答弁いただいた内容については理解するところはあるんですけれども、ユニバーサルデザイン、何かもっといい言葉はなかったのかなと思うところは私なりにあります。ちょっと残念なところはありますけれども、思いは一緒ですので、御理解させていただきます。
菅沼教育次長様におかれましては、これから始まる学びの県、そこに向かう本県に対して、また変わらぬアドバイスをいただけますようお願いさせていただきます。
農業資産の活用の施策についてお伺いさせていただきます。
佐久市にある五郎兵衛用水は、特に良質な米で知られる五郎兵衛米を育む農業用水路であります。今から380年ほど前に開かれた延長20キロメートルに及ぶ水路は、途中数カ所にトンネルが掘られるなど、高度な土木技術と大量の資金や労働力が投じられた大事業であり、大変に難工事であったことが五郎兵衛記念館に現存する資料からも知ることができます。その後、平成の大改修により、延長13キロメートルの近代的な用水路に生まれ変わり、使われなくなった用水路は五郎兵衛用水跡として昭和58年に長野県史跡に認定されております。昨年の議会でも、歴史的な偉業を伝える劇が「こころのミュージカル」として行われたことをお伝えさせていただきました。
現在、土地改良区と佐久市では、五郎兵衛用水を世界かんがい施設遺産の登録を目指し、世界かんがい排水委員会の日本国内委員会に申請しているところであります。県内では、2016年に安曇野市の拾ケ堰及び茅野市の滝之湯堰、大河原堰の2地区が世界かんがい施設遺産に登録されておりますが、施設の維持管理や地域づくりにどのようなメリットが出てきているのでしょうか。
県では、五郎兵衛用水などの歴史ある農業用水路や棚田などの農業資産を観光資源としても活用し、地域の活性化につなげようとしていますが、どのような取り組みを進めているのでしょうか。農政部長にお伺いさせていただきます。
農業資産の活用への御質問にお答えをいたします。
初めに、世界かんがい施設遺産についてですが、この制度は、建設から100年以上経過し、かんがい農業の発展に貢献したもの、また卓越した技術により建設されたものなど、歴史的、技術的、社会的価値のある施設を認定、登録するものです。
登録されました拾ケ堰では、昨年10月に開催しました松本地域振興局のバスツアーや安曇野市のウオーキングイベントで、いずれも募集定員を上回る盛り上がりを見せるとともに、小学生を対象とした社会学習の参加校がふえるなど、施設の歴史や役割に対する理解が深まっているとのことでございます。
また、滝之湯堰、大河原堰では、本年2月に諏訪地域振興局と茅野市観光まちづくり協議会がバスツアーを開催いたしました。参加者からは、農業用水路の重要性や地域への貢献、また維持管理の苦労を知ることができ、大変有意義であったというような感想をいただいております。
遺産登録を契機に、地域の貴重な財産として、水路の開削やその後の集落の形成、また地域の繁栄などの歴史を学ぶ機運が高まるとともに、観光資源としての活用が始まるなど地域づくりへの貢献が期待されております。
次に、農業資産の観光活用についてですが、五郎兵衛用水など県内の疎水、ため池、棚田等の農業資産は、先人たちによる開削の歴史や物語、水を引く技術や工夫があり、連綿と守り続けてきた歴史により現在の姿を残し、農業・農村を支えております。さらに、農業資産が織りなす美しい景観は、観光資源として活用できる大きな可能性がございます。本年度、農業資産をめぐる観光ルートを旅行業者に提案しましたところ、すぐにでも商品化したいとの話も出るなど大きな反響があったところでございます。
平成30年度は、観光部と連携した旅行業者への提案を引き続き実施するとともに、県下各地の一度は訪れたい農業資産を各種媒体を活用して発信してまいります。また、市町村や土地改良区と連携し、地域の方々や観光客を案内し、魅力を伝える水の語り部を育成してまいりたいと考えております。農業資産の観光資源としての活用により、農業振興にとどまらない地域活性化に寄与してまいりたいと考えております。
以上でございます。
御答弁いただきましたが、農業と観光、それが多くの地域で連携されることを祈っています。
佐久のすばらしい風景が思い描かれるような質問をいたしましたけれども、私は、佐久で育ち、県議会議員として送っていただく中で、右も左もわからぬ中、地元の先輩議員さんから、建設行政について造詣が深いのは油井均さんであるので頼っていいよと助言を受けてきました。
昨日の依田議員の質問でも触れられていた戌の満水を起源とする8月1日、その日には必ずお墓参りを行う同郷の先輩、油井均建設部長より、長年建設行政に携わってこられました立場として、これからの佐久地域と長野県の発展につきまして御所見をお伺いさせていただきまして、一切の質問とさせていただきます。
佐久地域の発展と長野県の発展に関するお尋ねでございます。
私が入庁した昭和50年代後半は、県下各地で梅雨前線豪雨、台風、そして冬場の凍上などによる災害が続いた時期であり、私も県職員になってから半年ほどで1億円近い災害復旧現場を任され、右も左もわからぬまま担当した記憶がございます。
その後、順調な経済成長の中で、県内のインフラは飛躍的に整備が進み、県内の主要な都市は高速道路で結ばれ、県土の一体化が図られるとともに、長野オリンピックを契機に新幹線も整備されてまいりました。特に、私の生まれ育った佐久地域は首都圏にも近く、高速交通網や幹線道路の整備も進み、インフラを取り巻く状況は大きく変化しました。この地域は、さらに住みやすい地域として、今後大いに発展していく可能性を秘めていると思っております。
さて、バブル崩壊後の失われた20年と呼ばれる経済の低迷や社会資本整備に対する逆風などにより、長野オリンピック以降予算規模は縮小し、そして、いまや少子・高齢化、人口減少の時代へと突入しております。
こうした中で、建設行政に求められているのは、多様化するニーズに応え、その時々に合った社会資本整備を行いつつも、未来にわたるこの国の国土のあり方、そして県土の姿を大局的に捉え、県民の皆様が人生を楽しみながらも幸せに暮らせる信州への道筋をつけていくことであると思っております。
そのような意味において、私どもは、ただ単に県民の安全、安心を守るインフラの整備や維持管理をするのではなく、人口減少社会における地域でのまちづくりや、どうしたら住みやすいコミュニティーをつくれるのか、あるいは観光振興につながるインフラをどう整備すべきかなどの諸課題に対し、グローバルな視野と高い見地からの技術力をもって取り組んでいかなければならないものと考えております。幸いなことに、建設部にはこうした考えを共有する優秀なスタッフが数多くおり、必ずや実現に向けて動いていってくれるものと思っており、県土の未来は明るいと私は思っております。
県議会議員の皆様方におかれましては、大所高所からの引き続きの御指導、御示唆をいただきますようお願いをいたしまして、私からの県土発展への思いとさせていただきます。ありがとうございました。