平成30年9月定例県議会 発言内容(下沢順一郎議員)
◆下沢順一郎
災害対策についてお聞きします。
先日の台風24号は、中部地方に大規模停電を引き起こすなど、傷跡を残し、日本列島を縦断していきました。30日に予定されていた松本マラソンも、各地のイベントと同様に、台風の影響を受けて中止となりました。
また、25号も日本列島に影響を与えそうな動きをしており、この半年は災害列島と言われるような連続した大規模災害に見舞われた年となりました。ことしの連続した災害で被災された方々に対して心よりお見舞いを申し上げます。
震度7を観測した9月6日の北海道胆振東部地震は、9月18日現在で、死者41名、けが人も650名以上という大災害でした。北海道の電力不足の影響は長期化しましたが、実は、この地震の直前の9月4日から5日の台風21号の暴風雨や高潮でも大きな被害が出ていて、大災害に連続して見舞われるという異例の事態でした。9月上旬に起きたこの台風と地震ばかりでなく、6月18日の大阪府北部地震、7月6日から8日の西日本豪雨は、連続して西日本に集中して災害をもたらし、それらの災害への緊急対応が一段落する間もなく、次々と災害が発生してしまいました。ことしの夏の災害からの教訓として、以前から指摘されていた連続して災害が起きるリスクが現実となってあらわれていることに今後十分注意を払うべきではないかと思います。
そのような中、ことしの夏の豪雨など異常気象や台風、地震による大災害など、ことしの夏の一連の災害を知事はどのように受けとめているのかお聞きします。
また、防災・減災としての視点で編成された今回の補正予算について、編成上、留意された点、特徴などについてあわせて知事の見解をお聞きします。
連続する災害からの教訓、県民が学び、備えるための周知方法の工夫や防災体制の再確認などについて危機管理部長にお聞きします。
異常気象が続き記録ずくめの夏になった、気象庁の担当者はこの夏の天気をこう総括しています。7月9日に気象庁が平成30年7月豪雨と命名したいわゆる西日本豪雨は、7月5日から8日にかけて梅雨前線が西日本付近に停滞していました。そこに大量の湿った空気が流れ込んだため大雨が連日続き、特に、岡山県倉敷市真備町では8カ所で川の堤防が決壊し、町全体の3割が浸水したのです。この豪雨では、西日本を中心に、河川の氾濫や土砂崩れの被害が目立った広島、岡山、愛媛の3県を中心に、15府県で226人が死亡するという平成最悪の甚大な災害となりました。地球温暖化が進むと気象現象が激しくなると指摘され、国や自治体は大規模な水害対策を進めてきましたが、この豪雨により、その加速を強く促されることになりました。
また、そのような中で、長野県は、広島県からの派遣要請を受けて、広島県尾道市にチームながのを派遣しています。派遣されたチームながのの職員の災害現場で培ったノウハウは、今後の長野県の災害対応に役立つことになります。
そこで、派遣された職員が災害現場で感じたこと、そこから見えてきた長野県防災の課題、それらの課題に対して今後どのように取り組んでいくつもりなのかについて危機管理部長にお聞きします。
ことしのような記録ずくめの災害に対して、行政としては備えを一段と強化し、警戒を怠らないことが重要であります。災害は、多くの場合、その発生を予測できず、しかも、防災にかかわる関係機関は多岐にわたっていることから、防災体制の実効性を確認、検証し、多くの関係職員に防災業務を習得させるためには常日ごろからの実践的な防災訓練が不可欠と言われています。
そこで、ことしの総合防災訓練は、10月21日、塩尻市を主会場として行われるということですが、大規模地震等を想定し、松本空港を利用し、自衛隊も参加する、より実践的な訓練を行うとされています。以前より実践的な訓練を提案させていただいた者としては、今回の導入について大いに賛同するものです。
そこで、その訓練内容について確認をさせていただくとともに、広範囲な停電による影響も鑑みた訓練もあわせて導入すべきと考えるものですが、危機管理部長にお聞きいたします。
災害のたびに、被災者の通信手段である携帯、スマホなどへの充電が問題となっています。国は、太陽光発電を持つ家庭では、スイッチの入れかえで停電時にも太陽光パネルの電気を活用できると発信したようですが、太陽光パネルが設置されていない家庭では利用できません。
そこで、産業用の太陽光発電設備を非常用電源として活用することはできないでしょうか。住民が助かるだけでなく、発電事業者も地域貢献できると考えます。
また、あらかじめ発電事業者と地元自治会で非常時の協定を結ぶことによって、災害時の非常用電源の担保の実効性がより高められると考えますが、いかがか。環境部長にお聞きいたします。
長野県再犯防止推進計画策定についてお聞きします。
政府は、平成25年12月、「世界一安全な日本」創造戦略を閣議決定し、平成26年12月には、宣言、「犯罪に戻らない・戻さない~立ち直りをみんなで支える明るい社会へ~」を決定し、「2020年までに、犯罪や非行をした者の事情を理解した上で雇用している企業の数を現在の3倍にする。」、「2020年までに帰るべき場所がないまま刑務所から社会に戻る者の数を3割以上減少させる。」という数値目標を設定しました。平成28年12月、再犯の防止等に関する国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、総合的かつ計画的に推進していく基本事項を示した再犯の防止等の推進に関する法律を制定し、それらを受けて、県は平成30年度に再犯防止推進計画の策定をすることになりました。
そこで、保護司の方々の御意見を踏まえ、推進計画についてお聞きします。
犯罪を犯した人の更生保護を地域で支えている長野県保護司会、更生保護協力雇用主会、長野県BBS連盟等民間ボランティア団体の取り組みを県としてどう評価しているかお聞きします。
再犯防止の取り組みは、国、地方公共団体、民間の団体等の関係者との緊密な連携協力が必要であると考えますが、県でもどのようにネットワークを構築し、具体的に取り組んでいくのか、その方策についてお聞きします。
県は、平成30年度に再犯防止推進計画を策定するとされています。計画の冒頭には、全ての県民が犯罪や非行の防止と罪を犯した人々の更生について理解を深め、犯罪や非行のない明るい社会を築こうとの県の強いメッセージを打ち出すことが必要と考えますが、いかがか。以上、4点を健康福祉部長にお聞きします。
文部科学省より平成29年12月20日付で再犯防止推進計画の周知依頼と推進協力の通達が出ています。そこで、教育長の対応方針をお聞きします。
下沢議員からの御質問2点にお答えを申し上げます。
まず、ことしの夏の豪雨など異常気象、台風、地震による大災害に対してどう受けとめているかという御質問でございます。
ことしの夏は、大阪府北部地震、7月豪雨災害、北海道胆振東部地震、相次ぐ台風など、全国的にも連続して災害が発生したところであり、本県でも被害が出ているところであります。
改めまして、災害対策の重要性ということをしっかり認識をした上で、市町村初め関係機関の皆様方とも力を合わせて、ソフト、ハード両面での対応を進めていきたいというふうに考えております。
北海道胆振東部地震におきましては、直前の台風21号の影響による広範囲にわたる土砂災害、あるいは大規模停電によります社会的混乱も発生いたしました。こうした状況を踏まえて、本県でもこうした事態が起こったらどうなるだろうかということを部局長と一緒に考える場をつくらせていただいて課題を出し合いました。その結果、例えば初動対応における情報発信であったり、あるいは被害の大局的把握の必要性、さらには災害状況の報告についてのタイムスケジュールのルール化など、具体的に私たちが取り組むべき改善点も見えてきております。今後とも、こうした取り組みを継続して行っていきたいというふうに思っております。
他県で発生する災害であっても、私たち長野県で仮に同じような災害が起きたらどうなるかということを常に自分事として捉え、検証、検討を行うことにより、より安全、安心にお暮らしいただけるような長野県づくりに努めていきたいと考えております。
続きまして、補正予算の留意点、特徴という御質問でございます。
今回の補正予算案の編成に当たりましては、今申し上げたような認識も持ちながら防災・減災対策に力を入れていこうということで補正予算を編成させていただきました。被災箇所の復旧はもとより、西日本におきます豪雨災害等を踏まえまして、安全な県土づくりに向けた速やかな防災・減災対策の実施が必要だという考え方から、幾つか具体的な考え方のもとで予算編成いたしました。
例えば、洪水被害防止軽減のための河川内の堆積土や支障木の除去、また、緊急輸送路や避難路等の寸断を未然に防ぐための道路整備、また、農業用水路ののり面崩落によります人家等への被害防止対策、さらには荒廃森林の拡大を防ぐための治山施設の整備、こうしたことを早期かつ集中的に実施するため、防災・減災対策としては過去10年間で最大規模となります41億円余りの県単独公共事業費を計上いたしました。
今後とも、防災・減災対策をしっかり進めることにより、県土の強靱化に取り組んでまいります。
以上でございます。
災害対策につきまして3問御質問いただきました。順次お答えを申し上げたいと思います。
最初に、連続する災害からの教訓、県民が学び、備えるための周知方法の工夫や防災体制の再確認についての御質問でございます。
本年は、大阪府北部地震、7月豪雨災害、北海道胆振東部地震など全国各地で甚大な被害が発生し、例えば北海道胆振東部地震では、住民みずからによる大規模停電への備えの必要性といった教訓が得られました。現在、県民の皆様に向けて、ホームページに、「災害に学び、備える」という特設ページを開設し、県立歴史館と建設部との共同によります過去の災害に学ぶページのほか、防災に関する身近な情報が電子地図で利用できる信州くらしのマップや県政出前講座の紹介を行っております。これら防災や減災に役立つ情報は、地域で活用いただくことにより、さらに防災体制の強化にもつながることから、今後も充実を図りながら、より多くの皆様が学び、備える体制づくりに役立てるよう工夫してまいりたいと考えております。
また、県といたしましても、東日本大震災や熊本地震の教訓から、緊急支援物資の配給などで実績のある小売業者を県防災会議委員として任命をしたり、避難所の運営などの支援を行うNPOに災害対策本部へ参加していただいたりと、民間の皆様との連携体制を構築してまいりました。今後も、被災地における災害対応から得られる教訓をもとに、具体的な対応策を検討し、その結果を県機関初め市町村や地域へ反映させることで防災体制の強化につなげてまいりたいと考えております。
次に、チームながのの派遣職員の経験から見えてきた防災の課題と今後の取り組みについての御質問でございます。
議員御指摘のとおり、平成30年7月豪雨災害で大きな被害を受けた広島県尾道市に対しまして、主に道路やため池の復旧支援を行うために、7月12日から9月2日の間、県及び市町村の土木職員を中心に、延べ258名を派遣いたしました。チームながのは、大規模災害発生時に、被災した都道府県や市区町村に対しまして県及び県内市町村が一体となって職員派遣や物資提供などの支援を行うこととしておりまして、平成28年4月の熊本地震の際には、食料や飲料水、生活用品などの支援物資を送りました。今回、初めての人的支援となりましたけれども、先日、派遣した職員に対しまして、効果的な被災地支援のあり方についてアンケートを実施いたしました。派遣した職員が課題と感じた意見としては、被災地の職員との情報共有の大切さ、異なるシステムを利用する困難さ、土地勘のない災害現場をイメージする難しさなどがありました。これらについては、長野県で大規模災害が発生し支援を受ける側となったときも生かされるものと考えております。
このアンケート結果につきましては、全市町村や県の各部局にも提供するとともに、派遣職員の経験をさまざまな機会を捉え周知し、今後実施していく防災訓練や研修、そして現在策定を進めております長野県広域受援計画に反映させてまいりたいと考えております。
次に、長野県総合防災訓練についての御質問でございます。
今年度の県総合防災訓練は、10月21日に塩尻市の中央スポーツ公園を主会場とし、県、塩尻市、防災関係機関、地域の住民の皆様などの約130団体、2,500人の参加により開催する予定となっております。内容といたしましては、糸魚川―静岡構造線断層帯の地震や山林火災の発生などを想定し、約50種目の訓練を実施いたします。特に、県総合防災訓練で初めてとなる信州まつもと空港での訓練では、塩尻市内で多数の傷病者が発生したとの想定に基づき、空港内に広域医療搬送拠点を設置し、自衛隊、消防及び医療機関の連携により、大型ヘリコプターを初めとする航空搬送力を活用した実践的な医療搬送を行います。
また、送電施設が被災し停電が発生したとの想定に基づき、中部電力などが高圧発電機車や高所作業車を使用して緊急送電訓練を行うこととしております。このほかにも、地域の皆様の御参加により、避難経路におけるブロック塀の点検を行うなど、他県で発生した災害の課題と対応を取り入れ、より実践的な訓練となるよう多くの参加機関と連携し訓練を実施してまいります。
以上でございます。
太陽光発電設備の活用についての御質問でございます。
議員御指摘のとおり、災害時に太陽光発電設備を地域の非常用電源として活用できる体制をあらかじめ整えておくということは大変重要な視点と考えます。
産業用の大規模な太陽光発電設備は、停電時に発電した電気を活用できる自立運転機能を必ずしも備えているわけではございません。しかし、この機能を備えている場合に、災害時にその電気を地域で使っていただくことは、地域に有用な施設として受け入れられるという面で事業者にもメリットがあると考えられます。
県では、太陽光発電施設の設置に当たり、発電事業者と地元自治会が締結する協定書のひな形をお示ししております。今後、そのひな形の中に地域住民が発電施設を非常用電源として使えるという項目を加えていくとともに、市町村、事業者それぞれに、その重要性を周知するなど、災害時に太陽光発電が地域の安全・安心に寄与するものとなるよう取り組んでまいります。
3点につきまして順次お答え申し上げます。
長野県保護司会等の取り組みの評価についてでございます。
犯罪をした人が再び社会の一員として自立更生するためには、立ち直りへの意欲を持つ人が排除されたり孤立することがないよう、地域社会の理解と協力が不可欠であると考えております。
このためには、犯罪をした人たちを地域社会へとつないでくれる人たちが必要です。県内では、970名の方が保護司として法務大臣から委嘱され、保護観察を受けている人を個別に担当し、指導、助言を行うほか、犯罪予防の啓発活動を行っております。
また、更生保護協力雇用主会、BBS連盟、更生保護女性連盟などの多くの皆様が、犯罪や非行をした人の立ち直り、犯罪や非行のない地域社会の実現に向けて活動しております。安全、安心な地域社会づくりのために、長年にわたり多大な貢献をしていただいておりますこうしたボランティア団体の皆様には深い感謝の念を覚えますとともに、今後ともこうした地域の方々と力を合わせ、再犯の防止に取り組むことが大変重要であると認識しております。
次に、再犯防止ネットワーク構築についてでございます。
犯罪をした人は、社会生活上、さまざまな課題を抱えている場合が多く、効果的な再犯防止対策を講じるためには、司法と福祉のネットワーク、行政と民間とのネットワークが必要と考えます。そのため、県では、福祉関係者と司法関係者が事例や情報を共有し、連携を強化することを目的としたネットワークの構築事業が国のモデル事業として採択されましたので、今年度から実施をしてまいります。具体的には、県内10圏域で再犯防止に関するネットワーク協議会や研修会を開催するとともに、支援者に寄せられた困難ケースに対して個別に支援する事業を実施いたします。
次に、長野県再犯防止推進計画についてであります。
犯罪や非行をした人は、貧困や障害、厳しい生育環境などさまざまな生きづらさを抱えている場合が多く、再犯を防止するためには、地域において孤立することなく、社会の一員として受け入れ、さらにはみずから社会の支え手となることができるよう支援をしていく必要があります。このため、県では、今年度、長野県再犯防止推進計画を策定すべく、保護観察所、保護司会連合会、社会福祉協議会等の皆さんと検討を進めております。
議員御指摘のように、県民の皆さんが犯罪や非行の防止と罪を犯した人たちの更生について理解を深めることは、人口減少社会の進展の中で、社会全体で犯罪をした人の社会復帰を支援し、犯罪や非行のない明るい社会の創造につながると理解しております。計画においては、誰にでも居場所と出番があり、誰ひとり取り残されない長野県づくりの強いメッセージをしっかりと打ち出してまいりたいと考えております。
以上でございます。
再犯防止推進計画への対応方針についての御質問でございます。
昨年12月に文部科学省から再犯防止推進計画の策定についてという通知が発出されました。この通知の中では、矯正施設内における児童生徒の学びの継続や学校、地域社会において再び学ぶことを支援するために、学校と矯正施設が連携を図るなどということでありますけれども、本県におきましては、松本少年刑務所内に旭町中学校桐分校を設置して、教員を派遣して教科指導を行うなどの連携を図っているところでございます。
教育委員会としては、文部科学省の通知を踏まえ、児童生徒の再犯防止に向け、県の再犯防止推進計画策定に積極的に参画してまいりたいというふうに考えております。
チームながの、延べ258名ということですので、聞き取ったアンケートの十分な活用をお願いしたいなというふうに思います。
今回の地震で北海道の観光は非常に影響が広まっておりまして、道だとか、それから観光関連団体などがこの15日に公表したまとめによりますと、宿泊のキャンセルは94万2,000泊分に上って、影響額は117億円だそうで、飲食や交通などの影響額は292億円にも達するということです。北海道では全域で旅行キャンセルが相次ぐなど、風評被害対策が急務となっておるようでございまして、政府からは、割引制度の導入で北海道観光の復興を図る方針が出されております。信州まつもと空港を使って、この長野県の方々も北海道を元気にするように一緒に旅行に行っていただければなというふうに思います。ぜひ御協力をお願いしまして、質問の一切を終わります。ありがとうございました。