平成30年9月定例県議会 発言内容(埋橋茂人議員)
◆埋橋茂人
信州・新風・みらいの埋橋茂人でございます。私は大きく三つ御質問をいたします。
しあわせ信州創造プランにおける重点目標であります付加価値の高い産業の振興について伺います。
県民経済計算の計算方法の改定前の数値ですが、経済センサス活動調査による平成27年の長野県の製造品出荷額は5兆8,794億3,200万円、付加価値額は2兆1,083億2,300万円です。付加価値額を平成28年6月1日現在の従業員数18万8,720人で割ると、労働生産性は1,117万円/人となります。
産業中分類別を労働生産性の高い順に並べると、その他を除く23分類中、平均以上は7分類であります。1位化学3,774万円、2位石油・石炭製品2,590万円、3位情報関連機械器具2,058万円、4位飲料・たばこ・飼料1,766万円、5位汎用機械器具1,166万円、6位電子部品・デバイス・電子回路1,143万円、7位生産用機械器具1,133万円、平均以下ですが、1,000万円を超えるのは、8位業務用機械器具1,053万円、9位窯業・土石1,025万円までです。しかし、1位の化学は製造品出荷額1,329億円で従業者数は1,765人、2位の石油・石炭製品は139億円、210人で、いずれも両分類とも多くありません。製造品出荷額が1,000億円超は14分類で、最多は1兆573億円の情報関連機械器具です。2番目が7,730億円の電子部品・デバイス・電子回路、3番目が5,881億円の生産用機械器具、4番目が食料品の5,485億円で、5,000億円を超えるのは以上の4分類です。従業者数は1万人超が9分類、2,000人から1万人が6分類で、最多は電子部品・デバイス・電子回路の2万4,808人、2番目が食料品で2万1,435人、3番目が生産用機械器具で2万229人です。また、労働生産性が平均以下でも従業者数が1万人を超えるのが5分類、2,000人から1万人が4分類あります。地域の産業や雇用を支えており、生産性が単に低いからといって業種転換を図ることは容易ではないと思われます。
そこで、3点、産業労働部長に伺います。
一つ、付加価値の高い産業創出に向け成長期待分野への転換などが重要なことは周知のとおりですが、今申し上げたように必ずしも全ての企業が業種転換を求められているわけではありません。そうした企業の付加価値向上に向け、県では具体的にどのような取り組みを講じていくのか伺います。
二つ、付加価値の向上のためには知的財産の活用も重要だと考えます。工業技術総合センターの知的財産の現状の保有状況はいかがですか。また、分野別の件数や昨年度の売り上げなど活用実績についてもあわせて伺います。
三つ、また、生産性向上のためのもう一方の重要施策である労働時間の削減策についてはどのように取り組むのか伺います。
順次お答えをいたします。
まず、企業の付加価値向上についてでございます。
しあわせ信州創造プラン2.0に掲げた産業の生産性が高い県を実現するためには、常にイノベーションを創出し、付加価値を高めていくことが重要であると認識をしております。そのため、成長期待分野への転換を図るだけではなく、製品の高付加価値化や企業価値の向上に取り組んでいるところでございます。
具体的には、製品の高付加価値化については、これまで地域資源製品開発センターにおいてデザイナー等の専門家を置き、企業技術等を活用した地域ブランド商品の開発を支援し、昨年度末までに370件を商品化しております。
また、今年度から、企業の技術開発等のための目利き集団を設置し、こうした専門人材の活用によりターゲット市場へ展開するための研究開発、事業化計画策定の支援を進め、新しい技術や製品の創出につなげていきます。
さらに、企業価値の向上といった観点からは、県内企業の持つすぐれた技術や製品をNAGANOものづくりエクセレンスとしてこれまで約60社を認定しておりまして、マスコミ等とも連携しながら県内外に広くPRし活用を進めてまいります。引き続き県内企業の持つ潜在力を生かし、また引き出しながら企業の付加価値の向上を図ってまいります。
次に、工業技術総合センターの知的財産の保有状況と活用実績についてでございます。
工業技術総合センターでは、単独または企業との共同研究で得られた新しい技術等について、知的財産として保護をし、本県産業の付加価値向上に生かしております。本年10月1日現在、特許登録が35件、出願中のものが13件で合計48件、このほか商標登録が1件でございます。特許の48件を分野別に分けますと、機械関係が38件、電気関係が7件、食品関係が3件でございます。また、商標の1件は食品関係です。これらの知的財産を活用して事業化する場合には、企業と工業技術総合センターで実施契約を結んでおりまして、昨年度の実績は、実施契約が8件、売り上げが1,723万円でございました。今後も有益な研究成果の知的財産化を図るとともに、県内企業にPRし知的財産の活用による製品開発や事業化を支援してまいります。
最後に、労働時間の削減でございます。
労働時間の削減は、生産性の向上に寄与するとともに、長時間労働を是正し、労働者が健康で不安なく働くことにつながるものでございまして、重要課題であると認識をしてございます。そのため、今年度新たな事業として中小企業をモデル企業として5社選定し、専門家が業務効率化等を支援し、ITツールを活用した業務の見える化など生産性向上の試行を進めてまいります。
また、本年4月に立ち上げました長野県就業促進・働き方改革戦略会議においても、AI、IoTの利活用促進や勤務間インターバル制度の導入支援等具体的な施策の検討を進めております。
今後、先進事例の県内普及や社会保険労務士等専門家の企業派遣など、関係団体とともに企業の生産性向上に向けた業務の効率化と労働時間の削減等を一層支援することで企業の魅力向上を図り、そして人材確保につながるよう努めてまいります。
以上でございます。
続いて、農畜産業の生産対策について農政部長に伺います。
県は、温暖化に対応して、野菜試験場を長野から標高の高い塩尻に平成21年に移転する等戦略的な対応を講じられています。また、水稲の「風さやか」やリンゴの「シナノリップ」、レタスの暑さに強い品種等の開発により温暖化対策を進められることについては敬意を表するところでございます。
稲刈りの適期を判定するために、従来の穂が出てからの積算温度、例えばコシヒカリでは1,000度、あきたこまちでは800度ですが、平成12年産の胴割れ米の多発を受けて、積算温度だけでは猛暑日のような高温が続くと目安にならないと生産者から声が上がりました。それに機敏に対応して、翌年の収穫に間に合うように帯緑色籾歩合という新しい目安を示されました。少し舌をかみそうなネーミングですが、緑色のもみがどのくらい残っているかで稲刈りの適期を判定するもので、画期的な日本で初めての新しい判定基準でした。長野県産米の1等米比率が毎年のように全国トップ水準にあるのもこの基準にあずかるところが大きく、生産者や流通業者の評価も大変高いものがあります。
このように、温暖化対策は、品種開発、技術開発、新規基準設定、産地移動、緯度や標高でありますが、さまざまなものが考えられ、また1種類ではなく複合的な対応も必要ですが、現状と今後の対応はいかがですか。
二つ目、猛暑と北海道の地震で一時店頭から牛乳が消えました。県内の畜産では生乳の生産額が最大であり、生産量は10万トンを維持しています。こうした中で、本年7月に署名された日欧EPAは、2019年3月までに発効を目指すとされています。関税撤廃により海外からの畜産物の輸入増加が想定されていることから、県民にこのままおいしい牛乳を安定して供給するためにも県内酪農経営の生産性向上は重要と考えますが、対策についてお聞きします。
三つ目、リンゴの高密植栽培、新矮化栽培に必要なフェザー苗の確保対策について、県内で初めて発生したDMI剤耐性のリンゴ黒星病は、リンゴ高密植栽培、新矮化栽培で多発したと聞いています。清沢議員の質問にもありましたが、リンゴ高密植栽培、新矮化栽培では、普通栽培の約20倍となる本数、10アール当たり250本以上のフェザー苗が使われることから、県内生産では不足し、県外から購入する場合があり、今回は県外からの購入苗が原因とのことです。今後もこの栽培方法の拡大が進む中で、苗木確保が不可欠です。これら栽培に必要なフェザー苗生産の現状と今後の確保対策について伺います。
順次お答え申し上げます。
まず、温暖化対応の現状と今後の対応についてでございますが、県では平成22年度から農業関係試験場に温暖化プロジェクトチームを設置し、対応技術の開発に取り組んでいるところでございまして、これまでに温暖化に対応した新品種の育成やリンゴの日焼けに対する遮光ネットの利用、あるいは細かい霧を発生させて牛舎の温度を下げる装置などの技術を開発し、これらの複合的な活用も含め生産現場への普及を進めているところであります。
今後も、高温条件を再現するガラス温室等の施設を活用するなどし、温暖化がリンゴ、水稲、レタスなど本県の基幹品目の生育等に及ぼす影響の評価を進めるとともに、現地で発生しております課題の解決や将来的な課題を見据えた新品種、新技術の研究開発の加速化を図ってまいります。
次に、酪農経営の生産性向上対策についてでありますが、長野県の生乳生産量は全国10位に位置し、県内畜産生産額の40%を占めている主力部門となっております。酪農の生産性を上げるためには、飼育頭数をふやす規模拡大と乳用牛1頭当たりの搾乳量をふやす能力向上などが重要となります。規模の拡大につきましては、国庫補助事業の活用により搾乳ロボットを含めた施設の増強支援をするとともに、能力の向上につきましては、搾乳量の多い優秀な雌牛をふやすための受精卵移植の活用や優良な牛を選抜する能力検定の拡大を進めてまいります。
さらに、AIやICTを活用し、子牛出産の際の事故の低減や繁殖成績の向上、労力の軽減化等をあわせて行い、県民へのおいしい牛乳の安定供給に努めてまいります。
最後に、リンゴフェザー苗の生産の現状と今後の確保対策でございます。
県では、議員お話しのとおり、フェザー苗定植2年後には収穫が始まり、多くの収量が望めるリンゴ高密植栽培、新矮化栽培を推進しております。県内のフェザー苗の生産本数は、平成29年は約10万本でございましたが、生産拡大に向け、昨年度から苗を掘り起こす機械や支柱の導入などを支援しまして、平成30年は約12万本体制となってきております。
今回、数千本の県外産のフェザー苗を導入した圃場におきまして薬剤耐性の黒星病が発生したことで、リンゴ高密植栽培、新矮化栽培の拡大には県内産のフェザー苗の確保がさらに重要となったことから、JAグループと連携をしまして増産に必要となる苗木の確保や苗木生産者の生産体制の一層の強化を支援してまいります。
以上でございます。
御答弁ありがとうございました。
三つ目でありますが、災害時の燃料確保について伺います。
風間議員も代表質問で質問されておりましたが、東日本大震災や今回の北海道胆振東部地震のような非常時には燃料の確保が極めて重要となります。災害対応する車両の燃料や病院の医療用に加え、自家用車の燃料確保も不足しますと、まさに命にかかわる事態となると考えます。そこで、危機管理部長に伺います。
一つ、災害発生時に緊急車両や病院等の重要施設に対して給油や配送をするために備えている燃料備蓄の状況はいかがですか。
二つとして、また、近年取り組みが進められている緊急時に地域の燃料供給拠点としての役割を果たす給油所を住民拠点SSとしていますが、この整備状況はいかがですか。
三つ目、あわせて、災害時の燃料確保について今後の県の取り組みについてお伺いいたします。
災害時の燃料確保についての御質問をいただきました。
議員御指摘のとおり、災害時に備え燃料を確保することは大変重要であり、また喫緊の課題であると認識をしております。このため、災害時に緊急車両や重要施設、災害拠点病院への燃料供給を目的として、国の燃料備蓄促進事業を活用し、県内の中核サービスステーション41カ所と小口燃料配送拠点21カ所にガソリンや重油など合わせて約500キロリットルを備蓄しております。
また、住民拠点サービスステーションは、災害時に停電となったときでも地域住民の皆様に自動車や暖房用の燃料供給ができるよう、国の補助事業として自家発電機を整備するものであり、平成30年2月末現在でございますが、県内に52カ所が整備されております。
県では、国に対して緊急車両や医療機関などに対する燃料備蓄の拡大や住民拠点サービスステーションへの備蓄の推進について要望するとともに、県としても燃料確保の拡大に向けて具体的な取り組みを検討しているところであり、県民の皆様が安心して生活できるようしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
以上でございます。
御答弁をいただきましたが、昨年産業労働部で実施し、12月20日に公表されたSS過疎地に関するアンケート結果によると、課題として認識している市町村は52、していないのは25、検討中を含め対策をしている市町村は9、していないのが68、対策を協議する場がある市町村は10、ないのは67となっています。SS過疎地対策に関しては、具体的な補助等を検討している市町村もありますが、多くの市町村が課題として受けとめているものの、検討中を含めて対策を講じておらず、事態は深刻と言わざるを得ません。SS過疎地対策につきましても市町村と連携してしっかりと取り組まれるよう要望いたします。
二つ目ですが、基礎研究や応用研究は民間企業では人材、開発費、期間の長さ等で非常に困難です。工業技術総合センターや各農業試験場、水産試験場等の存在は極めて大きいものがあります。不可欠な機能を持っていると思います。付加価値の高い産業育成には研究部門の充実は大変重要です。本庶ノーベル賞受賞者もそうおっしゃっておられました。試験研究機関は公の機能そのものです。ぜひ知的財産の保全とともに十分な予算措置と施設、機材の充実を図られるように要望して、一切の私の質問といたします。